『大好評!リラックスサプリメント「ストレスフリー」』
タダキ
第1話
『大好評!リラックスサプリメント「ストレスフリー」』
毎日を頑張るあなたをサポート!
年齢を重ねると低下していく人間が本来持っているストレス解消機能を活性化!
自然由来成分なので、お子様でも安心してご利用できるサプリメントです。
そういった謳い文句のサプリメン「ストレスフリー」。
南野太一が愛飲して三年が経とうとしていた。
南野は妻と五歳になる息子の三人家族の三十五歳。
半信半疑で始めた「ストレスフリー」だったが、今では無くてはならない物となっていた。
端的に言うなら「二十代のような活力」である。
同年代は仕事と家庭に追われ、金曜日の帰路となれば肩を落として歩いているところ、南野は胸を張り颯爽と駅の階段を駆け上る。
肥満気味だった体型も、今ではスリムになっている。目に見える変化は意識も変えていき、階段を使うようになっていった。
土日に子供と全力で遊んでも寝れば疲れは取れているし、一晩くらいなら徹夜をしても平気である。
――今日はいつもより少し早く帰れそうだし、家族で出かけるか。
そんなことを考えながら、南野は電車に揺られて家路についた。
帰宅した南条を息子が出迎えてくれた。
息子を抱きかえてリビングに向かうと、妻が料理をしていた。
「ただいま。あれ? いつもより晩ごはん早くない?」
テーブルには、すでに食器が並んでいた。
「おかえりなさい。ちょっとしたお祝いだからね」
振り返った妻は意味ありげな含み笑いを見せた。
「何? 何?」
そう言いながらキッチンに向かうと、息子も「なに、なにー」と真似をする。
「ほら、これ」
と、妻がエプロンのポケットから一通の封筒を取り出した。
その封筒は豪華にあしらわれ、差出人には「株式会社スペースランチ」とあった。
スペースランチとは「ストレスフリー」の会社である。
「えっ、マジで!?」
驚く南野だが、その頬は緩んでいた。
「早く開けてみて」
妻もその内容に期待しているのがわかった。
気になるのにあえて開封せずに待っていてくれたのだ。
ハサミを使って封を開ける。
中には「ご当選おめでとうございます」の文字があり、南野は妻と手を取り合って喜んだ。
「ストレスフリー」はサイトで利用者登録をすると、ランダムでプレゼントが送られてくるサービスがある。
どのような基準とタイミングで選考されているかは不明だが、SNSでは話題になっていた。
今回のプレゼントは北海道四泊五日の旅だった。
のんびりと過ごして心と身体を癒すのが目的のため、繁華街などの賑やかな場所からは離れている。
その代わり地ビール、温泉、アスレチック、エステの他に、季節のフルーツ食べ放題がついてくる。
日にちも当選者が決められるという、至れり尽くせりの旅行であった。
まさに「ストレスフリー」である。
「それでは、本日最後のオークションです」
マール星人がディスプレイを切り替えた。
そこには南野一家が映し出されていた。
「地球人。原産国、日本。成体のオス、メス一対と、オスの幼体の三体セットです」
会場にいる各惑星の参加者から歓声があがった。
「こちらは極力ストレスを与えることなく育てた一品です。さらに収穫前には温泉に入れ血行を良くし、マッサージにより筋肉をほぐしています。臭みを気になさる方をいらっしゃるかと思いますが、そこは香り豊かなフルーツを食べさせることで、甘みのあるものになっております。また落札後に収穫しますので、新鮮な状態でのお渡しができます。それでは三千ダールから始めさせていただきます」
その商品は、この日のオークションで最高額を叩き出した。
『大好評!リラックスサプリメント「ストレスフリー」』 タダキ @kakukyomu
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