第157話 大晦日
12月31日。
今年最後の日である今日は、三人で一緒に年越しをするためにも一羽と葵先輩が俺の家に泊まる事になっていて、今日は朝からとても楽しい時間を過ごしていた。
そして、朝食と昼食は俺が事前に何を作るのかを決めて食材も用意していたため俺だけで作ったが、夕食は二人も一緒に作りたいということで、三人で一緒に買い出しに行った。
その道中。
「この大晦日に、二人は何か食べたいのとかあるかな?」
「はい!」
「はい、一羽ちゃん!」
「今年最後の日は、三人で一緒に一つのものを囲ってご飯食べたいから、鍋料理が良い!!」
「お鍋!良いね〜!私は大賛成だけど、色人くんはどう?」
「俺も賛成です」
「じゃあ、今日は三人で一緒にお鍋しよっか〜!」
「うん!」
「はい」
ということで、俺たちは三人で一緒に鍋に必要な食材を購入すると、俺の家に帰ってキッチンに入った。
そして、鍋を取り出すと、俺たちは早速三人で料理を始め────数十分後。
「できた〜!」
「美味しそうだね〜」
「そうですね」
鍋料理を完成させた俺たちは、リビングのテーブルの上にそれを置くと、様々な具を入り混じらせながら湯気を発している鍋の前に座ると、早速料理を食べ始める。
「美味しい〜!具沢山って感じでそれぞれが良い味出してるね〜!」
「うん!しかも温かくて、この寒い冬には身に沁みる感じで本当最高……!」
「確かにそうだな」
鍋なんて今まで家にあるだけでほとんど使わなかったが、こんなにも温かくて美味しいものなのか……いや。
「一羽と葵先輩と一緒だから、俺は今こう感じることができているんだろうな」
「っ……!」
「っ!!」
仮に俺が一人でこの鍋を食べていたとしても、美味しいとは感じたのかもしれないが、好きな二人と一緒に鍋を囲って食べるという、何よりも大切なこの心の温かさを感じることはできなかっただろう。
そう思い至った俺が思ったことを口にすると、二人は小さく嬉しそうな声を上げると、それぞれ左右から俺との距離を密着させてきて言った。
「い、色人って、本当唐突にそういうこと言うよね……でも、私も同じ気持ちだよ」
「うん……私も、色人くんと一羽ちゃんが居るから、この鍋もこんなに美味しく感じれて、この時間もこんなに楽しく感じられるよ」
「一羽、葵先輩……」
二人が俺と同じ気持ちだと言ってくれることに嬉しさを抱いていると、二人はそれぞれ鍋の具材を箸で挟み、それを俺の口元に差し出してきて言った。
「あ〜ん」
「あ〜ん」
「……」
その後、俺はしっかりと二人から差し出された料理を口にすると、今度は俺も二人に料理を食べさせた。
そして、それからは何度か互いにそれを繰り返しながらも、やがて三人で鍋料理を完食した。
それからも楽しい時間を過ごし、気が付けば────あと少しで、年を越える時間となっていた。
俺は、左隣から一羽、右隣から葵先輩に腕を組まれながら、二人と一緒にリビングのソファに座っている。
「もう少しで、色人と葵先輩とのたくさんの大切な思い出があるこの年が終わるって思うと、不思議な感じ……」
「うん……でも、これからもいっぱい三人で一緒に楽しい時間過ごすんだから、振り返ったり、ましてや寂しがったりしてる暇なんて無いよ」
「っ!うん!これからも、三人でずっと一緒!そうだよね、色人!」
「あぁ……これからも、楽しい未来の時間を過ごしていこう……三人で」
俺がハッキリそう答えると、二人は嬉しそうに頬を赤く染めて、俺と腕を組む力を強めた。
こうして、俺たちのたくさんの思い出の詰まった年が暮れていき────次の年になった瞬間。
隣に居る一羽と葵先輩は、それぞれ同時に俺の左右の頬にキスをしてきた。
俺は突然のことに目を見開いて驚きながらも……口角を上げて笑い、年が明けてからも、三人で楽しい時間を過ごした。
俺たちはこれからも、ずっと三人で────
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます