第158話 三年後

 ────三年後。

 俺と一羽は大学一年生。

 葵先輩は大学二年生となった。

 あれから、俺はモデル活動を始め、最初に一羽とのツーショットを撮った……が。

 そのツーショットが、事務所の想定していた数十倍もの反響を受け、俺と一羽は定期的にツーショットを撮ることになり、今では『IROHA』なんていう俺たちのコンビ名までできていた。

 その人気ぶりは『IROHA』がファッションの流行を生み出す。

 と言われるほどであり、自画自賛するつもりは全く無いが、それでも『IROHA』がファッション業界に大きな影響を与えていることは間違いない。

 一方。

 葵先輩はと言えば、高校の頃から変わらず今でも熱心に水泳に熱を注いでおり、本格的な水泳のプロチームの中でも特に注目の選手として活躍している。

 高校の頃から変わらずな努力家で、速さもあの頃とは比べ物にならないほど速くなっている。

 ちなみに、葵先輩だけでは努力をし過ぎてしまい、いつかのようにオーバーワークで怪我をしてしまいかねないと思った俺は……

 今では、葵先輩のマネージャーもしていた。

 プロチームにもマネージャーは居るが、やはり葵先輩のマネージメントは俺がしたいと思い、葵先輩もそう思ってくれていたため、これは今でもとても良い選択だったと思っている。


「色人?ぼ〜っとしてたけど、どうかした?」


 買い物途中に動きを止めていた俺のことを見て、一緒に買い物に来ていた一羽が不思議そうに声をかけてくる。


「もう一羽や葵先輩と出会って三年が経ったんだなと思うと、色々感慨深くてな」

「あ〜、思い出すことあるよね〜、私も時々思い出すよ」

「あの時から一羽は容姿が優れていたが、今はロングの髪を毛先だけじゃなくて全体を巻くようになったり、服装とか、他にも色々なところが大人びたな」


 俺が昔を思い出したことでふとそんなことを呟くと、一羽は後ろに両手を回して体を前のめりにして言った。


「色人は、大人びた私好き?」

「あぁ、好きだ」

「えへへ……私も、色人のこと好き〜!」


 嬉しそうに笑った一羽は、俺のことを抱きしめてきた。


「あっ!一羽ちゃん、また外なのに色人くんのこと抱きしめてる〜」


 そんな声が聞こえてくると、別の場所で食材を取って来てくれていた葵先輩が姿を現して、その食材を俺の持っているカゴの中に入れる。


「本当、一羽ちゃんは甘えん坊だね〜」

「っ!あ、葵だって、よく色人のこと抱きしめてるじゃん!」

「私は甘えてるんじゃなくて、お姉さんとして優しく包んであげてるんだよ」

「それずるい!」


 その後、二人はいつものように軽く言い合いをし始めた。

 こうして見ると、葵先輩は高校の頃からかなり大人びていたが、ポニーテールの髪を巻くようになったり、服装とか他の部分を見てみると、より綺麗な大人の女性になっている。


「あれ〜?色人くん、私のことそんなに見てどうしたの?もしかして見惚れちゃった?」

「葵先輩も、高校の頃と比べてより綺麗になったなと思ってました」

「っ!」


 俺がそう伝えると────葵先輩も、一羽と同じように俺のことを抱きしめてきて言った。


「私も、色人くんのこと、前もかっこよかったけど、今はもっともっとかっこよくなったと思ってるよ」


 結局二人ともが俺のことを抱きしめて来たことに少し呆れ……

 を抱きながらも、それ以上に嬉しいと感じながら、俺は一瞬だけ抱きして二人を俺から離して言った。


「続きは、またに帰ったらだ」

「は〜い」

「我慢する〜」


 それから、俺たちは食材を購入すると、家に向けて足を進める。

 俺たちは大学に入ってから同棲生活を始めたため、家というのは正真正銘俺たち三人の家だ。


「それにしても、高校って懐かしいね〜」

「うん、私たちは一年前まで高校生だったけど、なんかもうすっごく昔のことみたい!」

「そうだな……そういえば」


 俺は、一羽が首につけているペンダント、葵先輩が髪を括っているシュシュに目を通して言う。


「二人とも、まだ俺が高校一年の時にクリスマスプレゼントで渡したやつを使ってくれてるんだな」

「もちろんだよ、色人くんとか一羽ちゃんにもらったやつ使ってると、使うたびに二人のこと思い出せて良いんだよね〜」

「わかる〜!私も二人からもらったやつ大事に使っててよく同じこと思う!そういえば、色人もあの時私と葵が上げた私たち三人の記念写真と写真立て、今の家に引っ越した時に持って来てくれて、リビングに置いてくれてるよね」

「あぁ……大事な思い出だからな」


 そう答えると、二人は嬉しそうな顔をして左右からそれぞれ俺と腕を組んできた。

 そして、少し間を空けてから一羽が言った。


「今日の夜ご飯も楽しみ〜!ていうか、二人と一緒に住み始めてから本当に毎日楽しい!」

「家帰ったら大好きな子が二人居てくれて、私も幸せになるよ」

「俺も、二人と過ごせて本当に楽しい」

「ね〜!そうだ、今日夜ご飯食べ終わったら、三人で一緒に映画────」



 平凡なフリをしている俺が、実はクラスの美少女モデルを助けた人物の正体だとバレないように全力で二重生活をこなそうと思う────という物語は、この話を持って完結となります!

 この物語を最後までお読みくださり、本当に、本当にありがとうございました!

 作者がこの物語を描き終えた感想などを、次エピソードの『あとがき』にて語らせていただこうと思いますので、ご興味のある方はそちらの方も続けてお読みいただけると幸いです!!

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