第2話

――守霊館――

妖魔界に存在する巨大な屋敷のような建物には様々な部屋があり、その中でも一際目立つ大きな部屋は会議室として使われているようだ。そこに集められた者達は、これから行われる戦いに向けて話し合いをしていた。その内容はと言うと、今回の戦いで誰がどの役割をするかについて話し合っていたようである。しばらくして話がまとまったらしく、リーダー格の男が立ち上がり皆に告げた。

「ではこれより、第1回特殊任務遂行者選抜試験を開始する!」

その言葉と共に周りに居た官達が一斉に席につく。

そして、スーツの女性と後ろのスーツの男性二人が遅れて現れ、皆の者に謝罪しながら敬礼をする。

『遅れて申し訳ありません!』

それに対して、一人の男性が彼女の後ろに立ち、彼女は申し訳なさそうに座った。

一体この彼女は何処の部隊なのか分からなかったので隣に座る眼鏡を掛けた男性に話を聞く。

「なぁ、あの人って誰だ?」そう聞くと、男性は丁寧に説明してくれた。

「あの方は、我が部隊の中でトップに立つ方ですよ」そう言われたので改めて見てみると確かにオーラが違う気がした。しかし、スーツ姿の二人が気になるので質問してみた。

「あのスーツの人は?」

すると、今度は隣の女性が答えてくれた。

「あぁ、あの二人ね。彼らはSCSIOの部隊に所属しているのよ。最近結成した部隊で、主に情報収集や調査をしているわ」なるほど、つまり今回の戦闘に参加するという事か……そう思っていると、先程の男が話し始めた。

「さて、諸君らに集まってもらった理由は他でもない、先程説明した通り……」

話してる途中、扉から非常に巨体で服からはっきりと分かる筋肉質。堀が深く黒マスクをつけた男が現れた。その男はゆっくりと歩きながら我々の言葉ではない言語で話し出す。

「salut désolé je suis en retard(すまない遅れた)」

そう言うと男は空いている席に座る。それを見て私は思った。恐らく彼が噂に聞いた【影部隊】なのだろうと……そんなことを考えていると、隣に居た女が小声で話しかけてきた。

「ねえ、あの男誰?なんか怖いんだけど……」俺も同感だったので頷くと、彼女も頷き返してきた。それから暫くして、ようやく話は本題に入ったようだった。

「それでは今から作戦内容を説明する」

そう言うと、スクリーンにある地図が映し出された。それは妖魔界の全体図のようで、真ん中に大きな円があった。そしてその周りに小さな丸が沢山あったがそれが何なのかはよくわからなかった。だが、一つだけ言えることがあるとすれば、これはとても重要な拠点だということだった。何故なら、ここを抑えれば敵の行動を制限できるからであるからだ。さらに言えば、ここが重要施設なら必ず守りに来るはずだと考えた上での行動だろうという予想もできた。しかし、問題はここから先だった。

なぜならその場所に辿り着くまでのルートが分からないのだから当然と言えば当然だが、それでもやはり不安になってしまうものだ……だがここで諦めるわけにはいかないと思い、とりあえず聞いてみることにした。

「すみません、一つ質問があるのですがよろしいでしょうか?」私が手を挙げると周りの者が私を見る。その視線に少し緊張しながらも質問をした。

「この地点まではどうやって行けば良いのでしょうか?」その質問に一人の男が答えた。

「それなら心配はいらないよ」そう言って立ち上がったのはスーツを着た男だった。彼は続けて言う。

「実は既に我々の方で準備してあるからね、安心してくれて構わないさ」彼の言葉を聞いた瞬間、私の中の疑問は確信へと変わった。それと同時に、彼に対する尊敬の念を抱いたのだった。その後、スーツの女性が詳しい内容を聞かされた。

「まず、我々は5つのグループに分かれて行動することになります。A班は私達と一緒に来てもらいます。B班はC班とD班と合流して下さい。E班は別働隊として動いてもらい、F班は本部の護衛をお願いします」それを聞いた私達は了承したが、黒マスクの男性が女性の話に割り込んできた。

「待って、ちょっと待てよ」すると女性は彼を睨みつけながら答える。

「……何ですか?何か問題でもありましたか?それとも他に何かあるのですか?無いのなら早く決めてください、時間が無いのですから……」

「いや、おかしいよ? どう見たって沢山居るよ?」

片言の言語で話す彼に女性は冷静な口調で言った。

「何を言っているんですか、あなた達はただの足止め役でしょう?」

その言葉に一瞬驚いた様子を見せたがすぐに反論した。

「いやいや、僕達の部隊はまだ現役です。頑張りましょうよ?」

「いえ、無理ですから。こんな雑魚と付き合う暇はないです」

「Quel!? Voulez-vous mourir!?(何だと!? てめぇは死にたいのか!?)」

黒マスクの男性は机を叩いて立ち上がると、女性は、肩をビクつかせながら少し驚いた。すると、それを見ていた信は呆れた表情で呟いた。

「おい、お前らいい加減にしとけ。これ以上騒ぐようなら出ていってもらうぞ」

その一言で二人は黙ってしまった。

「よし、じゃあ決まりだな。それじゃ、会議を始める」こうして会議は始まったのだった。

会議が始まってから30分ほど経った頃、やっと会議が終わった。内容は作戦の内容の確認だけで特に難しいものでは無かったが、作戦開始時刻が深夜0時ということだけは覚えておくようにと言われた。そして、解散を言い渡されると皆が続々と退室していくと、外で一服したり仮眠を取ったりする者も居た。

本当にこんな部隊で大丈夫だろうかと思っているうちに時間が過ぎていき、いつの間にか時計の針が12を指していた。作戦が始まるのだと思いつつ、会議室を出ていく人達に続いて部屋を出るのであった。

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