34 仲直り


 りいなはハルの家に行こうとしていた。

 その中途。


 公園で玲愛らしき人影を見つけた。でも、近づこうとはしなかった。


「きっと玲愛も二階堂くんに見つけて欲しがってるよね。……ごめんね、見て見ぬふりして」


 りいなはその場から立ち去り、俺から貰ったピザをひとかじりした。誰にも食べさせない、と言わんばかりに。


(……?)


 玲愛は気配を察知し、一瞬振り返るも既にりいなの姿は無かった。


 ――時は経過し、昼過ぎ。


「お腹、空きました」


 …………。


「カナメくんとは運命だと思っていたのは私だけだったんですね。悲しいです」

「早く探して下さい」


 運命云々以前に二人はずっと一緒で、はぐれた事がほぼ無かった為、はぐれた時に必ず行く場所を決めていなかったので、玲愛を見つけるのは困難だった。


「……カナメくんのばか」


 そんな些細な反抗も想いも宙に消えていった。



 ――夕暮れ時になっても玲愛は見つからなかった。


 彼女が行きそうな場所は全てチェックした。学校も図書館も、ショッピングモールもの公園も。


「こんな夜遅くまで帰ってこないとか、俺の家も俺も嫌いなのかよ。隠れてないで帰ってくればいいのに」

「一か八か、少し離れた反対側の公園も見に行くか」


 少し、といっても歩いて40分以上掛かる。そんな遠くには行っていないだろう、と俺は予想していたが、そこに玲愛は


 もう時刻は19時を回っていた。


「――遅いです」

「りいなさんは来たか?」

「来てないです」

「俺の食べかけのピザだ。いるか?」


 彼女にピザを差し出す。途中で腹が減って、我慢できずに食べてしまった。


「要りません。殴りますよ?」

「ごめんごめん。冗談だ」


 俺は彼女の隣に腰掛ける。

 月明かりで映える、玲愛の潤んだ瞳はとても綺麗だった。


「……玲愛、泣いてる?」

「な、泣いてません。カナメくんのほうこそ焦った表情してますが、大丈夫ですか?」

「――玲愛、こっちを向け」


「ん……? ……っ!」


 俺は玲愛の小さな唇にキスをした。俺にだけ驚いた顔を見せてくれた。それが堪らなく愛おしくて。


「俺は玲愛以外にはこんなことしないよ。『りいなさんが好き』とか勘違いさせる言動してごめん。玲愛が特別だ」

「私もカナメくんが特別です。ちゅ」


 今度は玲愛からキスをしてくれた。


「急に怒ったりしてごめんなさい」

「いいよ」


「お腹が空きました。コンビニにでも行きましょう」

「別に俺を待ってなくてよかったのに。ひとりでコンビニくらい行けるだろ」

「むー」

「?」


 また不機嫌になる玲愛。


「カナメくんの為なら何時間だって待てますよ。餓死してもいいです」

「言い過ぎだ」


 前から思っていたが、玲愛って愛が重いな。けど、口には出さない。


 二人でコンビニに行き、適当におにぎり等を買ってマンションに向かった。


 そこでりいなさんと合流。


「仲直り、出来た?」

「はい。お陰さまで」

「りいなさん、ピザはどうしました?」

「ハルくんにあげたよ」

「あの……、カナメくんは何故そんなに私にピザをあげたがるんですか?」

「女の子の機嫌はピザで治る、というだろ?」

「多分、最終回になっても貴方の言葉の意味は分からないままでしょう」

「メタ発言!」


 そんなふうに笑いながら、部屋に入る。


「そういえば、二人連絡先交換とかしてないの? こういう時こそ、連絡取り合うべきだよ」

「「同じ部屋に住んでるから、別に交換しなくてもいいかなって思ってた」」

「ダメ! カップルなんだから」

「「ごめんなさい」」

「謝ることじゃないよ。ほらほら、早くしなさい」


 玲愛とLINE交換した。

 彼女のアイコンは先日、俺がプレゼントしたクマのぬいぐるみだった。そうやって、陰で好かれているのも嬉しいことだった。


 対する俺のアイコンは黒。


 そう、驚く人も多いと思うが、真っ黒。


 アイコンが真っ黒に染まっていて、なんの面白味も無い。


「なんで、黒なんですか」

「シンプルシンプル」

「シンプル過ぎです。怖いです」


 怖い、と言われ、地味にショックだった。


「分かった、変えるよ。何がいい?」

「自分で決めて下さい」

「分かった。玲愛とのツーショットにするよ」

「は、恥ずかしいです……」


 そうして、連絡先交換を済ませた俺らは早速メッセージを送り合うのだった。


 いや、ホント仲直り出来てよかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

学校一の美少女に振られたら、学校で二番目に可愛い女の子と同棲することになった 友宮 雲架 @sss_469m

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ