第170話 カミングアウト

「すごい展開になってきたな」

マンスリーマンションの一室で、翔太から報告を聞いた石動は目を輝かせていた。


「要約すると、サイバーフュージョンでキリプロの専用チャンネルができるって感じか」

「おそらくそうなるな」

「アクセスが殺到しそうだが、対策はあるのか?」

「課金だ」

「ファンからお布施を取るのか……」

「広告収入型にすると、アクセスは減らないからな」


「どんなコンテンツを配信するんだ?」

「ユニコーンの配信が企画されているが、当面は楽曲だな」

「尺が短いから、サーバーの負荷が低いってことか」


「Pawsというアイドルグループをソロで歌わせるという企画が出ている」

「テレビ番組と差別化できるってことか」

「あぁ、ロングテール戦略だ。

テレビではあまり取り上げられないタレントをインターネットを使って売り出していく戦略を考えている」

「テレビだと、視聴率を上げるために人気タレントだけを出すしかないからな」


ロングテール戦略は、売れ筋の商品に依存するのではなく、ニッチな商品を多数取り扱うことで、全体の売上を確保するマーケティング手法だ。

この戦略はインターネットと相性が良い。


「柊の入れ知恵か?」

「橘さんと相談しながら決めている感じかな」

「あの人も相当キレそうだからなぁ」


翔動うちはどう絡んでいくんだ?」

「ブログのときもそうなんだが、翔動うちでデータを管理して、インターネットに関するマーケティングを行っていく」

「お前、キリプロのタレントのことを知っているのか?」

「ぐっ……それを言われるとツライ」


翔太は主に神代の仕事に関わっているため、ほかのタレントについてはPawsのメンバーの一部や長町など、交流があるのはごく一部だった。


「動画配信はこの時代では少し無理のある事業なんだ」

「あぁ、そう言ってたな」 ※1

「なので、俺が知っている限りの情報を出していって、時計の針を進めるつもりだ」

「えらく思い切ったな」


翔太はこれまであまり目立たないようにしてきた。

しかし、石動や周りの熱量に押されてしまい、いつの間にか、さまざまな人間と関わってきた。

もはやこの流れは止められないだろうと翔太は感じていた。

(それに、あの予感も気になるんだよな……)


「技術を強制的に進めていくには、俺の知識だけでは足りないものがある」

「それって――」


石動は翔太が何を言わんとしているのかを感じ取っていた。


「新田に俺のを明かしたい」


⚠─────

※1 「俺と俺で現世の覇権をとりにいく」 92話 https://kakuyomu.jp/works/16818093081647355813/episodes/16818093090488541723

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