第3話
――対奇怪隊訓練施設――
ここは対奇怪隊の隊員達が日頃の訓練を行う施設である。ここでは日夜問わず様々な訓練を受けている者がいるのだが、今日はどうやら違うらしい。なんと今日に限っては普段とは違った雰囲気に包まれていたのだった。それもそのはず、今現在この施設は厳戒態勢が敷かれており、いつ何が起きてもおかしくない状況だったのだから無理もないのである。そんな中、俺達は施設の中に入り受付を済ませて待合室に入るとそこには見知った顔が居たので声を掛ける事にした。
「あ! 久しぶり!」俺が元気よく挨拶をすると、相手はこちらに気付いたようで挨拶を返してくれた。俺はそのまま相手の元に行き軽く会話を始めた。
「まさかお前がここに居るとは思わなかった」
そう話し掛けたのは俺の後輩である横田だ。こいつは俺と同じ時期に入隊した同期であり、今では立派な軍人となっている男だ。そんな奴が何故ここにいるのかと不思議に思っていると、彼が言うには俺達と同じく作戦に参加するためにここに来たそうだ。それを聞いて納得したところで、任務の為、後輩と別行動を取ることになった為別れることにした。
どんな戦争が気になり、期待がしてきた反面、少し怖かったので、深呼吸をして心を落ち着かせることにした。
――戦争準備なのか、最後の晩餐かのような食卓を囲む料理の品々。
魚料理や前菜料理など、様々な種類の食事が並ぶ中、俺は目の前の光景に唖然としていた。
「……なんだこれ?」
思わず声に出してしまうほどの衝撃的な量だった。
テーブルの上に所狭しと並べられた数々の皿。
その上に乗せられているのは、山盛りのパン、サラダ、スープ、フルーツ、デザート、その他諸々と、とにかく大量に盛られた食べ物の数々。
「どんどん食べなさいね!」
お姉さんの言葉に、隣に座っていた上官が、目を輝かせた。
「美味そう!!」
「えっ、あっ、はい」
反射的に返事をし、慌ててナイフとフォークを手に取る。
「いただきまーす」
隣で嬉しそうに手を合わせると、上官はすぐに食事をはじめた。
俺もそれに倣うようにして、手近にあったサンドイッチを口に運ぶ。
(……うまい)
口の中に広がる絶妙な塩味と、ふわりとした食感。
続いて、野菜たっぷりのコンソメスープを一口飲む。
「うん、美味しい」
「そうでしょ~」
「はい、すごくおいしいです」
「良かったわぁ! どんどんお食べ!」
ニコニコと笑うお姉さんの笑顔に、こちらも自然と笑みがこぼれる。……が、しかし。
正直、多すぎないか、コレ。
いくらなんでも、この量は一人分じゃないと思うんだが……。
チラリと横目で見ると、すでに上官は二つ目のサンドイッチを食べはじめている。「……あの……」
「ん? どしたの?」
「……この量を一人で食べるんですか?」……いや、別に、俺だって食い意地が張ってる訳でもないし、むしろ食費が浮いてラッキーとか思ってるけど…… 流石に多いよ、絶対多いよ、これは!
「あら、ダメかしら? 残しても勿体無いから、ぜひ全部食べて欲しいんだけど……」
「いえ、そういう事ではなく……」
「そうよね、たくさん食べたいわよねぇ。男の子だものね」
「あの……」
「それじゃ! おまけにご飯を追加ね!」
……ああもう!! こうなったらヤケクソだ!!! 腹一杯になるまで喰ってやるッ!!
―――それから数時間後……
あれだけあった大量の食料は全てなくなり、空になった大皿が幾重にも積み重なった。
結局、俺は全ての料理を平らげてしまったのだ。
自分でも驚きだよ全く。一体どこに入っていったんだよ。胃袋か。これが噂のブラックホールなのか。恐ろしい。マジ怖い。
しかし、これでようやく終わりかと思ったその時だった。
突然上官が肩を置き、顔を赤くしながら誘ってきた。
「どう? 飲もうぜ」
…………はい? 今なんて言いました? 飲みませんよ? 未成年ですよ?
だが、酔っぱらいの相手をするのは面倒なので、適当にあしらおうと思ったら別のイケメン男性が酔っ払い男性に注意する。
「山田少尉。駄目ですよまだこの人未成年ですから」
ナイスフォローですイケメン君。ありがとうございます。でも出来ればもっと早く助けに来て欲しかったかな。
山田は俺達から離れ、今度はスーツの女性に声をかけた。
「ねえ、一緒に飲まない? ほら、こっち来てさ」
「張り倒すわよ?」
「ごめんなさい」
女性に睨まれ、すぐに謝った。
「まったく、油断ならない男ね」
彼女はため息をつき、顔を上げると俺と目が合い、微笑みながら話しかけてきた。
「こんにちは、私は橘美奈よ。よろしくね」
「あ、どうも、俺は……」
「知ってるわよ、北条くんでしょ?」
「あ、はい、どうも」
「フフ、緊張してるの?」
「いや、そんなことは」
「大丈夫よ、取って食ったりしないから」
「はあ、どうも」
なんか、すごいグイグイ来るなこの人。
見た目は美人なのに、中身は肉食系女子なのだろうか。そう思ってると美奈は椅子にもたれ掛かり、足を組んでリラックスすると、愚痴を言いまくった。
「全く……最近の若い子はみんな軟弱なのよ。ちょっと私が注意したらすぐ泣き出すし、ちょっとからかっただけですぐに暴力振るってくるし、ホント嫌になるわ」
「は、ははは……」
「私、こう見えても昔はやんちゃだったのよ。それで、色々あって今はこんな感じなの」
「へぇ、そうなんですか」
「ええ、そうよ」
「それは大変ですね」
「ええ、大変なの」
お互い苦笑いを浮かべながら話していると、美奈は笑いを止め、興味津々に質問してきた。
「確か、あんたって大尉だったわよね」
その言葉に一瞬ドキッとしたが平静を装いながら答える。
「そうだね」
ちなみに、階級というのは軍の中での位みたいなものだ。
下から新米兵順に、一等兵、二等兵、三等兵、下士官。この部隊を下隊と言う。ちなみに少尉から大佐までを上隊と言う。そして偉い人、推将から元帥までが最隊となる。
これが軍隊における上下関係だ。他にも細かいものはあるが大体はこのくらい覚えておけば問題ないだろう。因みに、この説明はあくまで一般常識としての話だからあまり鵜呑みしないようにしてくれ。
「へぇー、結構偉いんだねー」
そう言うと、急に顔を近づけてきたので思わず仰け反ってしまう。
そんな俺を見てクスリと笑うと、また話を続けた。
「じゃあさー、なんであんたはそんなに強いわけ?」
「え?」
「だってそうじゃん? なんであんたが最強なわけ?」
いや、そんなこと言われてもなぁ。まあ確かに、俺は昔から強かったけどさ。ただ単に才能があっただけだと思うんだよね。努力しなくてもなんでも出来たしさ。だからそこまで強くはないと思うんだけどなー。うーん……困ったぞ、何て答えればいいんだろう……。
そう考えてると彼女は何かを察したのか、それ以上は何も聞いてこなかった。
「……ま、いいわ。言いたくないなら無理に言わなくて良いわよ」
あ、ありがとう……助かるよ……本当に……。
心の中で感謝していると、不意に彼女が立ち上がったかと思うといきなり俺の胸ぐらを掴んで引き寄せた。突然のことに驚いて固まっていると耳元で囁かれた。
「――その代わり、私の部下になりない」
「へ?」
「聞こえなかったの? 私の部下になれって言ったのよ」
「いや、聞こえてたけど、どうしてそうなるの?」
「決まってるじゃない、気に入ったからよ」
「いや、でも俺、軍人じゃないし……」
「そんなの関係ないわ。私が決めたんだから」
「そ、そんな無茶苦茶な……」
「いいから黙って従いなさい!」
「は、はい!」
あまりの迫力につい返事をしてしまった。すると彼女は満足そうに頷き、手を離してくれた。
「よし、それじゃあね」
そう言って、彼女は出口に向かって歩き出した。
姿が見えなくなると、ホット安堵して大きなため息をついた。
――あの後、俺達は作戦会議のために会議室へと移動した。
そこには既に何人かの人が集まっていたが、皆、俺達を見て驚いたような顔をした。まあ、当然の反応だよな。
その後、上官が自己紹介をして、俺達も軽く挨拶をした。そして、上官が席に座ると、俺達も席に座った。
全員が着席したのを確認すると、上官が口を開いた。
「さて、全員揃ったことだし、そろそろ始めようか」
その言葉に、皆が頷いた。上官はそれを見て頷くと、話を始めた。
「まず、今回の任務について説明するね」
上官の言葉に、皆の視線が集まる。
「今回、君達にはある場所に行ってもらう」
その言葉に、皆が一斉にざわつき始めた。
「静かに! 今から詳しく説明するから、よく聞いてね」
上官の言葉に、皆一斉に静まる。
「実は、最近この町で奇妙な事件が多発しているんだ」
その言葉に、皆が一斉に首を傾げる。
「その事件は、主に夜の間に発生しているんだけど、被害者の証言によると、突然目の前に黒い物体が現れたと思ったら、次の瞬間には消えていたらしいんだ」
その言葉に、皆が一斉に頷く。「そこで、君達にはその調査をしてもらいたいんだ」
その言葉に、皆が一斉に手を挙げる。「はい! 質問です!」
「はい、どうぞ」
「その黒い物体とは、一体なんですか?」
「それが、まだ分かってないんだ」
「そうですか……」
「他に質問はあるかな?」
その言葉に、皆が一斉に首を振る。「よし、それじゃあ、早速だけど、健闘を祈る」
その言葉と同時に、俺達は立ち上がり、敬礼をする。そして、そのまま部屋を後にした。
――それから数時間後、俺達はとある場所にたどり着いた。そこは、一見普通の民家に見えるが、よく見ると所々に違和感がある。
まるで、そこだけ空間が歪んでいるかのような、そんな感じだ。
俺は、隣にいる山本に話しかけた。
「なあ、ここって本当にただの民家なのか?」
「分かりません、でも、人の気配はしませんね」
山本の言う通り、この家からは人の気配が全くしない。しかし、だからと言って、ここに入らないという選択肢はない。何故なら、俺達は上官からの命令でここに来たのだから。
しかし、本当にこんなところに妖魔なんているのか? そもそも、妖魔なんて存在自体が怪しいものだしな。まあ、とりあえず入ってみるか。そう思い、扉に手をかけると、後ろから声をかけられた。
振り向くと、そこには対奇怪偵察隊、坂下がいた。彼女は、俺達を見ると、笑顔で話しかけてきた。
「あ、皆さんも来てたんですね!」
それに、山本が答える。「ああ、そうだよ」
すると、彼女は嬉しそうに笑った。
「やっぱり! 実は私もなんです!」
彼女の言葉に、思わず苦笑いしてしまう。
「……そうか、それは良かったな」
俺がそう言うと、彼女は更に嬉しそうな顔をした。……なんか、嫌な予感がするな……。
そう思った瞬間、彼女はとんでもない事を言い出した。
「はい! これで皆さんと一緒に行動できますね!!」……え? 今なんて言った? 一緒に行動できる? いやいや、無理だろ。だって、俺達は軍人じゃないんだぞ? それなのに一緒に行動するって、それもう完全に命令違反じゃないか。そんな事を考えていると、彼女は俺の腕を掴み、満面の笑みを浮かべた。
「さあ、行きましょう!」
俺は、彼女に腕を引っ張られながら、家の中へと入っていった。
家の中に入ると、そこはとても綺麗な内装だった。床はフローリングで、壁は白く、天井は高く、窓は大きい。そして、玄関には靴箱があり、その上には花瓶に花が生けてある。
その光景に、思わず見惚れていると、彼女が声をかけてきた。
「どうかしましたか?」
その言葉に、我に返る。
「いや、なんでもないよ」
そう言うと、彼女は不思議そうに首を傾げたが、すぐに笑顔になった。
彼女は、そのまま廊下を進み、突き当たりにある階段を上っていく。俺もそれについていくと、二階に着いた。二階には左右に廊下が伸びており、正面には扉が一つあった。彼女は、その扉を開くと、中に入っていったので、俺もそれに続く。部屋の中は、ベッドと机と椅子、クローゼットと本棚、そして、テレビがあった。どうやらここは寝室のようだ。
彼女は、ベッドに腰掛けると、俺に話しかけてきた。
「さて、これからどうしますか?」
俺は、少し考えてから答えた。「……そうだな、まずはこの部屋を調べよう」
俺の言葉に、彼女は頷いた。
それから、俺達は部屋の隅々まで調べたが、特に変わったものはなかった。
一通り調べ終わった後、俺は彼女に話しかけた。
「……特に何もなさそうだな」
すると、彼女は残念そうに呟いた。
「……そうですね」
俺達は、部屋を出て一階に下りた。すると、玄関の扉が開き、誰かが入ってきた。その人物は、俺達を見るなり驚いたような顔をした。そして、俺達に話しかけてきた。「あれ? 君達も来てたんだ!」その言葉に、俺と山本は同時に頷く。すると、彼は嬉しそうに笑った。
彼の名前は日坂喜文。対奇怪隊の隊員で、階級は一等兵だそうだ。ちなみに、坂下は喜文と同じ新米兵だ。そんな彼に、俺は質問した。「ところで、どうしてここに?」すると、彼は笑顔で答えた。「実は、ここで奇妙な事件が多発してるって聞いてさ、それで調査に来たんだよ」
その言葉に、俺は納得した。確かに、ここは妖魔界だし、妖魔の仕業の可能性もあるからな。まあ、でも、今のところは何も起きてないみたいだけどな。そんな事を考えていると、不意に彼女が口を開いた。「あのー、ちょっといいですか?」その言葉に、皆が一斉に彼女の方を見る。彼女は、少し恥ずかしそうにしながら言葉を続けた。「……実は、私、ここに来るのは初めてなんです」
「あ、うん。そうか」
彼女の言葉に、俺はそう答える事しか出来なかった。すると、彼女は更に続けた。「だから、その……もしよかったら、仲間になりませんか?」その言葉に、俺は思わず苦笑いしてしまった。しかし、そんな俺とは違い、他の皆は快く引き受けてくれた。
「もちろんだよ!」
「はい! 任せてください!」
それを聞いた彼女は、嬉しそうな顔をした。
そして、俺達は彼女と共に屋敷の調査を始めた。しかし、結局何も見つからなかったので、俺達は一旦外に出る事にした。外は相変わらずの快晴で、太陽が眩しいくらいに輝いている。
俺達は、屋敷を出ると、再び屋敷の周りを調べ始めた。しかし、やはり何も見つからない。なので、俺達は一度休憩を挟む事にした。
休憩中、俺はふと疑問に思った事があったので、皆に聞いてみた。「そういえば、皆はどうして対奇怪隊に入ったんだ?」すると、皆が一斉に俺の方を見た。そして、最初に口を開いたのは坂下だった。「私は、親が対奇怪隊だったからです」次に、山本が答えた。「僕は、昔から体が弱かったから、少しでも強くなりたくて入隊したんだ」最後に、ザックが答えた。「俺は、自分の力を試したかったからだな」皆の答えを聞いた後、俺は少し考えてから言った。「そうか、皆それぞれ理由があるんだな」
すると、皆は笑顔で頷いた。
休憩が終わり、俺達は再び屋敷の調査を再開した。しかし、やはり何も見つからず、俺達は諦めかけてたその時、突然背後から獣の唸り声が聞こえた。
振り返ると、そこには一匹の獣がいた。その獣は、全身が黒く、目が赤く光っている。それを見た坂下が叫んだ。「妖魔です!」その言葉に、皆が武器を構える。しかし、妖魔は俺達に見向きもせず、屋敷の中に入っていった。
妖魔が屋敷に入るのを見た俺達は、慌てて追いかけた。屋敷の中に入ると、そこは薄暗くて不気味な雰囲気だった。
妖魔は、そのまま廊下を進んでいくと、ある部屋の前で立ち止まった。そして、そのまま部屋に入っていくと、中から大きな物音がした。その音に、思わず顔をしかめる。しかし、次の瞬間、部屋から何かが飛び出してきた。それは、先程見た黒い獣だった。獣はそのまま走り去ってしまったが、追跡するのは不可能だろう。何故なら、獣が出てきた部屋には、大量の死体があったからだ。
その光景に、思わず吐きそうになるが、なんとか堪えると、俺は皆の方を向いた。皆も俺と同じ気持ちのようで、顔色が悪い。しかし、それでも俺達は前に進まなければならない。なぜなら、俺達は軍人だからだ。俺達は、覚悟を決めると、部屋の中へと入った。部屋の中には、先程の獣の死体が大量に転がっていた。それを見て、思わず吐き気が込み上げてくるが、何とか我慢する。
刀を鞘から抜き、構えると、俺達は慎重に部屋の中を調べ始めた。すると、部屋の隅に、一冊の本を見つけた。その本は、かなり古いもののようで、表紙には『妖魔大全』と書かれている。その本を手に取り、中を開いてみると、そこには様々な妖魔の絵が描かれていた。その絵を見て、思わず鳥肌が立つ。しかし、今はそんな事を気にしている場合ではない。そう思い、俺はページをめくった。そして、最後のページを開くと、そこには一枚の紙が挟まっていた。その紙には、こう書かれていた。
『この書物を読む者へ、あの妖魔はとても危険な存在だ。もし出会ったら、すぐに逃げる事をオススメする』
その言葉に、思わず首を傾げる。何故、この本を書いた人は、あの妖魔の事を知っているのだろうか? それに、あの妖魔は一体なんなのだろうか? そんな事を考えていると、後ろからまた獣の唸り声がした。振り向くと、そこには先程の獣が立っていた。俺達は、すぐに戦闘態勢を取ると、獣に向かって攻撃を開始した。
獣は、俺達の攻撃を避けると、そのまま部屋の外へと逃げていった。俺達は、急いで獣を追いかけたが、既にその姿はなかった。俺達は、絶対に逃すまいと手分けして捜索した。日坂と坂下は西の捜索。俺と洋二は東の捜索に別れ、それぞれ屋敷の中をくまなく探したが、結局見つける事は出来なかった。
その後、俺達は屋敷を出て、再び屋敷の調査を始めた。しかし、やはり何も見つからず、俺達は諦めて帰る事にした。屋敷を出ると、外は既に暗くなっていた。屋敷を出た後、俺達はすぐに車に乗り込むと、そのまま基地へと向かった。
基地に着く頃には、すっかり夜になっていた。
翌日、俺は朝早くに起きた。今日は休日なので、いつもより遅くまで寝ていたかったのだが、昨日の疲れが取れていないのか、体が重く感じる。俺は、ベッドから起き上がると、大きく伸びをした。そして、服を着替えると、食堂に向かった。
朝食を食べ終えると、部屋に戻り、しばらく休憩した後、俺は外に出た。目的は、散歩する事だ。天気も良いし、気分転換にちょうど良いだろう。そう思った俺は、近くの公園に行くことにした。
公園に向かう途中、ふと思った。そういえば、最近運動していないな、という事だ。ここ最近は、ずっと仕事ばかりで、訓練もあまり出来ていなかった。たまには、体を鍛えないとな。そう思った後、ふと考えた。そういえば、俺ってどのくらい強いんだろう? 今まで、一度も考えた事がなかったな。よし、せっかくだし、今度皆に聞いてみようかな。
そんな事を考えている内に、目的地に到着した。そこは、とても広い公園で、様々な遊具がある。子供達が楽しげに遊んでいる姿を見ると、なんだか微笑ましい気持ちになる。俺は、公園内を見回しながら歩いた。すると、ある一人の女性が目に入った。その女性は、とても美しく、思わず見惚れてしまうほどだった。彼女の名前は、大泉舞子と言い、俺の後輩にあたる人物だ。彼女は、いつも明るく元気で、人懐っこい性格をしている為、周りから好かれているし、信頼されている。また、彼女はとても強い力を持っており、対奇怪隊の中でもトップクラスの実力を持っているらしい。
そんな彼女だが、今は一人でベンチに座って本を読んでいるようだ。俺は彼女に近付き、話しかけた。すると彼女は驚いたような顔をした後、すぐに笑顔になった。そして、嬉しそうに言った。
それを聞いた俺は、少し考え込んだ後、彼女に質問した。
しかし、彼女は首を横に振るだけだった。どうやら違うらしい。残念。
「本だと戦場での恐怖とか、人を殺す時の躊躇いとかを少なく出来るって書いてあったんだけどな」
そう言いながら、俺は彼女から本を受け取ると、中を開いてみる事にした。そこには、様々な事が書かれていたが、特に目を引くものは無かった。まあ、当たり前か。そんな事を考えている内に、いつの間にか読み終わってしまったようだ。本をパタンッと閉じると、それを彼女に返した。そして再び歩き始める。しばらく歩いていると、不意に彼女が話しかけてきた。
彼女は俺の隣に並ぶと、笑顔で言った。
「ねえ、先輩!いや、爓大尉!あの本読んだ感想とかあるかな?」
その問いに、俺は首を傾げた。感想?そうだな……特に無いな。そう思ったが、一応考えてみる事にした。しかし、やはり何も思い浮かばない。なので、そのまま答える事にした。すると、彼女はがっかりしたような顔をした後、肩を落としてしまった。その様子を見て、申し訳なく思った俺は謝ろうとすると、突然彼女が顔を上げたかと思うと、勢いよく喋り始めた。そんな彼女の様子に驚いている俺を無視して話を続ける彼女の表情は真剣そのもので、何やら重要な話があるようだと感じた。
「とりあえず、これを対奇怪隊の上層部に送ればこの本は凄いってこと!」
その言葉を聞いて、俺は納得した。なるほど、そういう事だったのか。確かに、言われてみれば、この作戦は対奇怪隊の活動に役立ちそうだと思ったからだ。しかし、その反面、この作戦が本当に実行可能かどうか疑問に思ったのも事実だ。だが、それはあくまでも個人的な意見であって、上層部からの命令である以上、従う他無いだろう。そう結論づけた俺は、再び歩き出したのだった。
その後、俺達は作戦会議を行った。
俺は皆にこの作戦のこと伝えた。
「油の入った樽を川に流して敵の拠点を火の海にする。どうだ?この作戦、良いと思った人挙手」
俺がそう聞くと、皆が理解追いつかなく、混乱していた。どうやら、反対ようだ。
「いや爓。ただの環境汚染じゃないか」美奈が手を挙げて言う。
確かにそうだ。環境汚染は良くないな。なら、他はどうかと言うと、、、やはり難しそうな顔ぶれだ。これは困ったな。さて、どうしたものか。そう悩んでいると、不意に声を掛けられた。見ると、そこには一人の筋肉男性が立っていた。彼は、こう名乗った。
俺は慌てて敬礼をしたが、どうやら上官ではないらしい。
「対奇怪の人。とても面白い作戦を考えたな。その作戦、是非とも実行したいものだ」
俺は困惑した。この作戦、本当に実行できるのだろうか? 不安になった俺は、思わず聞いてしまった。すると、彼は笑いながら答えた。
「大丈夫さ。この作戦は成功するよ」
その言葉に、俺は安心したが、同時に疑問を抱いた。しかし美奈は、
「はぁ?できるわけないでしょ」と言う。しかし、その発言に対して、彼はこう反論した。
「やらないよりかは、やった方がいいだろ。」
その言葉を聞き、俺は納得し、頷いた。そして、早速準備に取り掛かる事にした。
ブラックモンスター 神との決闘 八戸三春 @YatoMiharu
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