第5話 放課後、みんなで楽譜を求め豊橋駅前に
●曲は決まった - 放課後みんなで楽譜を探しに行こう
僕らのバンドの2曲目が決まった。少年ナイフの「トップ・オブ・ザ・ワールド」だ。その日の放課後、僕らは4人で楽譜を探しに行こうと約束した。
2年生の僕ら3人がホームルーム後すぐにいつものプール前に向かうと、1年生のポンタはもう待っていた。でも一人ではないようだった。1年生の同級生と話して談笑していた。
「ポンタ、ごめん。待たせたかな?」
僕が聞くと、ポンタは言った。
「大丈夫だよ、友達のレイタとずっと話していたから。」
ポンタはバカっぽくて、ちょっと偉そうなこと言う時もあるけど、基本的にフレンドリーで友達も多い。僕は、ポンタの友達に「やぁ」と手を挙げて挨拶した。童顔で可愛い感じの男の子だ。
「レイタ、時間つぶしに付き合ってくれてありがとう。」
「いいよ、いいよ、ポンタ。楽しかった。」
会話が終わるのをまって、僕はレイタに声を掛けた。
「僕ら、これから駅前に楽譜を探しに行くんだけど、せっかくだから、レイタも一緒に行く?」
せっかくなので誘ってみた。すると、彼は首をふるふる振って否定した。そして、彼は言った。
「大丈夫です。僕、今日はすぐ帰らないといけないから。バンドの邪魔するのも悪いし。僕、ポンタ君のバンド応援してます。皆さん、頑張ってください!」
なんか、発言から性格も良さがにじみ出ている。
「せっかく、ポンタと話していたのに悪いね。ありがとう、頑張るよ。ライブやるときは、絶対誘うから見に来てね!」
やり取りからリョウコも彼を気に入ったらしい。背中をバンバン叩いて、「これからも、よろしくな」と言っていた。
そして、童顔のレイタは、僕らが校門を出るまでずっとこっちを見て手を振ってくれた。とても良い子だ。これからも仲良くしたい。
▲市電に乗って駅前に
僕らは学校を出て坂道降りて、市電に乗って豊橋駅前に来た。まずは楽譜があるか駅前の本屋から見てみようという計画だ。
市電は良い。そう言えば、僕らにとっては市電があるのが当然の生活だけど、日本で市電のある都市って、そんなに多くないんだよね。
市電のデザインは色鮮やかなので楽しい。そして、乗ってからも車窓が楽しい。いろいろなお店を通り越すのを、バンドメンバーみんなで眺めながら駅前に到着した。
まずは、駅前の精文館が第1目標だ。僕らは4人ぞろぞろと歩いて楽譜のある棚を探した。そして、楽譜の棚を見つけたけど、どうやら無さそうだ。みんなで手分けして探したけど、見つからなかった。
次に、同じビル内にあるヤマト楽器に入った。このビル便利だよね。本屋に楽器屋、お世話になりまくりだ。
そして、楽器屋で目的のトップオブザワールドの楽譜を見つけた。ただし少年ナイフではなく、カーペンターズのやつだったけど。
「うーん、音源を聞いて、自分で楽譜を書けたら良いのだけどね。」
それにリョウコが答えた。
「そうしたら、楽譜代も浮いて良いよね。どこかに音源聞いて楽譜書いてくれる優秀なメンバーはいないかな?」
みんな、その意見に同意して頷いた。
「でもさ、カーペンターズの楽譜を買って、これを少年ナイフの演奏に合わせて、ちょっと変えたら良いよね。別に完コピしないといけないなんてことないからさ。」
僕が言うと、みんなも「そうだよね」と言って納得したので、カーペンターズ版の楽譜を買うことにした。今回は、みんなでお金を出し合って、一冊買って、それを貸し借りして自分のパートを練習するということにした。
▲ミスドでお茶する
意外にも早く「楽譜を買う」という目的を果たした僕らは、もうちょっと駅前で遊んでいくことにした。普段あまり行かない西武百貨店に入ったり、いろいろなお店を見て回った。それで疲れたから、広小路のミスドに行ってお茶を飲もうということになった。
僕はお小遣いを節約すべく、チュロスだけ頼んで、飲み物は無料の水で我慢することにした。きっとショウもそうするだろうと思っていたら、やはりショウもドーナツ(オールドファッション)を1個頼んだだけで、飲み物は頼んでいなかった。幼なじみで親が仲良しだけあって経済感覚似てる。
それに対して、リョウコは、ミルクティーとピンク色が特徴的なストロベリー&チョコファッションを頼んでいた。さすが彼女はバイトしているだけあるなぁって思って見ていたのだが、「え?ドーナツ一個だけしか頼まないの?貧乏くさい」と言って僕らを白い目で見ていた。
その後、ポンタが頼んだのは、ホットミルクとチョコリングだ。なんか、子供っぽい感じがしてとても好感が持てた。
4人で席について、ドーナツをパクリ。
「やっぱり、うまい!来て良かった!」と感動している僕らに対して、横やりを入れる者が一人居た。そう、リョウコだ。僕とショウが飲み物を頼まなかった事に苦情を述べる。
「信じられない。座って食べるのに、飲みのも頼まないの?デートで彼氏がそんなケチなことしたら、速攻で別れるけどねー。」
「なんだよ、リョウコ。別に今はデートでも、なんでも無いから良いだろ?」と僕は言い返す。
「デートじゃないけど、一応あたし女子高生ですからね!男女で遊びに来ているのに、連れが貧乏くさいことしたら恥ずかしいと思うでしょ!」と、リョウコも負けてない。
若干意地悪な口調であるものの、本気で怒っているわけではないし、大切なバンド仲間だ。僕とショウは、空気を読んで一通り謝ったのだった。
うーん、でも、僕は、高校生のうちから、限られたお小遣いをどう使うのか、何を買って何を我慢するのか。これが将来大人になった時に役立つ能力なんだと思うけどな。
ミスドを出ると日が暮れかけていた。繁華街がを通るとカラオケ店のネオンがギラギラと僕らを誘っていた。
「ねぇ、カラオケも寄っていこうよ」とポンタが言ったが、節約モードの僕らは断固拒否。
「ごめん、ポンタ、臨時収入があるまで待っておくれ。」
僕らは、豊橋駅で解散して家に帰ったのだった。バンドメンバーが揃って、いっぱい笑って、楽しい放課後の一時を過ごすことができた。
▲あとがき
作中に豊橋駅前の描写があります。でも、残念ながら、今回登場した、西武とミスドは今はもうありません。寂しい。
・精文館ビルのヤマト楽器…2008年1月27日閉店。
・西武百貨店…2003年8月10日閉店。
・ミスタードーナッツ(広小路店)…2018年5月31日閉店。
次の更新予定
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ケイタが緩いバンド始めたんだって @hanakujira123
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