第9話
「転校する?」
もうひとりの黄埔が鏡にいった。
「うん、鏡くんげんきでね」
「もうひとりの黄埔ーっ。そりゃあないぜ。ああ、いいにくいなあ、もう」
鏡が顔をしかめた。
「それじゃあ、相鷺からみんなに挨拶
したいそうだ」
担任が相鷺を翌朝みんなに紹介した。
「わたしは夢先くんが好きでした」
もうひとりの黄埔が逆告白をした。
ざわつく教室。
「でも、もう相鷺さんが夢先くんのことが好きで。
わたし、2番目の恋人なんていやだから」
もうひとりの黄埔が涙くんだ。
「それじゃあね、」バイバイ」
もうひとりの黄埔が両手を元気よく振った。
「しっかりしろよ鏡」
放課後、屋上で夢先が鏡にむかっていった。
「くーーーっ、大丈夫だよ、オレは」
「本当か」
「ああ、でっ、おまえは」
「ああ、オレがだれを本当に好きなのかわかった」
「って、だれだよ?」
鏡が夢先にたしかめた。
「夢先クーン。鏡クーン」
そこに黄埔があらわれた。
「探したのよ」
「黄埔、もう一人の黄埔がいなくなって
せいせいしたろ」
「あら、ずいぶんじゃない。わたしそんなに
意地悪じゃないわよ。ねえ夢先くん」
「ああ、そうだな」
夢先が金網越しに飛行機を見上げた。
(おわり)
キミに会わなければボクはこんなに苦しむことはなかったのに。 @k0905f0905
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