食連星

第1話

とある廊下.


足早に駆け抜けていく.

聞こえてくるのは…


「何でそうなった」

「詳細不明で…」

「わが社の社運を賭けてという話では無かったのか」

「こちらとしても何が起こっているのか分からないんです!」

「分からない分からないじゃないだろう.

そのようなことは一切ないという触れ込みだったじゃないか!」


会話が熱を帯びてきて,

身振り手振りが大きくなる.

と同時に憤りが空気を滞留させる.

重苦しい空気が阻むかのように抵抗を加え,

押し返すような気迫が,また,その場を慌ただしくさせる.


「だからっ

そちらにお願いしたのだろう!?」

「リアルに近付けてという希望を出されたのは御社ではないですか!?」

「あぁ出しましたけれど!

何処までリアルに寄せるのですか!?」

「同じく開発時に御聞きしましたよねっ!?

すると,何とおっしゃいましたっけ!?」

「「何処までも!!」」

「ですよねっ!?

実際,より,よりっリアリティーが出た結果では無いですか!?」

「我が社を貶めるために!?

ここまでしますか!?

契約書を,もう一度確認しましょう.

相応の然るべき対応をして頂きますから.

覚悟してくださいよ」

「予測外の場合には、当事者双方で誠実に協議して決めるという文言が

入っているはずですっ」

「これがっ

これがっ予測外であると!

言われるのですか!?」

あぁっと髪をぐしゃぐしゃに掻きながら,

「ふざけんなよ」

と胸ぐらをつかむ勢いで凄んでいた.

足取りは留まり,永遠のような一瞬のような時が流れる.

「ここは社内で外部の者ですよ私は.」

目に力を込めて負けじと返している.

ふと笑って,

「知っていますよ.よぉく.」

肩をポンポンと叩き,撫で下ろした.

「おっとセクハラになりますかね.」

また笑った.

「不快ではありませんが,望んでもありませんよ.」

と真面目な顔をして応えている.

「それは幸い.

会議室に行きましょう.

確かに人の目もありますからね.

御案内いたしますよ.」

「何度となく呼び出されていますから,

場所は自宅のように存じておりますが.」

「そうですね

ファミリーのように.

立ち振る舞いもお願いしたいのですが.」

「都合の良い家族は増減しない方がよろしいかと.」

「都合の良い家族ね.

一時でも都合が良いことがあったかな.」

「この…」

「この?くそ野郎とでもおっしゃるおつもりですか?

ははっ.どちらがかな.

さぁ会議室に行きましょうか.

順序立てて詳しく正しく説明して頂きましょう.」

きっちりキマッたセットは崩れ果て,

何もキマッてはいなかったが,これから行く場所と,

話し合う中身だけは決まっていた.










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食連星 @kakumi

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