第5話 会敵
「レイ、レイ聞こえるか!?そっちの状態は!?」
織邊中佐はマイクを乱暴に掴み、叫ぶように声を出す。
「こちら、八永、接近中。敵。接近中。」
八永は織邊中佐にそう答えると同時に、目の前のディスプレーを見る。敵機は五機。
うち一機は編隊を外れ、不規則な動きを繰り返していた。
―不自然。いつもと違う。
「こちら、八永。一機不審な、行動を取る機体を確認。接近し、確認を、取る。」
「八永!?八永!やめるんだ、直ちに帰投しろ!」
織邊中佐が叫ぶ、が、プツンと音を立てて、通信が切れた。
「八永…。どうしたんだ。お前まで…。」
織邊中佐はマイクを掴んだまま、肩を落とした。
司令部はその間にも混乱し続けていた。
「直ちに四機を帰投させろ!一機に対しては無力化コードを打ち続けろ!」
「駄目です、完全にこちらの指示を受け付けません!」
「無線封鎖解除できません!直ちに基地にアラートを発令してください!」
基地司令、オペレーターたちは原因不明の事態にパニックになっていた。
―実戦なんてここ十数年やってなかったからなぁ。
織邊中佐は心の中で呟いた。そして織邊中佐は基地司令の方を向き、口を開いた。
「このまま、八永に対処させます。」
「正気かね!?織邊中佐!」
「全責任は私が負います。指令。」
「だが、八永君は…!」
「指令!」
織邊中佐は指令の方をじっと睨みつけた。
しばらくの間、両名は睨みあっていたが、やがて指令は織邊中佐の気迫に押され、重々しそうに口を開いた。
「…指揮を一時的に織邊中佐に任せる…。」
「感謝します。指令!」
織邊中佐は指令に向かって叫ぶと、再びモニターの方を向き、マイクを握りこむ。
そして八永に話しかけ始めた。
「聞こえるか、八永。」
モニターの中では八永の機体がコントロールを失った機体に高速で接近していた。
「八永、聞こえているのなら応答しろ、八永!」
だが、八永は返事を返さなかった。
八永…。
八永まで様子がおかしくなってしまった。織邊中佐はそう思った。だが、その瞬間、司令部に八永の声が響いた。
「…アンナ?」
織邊中佐は気を取り戻し、八永に再度、話しかけた。
「どうしたんだ、八永!八永!」
だが、返事が返ってくることは無かった。モニターの中では八永の機体がさらにスピードを上げ、不明機に近づいていた。
AwarenessGhost―STUDYSENSE 緋月慶也 @hizukikeiya
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