第6話
俺はトボトボと帰路に付いていた。1日の間にいろんな事がありすぎてビックリだぜホントにさ。
そりゃあ俺だって男の子さ巨大ロボットに乗る妄想はいつもしてるけど、いざ実物に乗れるってなったらさ、いやぁ感動したなぁ
ふと気づくと周りには誰も人が居なくなっていて薄暗い夜道をことさら気味悪くしていた。
妙だな?この時間なら家に帰る人を一人も見ないなんてことは無いのに、この路地には俺しか居ない……なるほどな
「おい、そこのガキ。昼間に土建屋から持って行ったインドの置物持ってるだろ?出しな」
いかにもヤクザですといった風貌の男が1人、路地の向こうから現れた。手には何やら古ぼけた道具を握っている。さてはアレがアイツの大鎧だな。
「イヤだね。クソ野郎。それよりお前の事務所に俺を連れて行ってくれよ。俺もダチやられて頭に来てんだ」
「ハッ!ガキがいきがってんじゃねぇ。さっさと渡さねぇとてめぇとてめぇの家族、仲の良い友達、さらにその友達の家族まで大変な事になるぞ?」
ヤクザはニヤニヤと嫌な笑顔を崩さずにさらに脅して来る。俺はこんな奴にやられるワケが無い。コイツは仕掛けてくる度胸は無い。そうタカを括って俺を甘く見てるな………イラつくぜ……俺を馬鹿にしてやがる
「なんで俺の足元見てる奴にへーこらしなきゃいけないんだよ?それともアレか?結局脅かすだけで直接ぶん殴ったりは怖くて出来ないのか?」
煽りの効果は抜群で、ヤクザは近くに路駐されてた車に古ぼけた道具を押し当て、みるみるうちに5〜6メートル程のサイズのデカい鬼になった。赤黒い捻くれた角が生え、血走った目は大きく開かれている。そんな赤鬼の胸が開きそこにヤクザが乗り込む。
「大人ナメとったらアカンぞクソガキが!」
近くのカーブミラーを引き抜いて俺に向かって振り下ろされるが近くの車からハティシャの右腕が生えてきてそれを受け止める。
「行くぞハティシャ!人の事ナメてるクソ野郎をぶちのめすぞ!」
再び振り下ろされるカーブミラーを両手で掴み取り綱引きの状態に持ち込む。
「ガネーシャの大鎧を出しやがった?!ソイツは気難しくて出せねぇって話じゃなかったのかよ!」
ヤクザが叫ぶ。気難しい?ハティシャがか?……いやむしろ「良いぞもっとやれ」って俺のゴーストに囁きかけてくるんだけどこの娘
「ガネーシャじゃねぇ!ハティシャだ!覚えとけクソ野郎!ガネーシャっつってもいろいろ居るんだとよ!」
言葉の応酬をしているとついにカーブミラーが捩じ切れる。いきなり負荷がなくなって体制が崩れた所にそのまま踏み込みタックルを仕掛ける。ビルの壁にめり込む赤鬼。そこに間髪入れずにビルを背にして逃げ場が無い状態で渾身の右ストレートを赤鬼の顔面にめり込ませる。
インパクトの直後、ビルの窓ガラスが放射状に割れ、赤鬼の捻くれた角が根元からボッキリと折れる。夜の闇に溶ける様に赤鬼の肉が消えてゆき、人の型に曲げられた車のスクラップとその真ん中で泡を吹いてひっくり返っているヤクザが姿を現す。
「おい、寝てんなよ。今回のコトでこの置物をあの現場に取りに行かせた。つまり指示した奴が居るだろ。ソイツの所に案内しろ」
俺はハティシャの手でヤクザを鷲掴みにしてそう告げた。
─────────
「今晩はー。ここの組長を出してくれないかー」
虫の息のヤクザをにぎにぎしながら案内してくれたのはいかにもお金持ってそうな庭付きの日本家屋だった。当然門を破壊して庭を荒らしながら奥へと進む。
「ずいぶん威勢の良いガキじゃねぇか。だがちと調子に乗り過ぎたな。」
ガレージの中から2体、門の脇から2体。そして一番奥の中庭に黒塗りの高級車がみるみるうちに変化し黒鬼と化す。捻くれた角は大小合わせて4本生えており、先程のヤクザとは別格の雰囲気を漂わせていた。
「やっとお出ましか。アンタだろ?コイツの元の持ち主を殺ったの。それでハティシャがお冠なんだよ。わかってんのか?」
「ハハハハハ!巡り合わせと言うのか運命と言うのか、たまたま拾った貴様はソレの声を聞ける程には相性が良いのか。もしやその怪物の影響を受けてそれほど好戦的なのか。いずれにせよ殺しのが惜しくなる才能と生きの良さだな。まあここまでナメてくれたんだから殺すが」
「おう演説は終わりか?なら行くぜェ!」
俺は庭に飾りとして置かれていた岩を抱え、黒鬼に向かって放り投げた
ガネーシャの置物 コトプロス @okokok838
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