笹舟
ヤマシタ アキヒロ
第1話
笹舟
思えば笹舟の作り方を
誰に教わったのだろう
ジョギングの途中
笹の葉を折り取り
一艘の
不格好な笹舟を作る
小川に流そうか
それとも……
いちど
もう一度しっかりと折り込み
勇壮な舟を
目の前にかざす
せせらぎに落とそうと差しのべた瞬間
僕は思い止まり
小さな舟を
遊歩道のベンチの端に置いた
お母さん
これ、どうやって作るの?
そんな母子の会話を想像しながら
あるいは
お母さん自身の胸に
少女のころを思い出す
よすがとなることを夢見ながら
小川に流せば
それでおしまい
はじめから
なかったのと同じ
不格好な青い舟を尻目に
僕は汗をふきふき
そのまま
遊歩道を走り去った
(了)
笹舟 ヤマシタ アキヒロ @09063499480
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます