第4話 ERROR
二日後、八永は愛機が待機している格納庫に居た。
訓練開始まで残り五分、八永は最後のチェックを行っている最中だった。
「八永、どうだ?機体は、いい状態に仕上がっているだろう。」
八永がコクピットから顔を出し、下を見ると、織邊中佐がこちらを笑いながら見ていた。
「織邊、中佐。いいよ、機体。」
「それは良かった。八永中尉。今日の訓練も頑張れよ。」
織邊中佐はそう言うと、八永の方へ敬礼をした。
八永もまた、織邊中佐の方を向き、敬礼し返した。
「まもなく、訓練開始です、格納庫内に残っている人員は直ちに退避してください。繰り返します、まもなく訓練開始です、格納庫に残っている人員は直ちに退避してください…」
格納庫に女性のアナウンスが響いた。
織邊中佐は八永の方へ顔を向け、もう一度、ニヤッと笑いながら軽く敬礼すると、機体に背を向けて格納庫の出入り口の方へと走っていった。
八永はそれを見届けると、シートの上に置かれていたヘルメットをかぶり、シートに座り込む。
プシュッという空気の音と共にキャノピーが閉じる。目の前のディスプレーに大量の英字の文章が映し出される。
操縦桿を握りこみ、左右に動かし、チェック。レバー、ギア、セット。
エンジン始動。ジェットエンジンの音が響くと同時に格納庫のシャッターが開かれる。
徐々に日が差し込み。機体を照り付けた。
ガコンという音がした途端、機体が前方へ動き始める。
機体はゆっくり滑走路へ侵入していき、転回すると動きを止めた。
システム、オールグリーン。ディスプレーの英字が消え、機体の現在の情報が映し出される。
「こちら、指令部。発進を許可します。繰り返す。発進を許可します。」
八永の顔つきが変わる。
「こちら八永、発進します。」
通信が切れ、八永は前を向く。
ゆっくりレバーを引くと機体が動き始める。
スロットルを上げ、セット。
機体は徐々に加速する。
タイヤが高速で回る。主翼が空気を断ち、キャノピーの外の景色が高速で後退する。
操縦桿を引くと機体は斜めになり、機首は空を向く。
さらに力を込め、引き込む。
機体は宙に浮き、高速で滑走路を離れ、空へ飛び込んでいく。
対地速度、相対速度、異常なし。
機体は雲を抜け、青天をなぞる。
水平を保ち、機体を安定に保つ。
その瞬間、警報音が鳴り響く。
レーダーに感あり。敵機五機。
―司令部、織邊中佐は目の前の巨大な画面に映し出された高速で動く記号を見つめていた。
いつものように無人の訓練用の機体が八永の機体に接近する。
が、突然聞きなじみのない警報が鳴り響いた。
「無人機の戦闘統合システムに異常発生。外部からの不正アクセスを確認!」
「コントロールが奪われる。プロテクトプログラムはどうなってる!」
司令部に複数の怒声が響く。織邊中佐は急いで前方へ駆け寄り、ディスプレーを見つめる。
南方へ編隊を組んで飛行していた五機の機体の内、一機が編隊から外れ、西方へ向かい始めていた。
「訓練中止!直ちに八永中佐の機体を帰投させろ!」
オペレーターが叫ぶと同時に織邊中佐は近くのマイクへ手を伸ばした。
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