第154話 霧真人色

 ────い、色人が、私と同じこの事務所でモデル!?

 突然告げられた衝撃の事実に、七星が目を見開いて驚いていると、美澄が補足するように言った。


「本日から、と言っても、本日はまだ手続きのみとなりますので、本格的なモデル業の開始は来年からということになります」

「そ、そうなんですね……じゃなくて!色人!モデルするの!?」


 今の驚きの感情を声に乗せて真霧にそう聞くと、真霧は頷いて言った。


「黙っていて悪かったな……こうして俺がモデルを始めることが確定するこの時まで、半端な状態では伝えたくないと思ったんだ」

「そ、それは、全然良いんだけど……え?い、色人が、モデル?それも、霧真人色としてって話だったよね!?」

「あぁ、俺が七星と出会ったのは霧真人色という偽りの存在だった……が、せっかく七星と出会った存在である霧真人色をただの偽りの存在としては終わらせたくないと思ったんだ」

「……そのために、モデル業を?」

「そうだ」

「っ……!」


 ────私と出会った霧真人色っていう存在を偽りの存在として終わらせないためにモデル始めてくれるなんて……!私からしたら、色人が色人であってくれるなら、そんなのもうどっちでも良かったけど……確かに私たちの出会いの思い出は大事だし、何より……色人が、その私との出会いの思い出のことを、そこまでしてくれるほど大事に思ってくれてるって考えたら……!


「色人!!」


 七星は、嬉しさが込み上げてきて、思わず真霧のことを抱きしめる。

 すると、そんな七星にプロデューサーが言った。


「今まで七星さんは男性とのツーショットを一度も撮ってきませんでしたが、七星さんさえ良ければ、今度モデルとして彼氏さんと一緒にツーショットのお仕事とかはどうですか?」

「え!?い、色人と一緒に撮影、ですか!?」

「はい」

「撮ります撮ります!絶対撮ります!!」

「ありがとうございます……これはまた、七星さんの撮影の幅が広がりそうですね」


 楽しそうに言うプロデューサーの言葉を背に真霧のことを抱きしめ続けていた七星だったが、真霧に一度離れるよう言われたため言われた通りに離れる。

 すると、真霧はプロデューサーと美澄の方を向いて言った。


「美澄さん……には全て伝えましたけど、改めて、プロデューサーさんも美澄さんも、今更ですけど前は名前とか偽っててすみませんでした」


 その謝罪に対して、プロデューサーと美澄が言う。


「そんなに気にしなくても大丈夫ですよ、この業界じゃ本名を聞くことの方が珍しいですから」

「はい、むしろ、関係値の低い相手に本名を伝えないというのは、モデル業を行なっていただくにあたってリテラシー面で評価に値します」

「そうですか……ありがとうございます」


 真霧の誠実さを目の当たりにして、もはや毎日のことだが、七星はさらに真霧のことを好きになっていた。

 すると、撮影スタジオの方からスタッフの声が聞こえてくる。


「撮影準備できました!いつでも撮れます!」

「あ、は〜い!では七星さん、お願いできますか?」

「はい!」


 七星がプロデューサーに返事をして、真霧の方を向くと────顔が合った瞬間に、真霧が言った。


「一羽、応援してる」

「っ……!」


 以前、撮影スタジオで応援していると言われた時は偽りの恋人関係だったが……

 本物になった今、その言葉は以前よりも、七星の胸に響く……そして。


「うん!頑張ってくるから、そこで見ててね!」


 頬を赤く染めて笑顔で伝えると、七星は撮影を行うグリーンバッグの前まで移動した。

 それから、七星はこれからの色人との活動や、今色人が見守ってくれていることに、とても嬉しさや楽しさを抱きながら撮影を行った。

 その七星は、今までの中でもとても輝いていて────真霧は、そんな七星のことを見て、優しい表情で口角を上げていた。



 この物語の連載を始めてから五ヶ月が経過しました!

 この第154話までお読みくださっているあなたへ、本当にありがとうございます!

 五ヶ月の間にここまで読んでくださったあなたのこの物語に抱いている感想を、応援コメントや感想レビューなどで教えていただけると本当に嬉しいです!

 作者は今後もこの物語を楽しく描かせていただこうと思いますので、この物語をここまでお読みくださっているあなたも、是非最後までお楽しみください!

 今後も応援よろしくお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る