【考察】かつてこの星にいた「ペンギン」なる生物についての考察

どくどく

かつてこの惑星を支配していた種族は?

 恒星の第三惑星――地球と呼ばれた惑星には、明らかに文明の跡があった。


 光速に到達できず、銀河航行すらできない文明ではあるがそれらを考察すればこの惑星のことが理解できる。


 我々(地球人には理解できない音程。推測するに●●星人と言った意味合い)はそれらを収集し、そしてそこからこの惑星の文明を考察する。


 ――――――――――――――――


「私はこの『ペンギン』と呼称される生命が地球の支配者だと思うのだ」


「どうしてだ? どの記録も『人間』なる存在が記録を取っているぞ」


「多くの文明も『人間』が作ったとされる証拠もある」


「記録を取る存在が生命として上位とは限るまい。文明を創るのも支配者に命令されて行っていたのではないか?」


「成程、一理ある」


「しかしなぜ『ペンギン』なのだ? 他の生命体にもその可能性があるのではないか?」


「まず第一に『ペンギン』は他の生命体と違って二足歩行を可能とする」


「つまり?」


「高さを維持することで遠くを見ることができる。また、二足歩行は重心移動による移動をスムーズに行うことができる。生命体として1ランク上だといえよう」


「しかし二足歩行をすると言えば、『人間』やそれに近しい生命体も行うぞ」


「確かに。しかし『ペンギン』にはそう言った生命体にないモノがある。生息可能域の広さだ」


「生息可能域だと?」


「そうだ。『ペンギン』は大陸だけではなく、海域にも生息できる。『人間』やそれに近しい生命体は主に大陸部分だけだが、『ペンギン』は大陸と海域の両方に生息できるのだ」


「なんと。多くの生命体がそのどちらかだというのに」


「知性部分が低くて生息範囲が広い生命体はいるが、『ペンギン』ほどの脳を持つ存在でその生息範囲は確かに生命体として高次だな」


「成程、一理ある」


「更に言えば、彼ら『ペンギン』は地球という惑星の自転軸に存在する大陸に生息していた。この星の文明では南極と呼ばれる地域だ」


「ふむ、自転する惑星の軸付近……。つまり惑星の頂点という事だな?」


「そうだ。『ペンギン』という生命はこの惑星の自転軸……惑星の頂点ともいえる場所を生息地としていたのだ。これこそが、この惑星の支配者たる証と言えよう」


「となると『人間』は惑星の頂点に行くことができず、惑星の腹部で生息していたという事か。頂点から追い出され、そこで生活を余儀なくされたのか」


「だが待ってほしい。自転軸の大陸はもう一つある。北極と呼ぶ場所には『ペンギン』ではない生命体がいるぞ。それらは支配者ではないのか?」


「それについては明確に否定する資料がある。この言語を見てくれ」


「『敗北』……どういうことだ?」


「この『北』という言葉は互いに背を向け合った『人間』の事を指すという。負けた人間が背中を見せて逃げる。そう言う意味合いのようだ」


「つまり北側は敗北者。支配者ではないというのがこの惑星のルールという事か」


「そういう事だ。ゆえに南極にいる『ペンギン』こそがこの惑星を支配していた生命体なのだ」


「成程、一理ある」


「そして『人間』が『ペンギン』に奉仕している記録もある」


「興味深いな。それは確かに支配者たる証だ」


「『動物園』と呼ばれる『人間』の施設だ。『ペンギン』のために労働奉仕する『人間』の記録が残されている」


「なんと。『ペンギン』のために環境を整え、食料を与えているではないか」


「共生関係ではなく、一方的な奉仕活動だな」


「他の生命体にも奉仕する記録があるぞ」


「となると『人間』は生命として下位だったのか」


「そうだろうな。『人間』は惑星各地に散り、開墾する。文明を産み出し、自分達より上位の存在をそこに招く。そういう開墾奴隷的な役割だったのだろう」


「そしてその最上位に位置するのが『ペンギン』か」


「成程、一理ある」


「まだまだあるぞ。『人間』は『ペンギン』を崇めていたという記録もある」


「崇める? 『人間』の文明の中には宗教と呼ばれる分野もあるみたいだが、その類か?」


「ああ、『人間』は宗教に対する神の様に『ペンギン』を様々な手法で表現し、愛でていたという。『ペンギン』に似せた架空の存在がまるで『人間』の様に喋っている記録もある」


「イラスト、アニメ……ふむ、確かに。だが崇めるというほどではないのでは?」


「『ペンギン』に対する一定の感情はあるだろうが、崇拝というには言い過ぎでは?」


「もちろんこれだけではない。『人間』の言葉には『ファーストペンギン』と呼ばれるものがある。意味合い的には『リスクを理解しながらあえて最初に挑んだ存在』ということだ」


「危険に挑む挑戦者、ということか?」


「そうだ。勇気ある存在を讃える存在として『ペンギン』は定義されていた。文明とはいつだって挑戦の連続だ。その象徴として『ペンギン』は在ったのだ。崇められていたと言っても過言ではあるまい」


「成程、一理ある」


「以上の事より、かつて地球と呼ばれる惑星はは『ペンギン』が支配者として君臨していたと結論付ける」


「異議なし」


「考察は続ける必要はあるが、多くの資料に裏付けられたレポートだ。信頼性は高いだろう」


 ――――――――――――――――


 こうして地球はペンギンが支配していた惑星として記録付けられるのであった――

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