猫、ときどき山羊としゃぼん玉




 東京、ダンジョン庁庁舎。

 その建物内にある会議室の一室には、不機嫌そうに腰掛けているふくよかな体型の壮年の男性と、ダンジョン庁、対策課の課長である中年の男性である〝崎根さきね つかさ〟。それに一人の三十代前半程度といった細い目つきが印象的な男が円形のテーブルに並んで座っており、それぞれに沈黙を貫いていた。


 そこへ、部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。



「――失礼します。クラン『大自然の雫』より、クランマスターの〝大重 朋尚ともひさ〟様、並びに〝丹波になみ 雪乃ゆきの〟様がお見えになられました」


「あぁ、入ってもらってくれ」



 くぐもった扉越しの女からの声に崎根が声を答えると、木製の扉が開かれる。

 案内係の女性に奥の空いている席へと言われて進んだ場所には、3つの空席が残っており、ちょうどすでに室内にいた3人と向かい合うような形になっている。


 丹波がそんな空席の数に対して思考を巡らせる中、崎根が立ち上がって口を開いた。



「大重さん、それに丹波さんも。本日はわざわざご足労いただき、ありがとうございます」


「いえ、ご無沙汰しております、崎根さん」


「ご無沙汰しております」


「こちら、ダンジョン庁東日本統括部長の〝関野せきの 泰三たいぞう〟さん。そしてそちらにいらっしゃるのが……」


「初めまして、クラン『大自然の雫』の大重さん、それに丹波さん。私は探索者ギルド日本支部長、名を〝時野ときの 嗣信しのぶ〟と申します。本日はよろしくお願いいたします」


「大重だ」


「丹波です。よろしくお願いいたします」



 崎根に紹介された二人の態度は正反対とも言える。

 最初に紹介された関野は尊大な態度で僅かに頭を上下させる程度で済ませ、対して時野はにこやかに立ち上がってそれぞれに握手を求め、それに応じる形で大重と丹波も手を握る。


 対照的な態度ではあるものの、関野の態度は特に驚くほどのものではないな、と大重は思う。


 ダンジョン庁の統括部長とは、いわゆる官僚だ。

 彼らは探索者なる職業を見下し、まるで底辺の職業に就いた存在であるかのような偏見を培っており、一様に毛嫌いしている。


 たとえば、ダンジョンで取得できる魔石は純粋な魔力の結晶、つまりエネルギーの塊だ。

 この魔石を利用して様々な効果を生み出せると判って以来、電化製品も電力と魔力のハイブリット式のものに切り替わったものや、純魔力製、純電力製の製品などもそれぞれに生まれ、技術は新たなアプローチ方法を得てより便利に、より安全に進歩した。

 その他にも、ダンジョンで採掘できる回復薬、薬草、鉱石なども含めて、かつてダンジョンの存在していなかった時代、国内だけでは賄いきれなかった資源問題、技術的な限界といったものを解消し、時には新たなステージへと押し上げてきた。


 このように、ダンジョンの恩恵を受けるには探索者の存在は必要不可欠なのだ。

 なのに、官僚組は昔からそうではあるが、肉体労働というものをどうにも見下す傾向にあり、探索者もまたその多分に漏れず見下しているというのが実状だ。


 ダンジョンが生まれ、魔物たちと戦う戦士たち。

 いざという時は国を、民を守る力を持つ者達であるというのに、彼らはその現実を忘れたかのように、〝特区〟という耳心地の良い言葉を使った鳥籠へと追いやる。

 そうして隔離しておきながらも、そこでダンジョンから回収したものは国のため、国民のためにという〝正しさ〟等という身勝手な理論を押し付けて安価で買い取ろうとさえする。


 ダンジョンが生まれ、30年。

 国によってはそのような国の上層部の体制に我慢ができず、反乱やクーデター等が度々起こっているが、この日本という島国はそのような事が起きていない。

 それは国民性というものもあるだろうが、偏に、このような官僚と探索者たちの意識の差をうまくダンジョン庁の叩き上げの職員たちが支えてくれてきたからだ。


 ――だが、これも今後5年と保たないだろうな、とも思う。

 何故なら『D-LIVE』の登場によって、徐々に探索者たちの実状に対する声も上がり始めたからだ。


 現在の国の体制のままでは利権を手に入れにくい者たちが、探索者という存在を『D-LIVE』の配信を通して人柄と実力を確認した上で接触し、お抱えにしてダンジョン資源を買い取り、それらを利用して新たな研究、開発を成功させて業績を伸ばす企業の動きが活発化してきた。

 これにより市場も大きく動き出しており、いわゆる由緒があり市場を牛耳っていたはずの大企業が、徐々に衰退の一途へと追いやられるという事態が散見されつつあるからだ。


 今、日本が平和な国であるというのは、あくまでも表面的なものだ。

 旧体制の利権を手放せずにしがみつきたい者もいれば、新しい波に乗って旧体制を打ち砕かんとする者などが入り乱れ、水面下ではかなり激しい利権争いが始まっている。

 これらの事を鑑みれば、いつ、何が起こってもおかしくない。


 この国の現状は、まさに砂上の楼閣と呼ぶに相応しかった。


 そんな事をつらつらと考えながら、崎根に促されて大重は空いていた席へと腰かけ、それに倣って丹波も腰掛ける。



「時に、崎根さん。この空席、他に誰かが?」


「えぇ、お察しの通りです。そこには――」


「――失礼します。『燦華』のパーティリーダーである、〝佐倉さくら りん〟様がお見えになられました」


「あぁ、ちょうどですね。入ってください」 



 ちょうど崎根がその空席について語ろうとした、その時。

 会議室の外側から聞こえてきたノックの音に会話が止まり、崎根が返事をする。


 そうして入ってきたのは、実力派若手女性パーティとして注目を集めている『燦華』のリーダーである、燐であった。

 燐と崎根が挨拶を交わし、先程と同じく関野が無言のまま挨拶すらせずに一瞥、時野が同様に握手をして燐に着席を促した。


 そのやり取りが行われる中、丹波が小さく嘆息して大重へと視線を向けると、大重も似たようにため息を吐き出す。



「では、全員揃ったところで始めましょう。これより、『ダンジョンの魔王』に関する聴取、及び『ダンジョンの魔王』に対して、御三方に依頼させていただきたい内容について、ご説明させて――」


「――ふん、聴取なんぞいらぬ。どうせ新たな情報など出てこないだろう」


「ま、まあまあ、関野さん。そう仰らずに」


「くどいぞ、崎根。そんな事はどうでも良い。本題に入れ、私はおまえたちと違って暇ではないのだぞ」



 どこか困ったような苦笑を浮かべながら宥めすかす崎根と、にこやかに見守っている時野。そして一人、ふんぞり返ったような様子で豪語してみせ、その場を取り仕切ろうとするその姿に、燐は目を丸くしたものの、大重と丹波は深くため息を吐き出した。



「おまえたち3人、『ダンジョンの魔王』の懐柔したまえ。もしもそれができないならば、殺害せよ」


「っ、関野さん!? 懐柔はともかく、殺害なんて話は聞いてないですよ!?」


「あのような力を持った存在を放っておく訳にはいかんのだよ。国にとっての害悪となる可能性があるのなら、秘密裏に消した方が良い」


「関野さん!」


「崎根、この私に歯向かうというのか、ン?」


「く……っ」



 歯噛みする崎根が言葉を失くして黙り込む姿に、関野は愉快げに口角をあげた。

 その一方、この場に留まる時野はにこやかにその推移を見守っているだけで、これと言ってこの話には介入する意思はないというところだろう。


 そんな状況を見守り、困惑する燐の隣で丹波は瞑目し、その横、大重がにこやかに微笑んだ。



「ちなみに、その依頼を受けたらおいくらほど貰えるのでしょう?」


「ほう、話が分かるではないか。それはそうだろうなぁ。私に逆らうとなれば、国に逆らうも同義。そのような真似をするなど愚の骨頂というもの。では、二百万ほどは融通を――ぐぇっ!?」



 得意げになって語る関野の襟首を、関野の横までいつの間にやら移動していた大重が掴み上げ、椅子の背もたれに押し付けた。



「なあ、おい。おいおい。テメェはそれっぽっちの額で俺らに命懸けろってのか? あぁ?」


「ふぐ……、うぇ……っ」


「ましてや、やっこさんは俺らの命の恩人だぞ? なあ、それを殺せ、だ? テメェをここで縊り殺して、テメェみてーな連中全員ぶっ殺した方が世のため人のためってヤツだと思うんだがなぁ。どう思うよ、官僚サマよお」



 ――あぁ、やっぱりこうなった。

 一瞬で沸点を超えてしまった大重の姿を見て、丹波は深々としたため息を吐き出していた。


 政府の官僚というのは、探索者という存在をあまりにも知らなすぎるのだ。

 高位の探索者は己の力を理解していて、その力を振るうべき場所というものを定めている。

 そして大重という男は、仲間、そして恩人に対して必ず報いようとする類の人間だ。


 そんな彼に、遠回しでも権力に屈し金で恩人を殺せ、などという命令をすればどうなるかなど、火を見るよりも明らかだ。


 この状況を想定していて、それでマズいと思っている崎根はともかく、探索者ギルドという組織に所属している時野はくすくすと笑ってしまっているし、燐に至っては驚きこそしているものの、止めようとはしていない。


 要するに、この場にいてまともに会話になる相手は、一人しかいないのだ。

 そう考えて、丹波は大重らを無視したまま、時野へと顔を向けた。



「――時野さん。探索者ギルドの所属であるあなたがここにいるというのは、あの豚……失礼、関野氏の言い分を支持したと見做す事もできますが?」


「ふふっ、支持することなど有り得ませんよ。私はただ、今回、どこぞの馬鹿・・が何かをやらかすだろうと思い、探索者ギルドとして証人となるために。そして、いざという時は保護する事も考えて同席させていただいたのですから」


「……なるほど。では、言い方を変えましょう。あなたがいなければ、ウチの大重もこうも簡単には動かなかったでしょう。その点は御礼を言わせてもらいます。それで、その代わりに私たちに何をさせたいのですか?」


「あはは、本当に今回はあなた方に馬鹿なちょっかいがかけられると聞いてねじ込んだのですが……、そう言っていただけるのであれば。実は、我々探索者ギルドは、あなた達に東京第4ダンジョン特区の調査を依頼したいと考えています」


「えっ?」


「東京第4特区、ですか。3から5を内包する広大な特区だったと記憶していますが」


「えぇ、その通りです」



 それ以上の説明はなく、一度時野が言葉を区切り、ちらりと関野、崎根の二人に視線を送る。

 その合図に気が付いて、丹波が小さく頷いた。



「マスター」


「なんだ? 止めるのか?」


「いえ、少々聞きたい話がありますので、そちらの二人だけ連れて出て行ってもらえますか? 豚の鳴き声がするような場所でする話ではなさそうですので」


「ぶ、豚の鳴き声……」


「おう。んじゃ、崎根さんよう。ちぃと外で話、聞かせてもらうぜ?」


「あ、あぁ、分かった」



 燐が丹波の身も蓋もない表現に噴き出しそうになりながらも、それを無視して話は進む。

 そうして、大重が関野を掴んで部屋を出て行き、崎根も外に出たところで、時野が改めて口を開いた。



「実は、『ダンジョンの魔王』がとある学生になりすまして東京第4特区の養成校に通っていた、という情報が入りました」


「……は?」


「私も最初は耳を疑いましたが、どうやら冗談などではなく本物のようです。配信で見せた黒い翼、あれを使って生徒らを脅してから去ったようなので」


「……何故、そんなことを探索者ギルドが知っているのですか?」


「善意の協力者による情報共有がありましたので」



 ――嘘くさい、と丹波も、そして話を聞いていた燐も思う。

 だが、これ以上言及したところでこの男が情報を漏らしそうにはなかった。



「……情報については、今はそれで納得しておきましょう。ただ、その情報があって我々に依頼をしてくるということは、探索者ギルドも『ダンジョンの魔王』を手中に収めたい、という意思があるのですか?」


「手中に収めたいとまでは思いません。交渉の席についていただきたいというところです。無理を言って反感を買えば、我々もおしまいでしょうしね。ですので、純粋に交渉の場を設けたいのですよ。それができる可能性は低いですが、もしもそれを依頼できる存在がいるとすれば、彼と面識のある『燦華』の御三方、それに『大自然の雫』の大重さんとあなたたち、という訳です」


「……なるほど。では、もしも会えたとして、断られたら?」


「その時はそこで打ち切っていただいて構いません。あくまでも呼びかけ程度、というところで問題はありません」






 ◆ ◆ ◆






 ラトとの模擬戦から数日、ドリームランドとかいう不思議空間を用いた秘密基地の設計計画は着々と進んでいる。

 僕の希望により、不思議空間に建設している秘密基地は洋風のお城をイメージしたものにするつもりだ。


 ほら、黒幕と言えばお城じゃん。

 なんかこう、背後で無駄に雷とか落ちてる感じ……は、うるさいからいらないや。

 僕、無駄にうるさいの好きじゃないんだよ。


 あ、あとちょっと薄暗いのがいい感じだよね!

 アニメとかだと目元が隠れて見えないぐらいの薄暗さ……は、いいなって思ってたけどなんか不便そう。

 僕は領域で情報を得ることに慣れてきたけど、秘密結社の部下とか困りそうだし、ラノベとか読めないし。


 やっぱいいや、普通で。


 そんなイメージをラトに伝えて建築が開始したのだけれど……。



「にぇにぇに、に」

「にぇにぇに?」

「にぇにぇに」


「……ねぇ、ラト。ラトが連れてきたこの猫たち、なんか喋ってない?」


「気のせいよ」


「にぇにぇに?」

「にぇにぇに、に」

「にぇにぇに、にぇにぇに」


「ねぇ、ラト。あの猫たち、普通の猫サイズなのに尻尾あんな伸びてるし、ビル崩してコンクリートもどきみたいな謎素材を削ったりこねくり回して加工したり色々できちゃってるんだよ。ねぇ、ホントに猫?」


「猫よ」


「ホント?」


「猫よ。私がそう決めたの。だから、猫よ」


「……そっかー」



 ……うん、まあ、なんだろうね。

 ドリームランドっていう不思議空間なんだし、重さとかそういうのだって調整できたりとかしちゃうんだろうね。知らんけど。



「この子たち以外にも色々といるにはいるのだけれど、ここを秘密結社にするとなると人間種も招くことになるでしょうし、他の連中は連れて来なかったのよね。だから、ここにはこの猫たちしかいないわ」


「にぇにぇに、に」

「にぇにぇに」

「にぇにぇに」


「そっかー」



 なんかたまに顔の造形が崩れてたり、尻尾じゃないトコから尻尾みたいなのが伸びて触手みたいになってたりするけど、ラトがそう言うならそうってことでいいんじゃないかなって、思考を放棄する事にした。


 さて、差し当たって僕らの問題となりそうだった食料や水なんかだけれど、これについてはラトのおかげで解決した。

 というのも、実はラト、表側の世界で探索者関連グッズの製造販売を行う会社の特別顧問とかいう立場らしくて、そこで僕が溜め込んでた各種素材やらを色々買い取るように手配してくれたのだ。

 おかげで僕らの生活は比較的安定している。


 ちなみに、食事をするのは僕とラトだけ。

 猫たちは何も食べないし飲まない、眠らない。


 ……絶対猫じゃない……けど、もういいんだ。


 そんなこんなで5日ほど経過。

 僕はお城作りの知見もへったくれもないので、ひたすら領域操作の練習を続けていただけなんだけれど、お城が出来上がった。


 ……うん、出来上がっちゃったんだ、5日で。

 お城がこんなに早く完成するとは思ってなかったけれど、僕の目線の先には確かにお城がある。



「わーっ、凄いね!」


「昔海外で見たお城を簡略化した形ね。平地に建てているし、そもそも攻め込まれることを想定していないから城壁はいらないけれど、ただ簡略化しただけじゃ不格好な気もしたから、尖塔を増やしてデザイン性を重視してみたわ」


「おぉーー……おー……」


「周辺も颯が吹き飛ばしてくれたから、ちょうどいいから草原に作り変えようかしら」


「あっ、待って! だったらほら、悪の親玉の城っぽく、陰鬱な感じのお墓とかありそうな森とか!」


「できなくはないけれど……景観あまり良くないわよ? それでもいいの?」


「あ、うん。やっぱナシで」



 そっかー、そうだよねー。

 ああいうのって攻め込んできた勇者とか、迷い込んだ冒険者とか、そういう人たち目線だから「雰囲気ある!」って思ってわくわくするけれど、むしろお城にいる側からしたらそうなっちゃうのかー……。


 朝目覚めて窓を開けたら陰鬱な空気とか、うん。

 それ、健全な人でも数日で病むんじゃないかな。



「空だって晴天にしたり、風を吹かせたりもできるのだし、いっそ美しい花々のあるような草原にするのがオススメね」


「わお、ラトって意外と乙女チック?」


「そんな訳ないでしょ。ここの住人となるモノ・・たちは、人間種が耐えられる程度の存在に限られるもの。そういう存在のいる環境は、人間種にとっても心地良いと感じられるような環境が近いわ」


「へー、そうなんだ。っていうか、ここの住人となるモノ・・って、例えば?」


「んー、そうね。たとえば――っ、あれは……」


「ん? ……あれって山羊? なんか黒いけど」



 向こう側から歩いてくるのが見えたのは、黒い山羊の群れ。

 ゆっくりとこちらに近づいてきて、周囲を調べるようにそこからぶわりと左右に散って動き出した。

 成体というよりも、むしろ仔山羊みたいな感じかな、結構小さい気がする。


 観察しながら問いかけている内に、今度はその山羊の群れの向こう側に、何かシャボン玉のようなものが浮かんでいる事に気が付いて目を凝らす。


 光が揺らめいているのか、それともシャボン玉そのものが光っているのか、虹色のような不思議な色合いのそれは、横に伸びるように動いたかと思えば分裂して、けれど元々の大きさは変わらないまま、それぞれにまた分裂して空を漂っていく。



「……思いっきり居座るつもりじゃないの……」


「ん?」


「なんでもないわ。今はパスを繋いでいる最中のようだし、時間がかかるはず。放っておいていいわ。ともかく、あんな感じのもいる訳だし、美しい草原とかの方がいいと思うわよ」


「そうだね……。じゃあ、草原と森って感じで、その中に花畑もあるような、こう、忘れられたお城みたいに、自然の中に佇む感じでどう? あと無駄におっきい綺麗な湖とか」


「……そうね、悪くないわ。そういう方向で環境を変化させていくようにするわね」



 了承したラトが、手を小さく振って空中に立体映像のような四角い何かを浮かべて操作していく。

 その様子を興味深く見つめていると、ラトが僕を見てくすりと笑った。



「これが気になるの?」


「うん、何それ?」


「今は調整中だけれど、あなたがこの世界の管理者として管理できるように纏めているコンソールよ。本来、私たちは世界に命じて管理を行えばいいのだけれど、人間種から此方側へとやってきたあなたにはそれも難しいでしょうしね。いずれあなたもここから視覚的に操作できるようにして、この世界の調整感覚を覚えていくための補助具のようなものね」


「おぉ、それは嬉しい!」



 なんかこう、ゲーム的な感じでわくわくする。

 早くそれ触ってみたいんだけど、今は我慢かなぁ。



「さて、それじゃあ城内を案内するわ。ついていらっしゃい」


「はーい」





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