第153話 本日から
◇七星side◇
クリスマスパーティーから日が経ち────12月29日。
今日は、七星のモデルの仕事納めの日。
普段だったら一人で撮影スタジオに向かうところ……
だが、二日前に、真霧から「一番直近にある一羽の撮影に俺もついていきたい」と言われたため、今日は真霧と一緒に撮影スタジオに向かうことになっている。
そんな七星は、どうして真霧が突然そんなことを言い出したのかなどを気にはしていたが……それ以上に。
「道中だけって言っても……色人と、二人きり!!」
という事実に、朝から自室で一人とても頭を巡らせていた。
「も、もうあれから何日か経ってるけど、あの日からはずっと葵も一緒で二人きりになることなんて無かったし……あの時のこと思い出して変な感じになっちゃったらどうしよう、あの時のこと……」
そう呟きながら、七星は無意識に自らの部屋のベッドに視線を移した。
すると、頬を赤く染めて大きな声で叫ぶ。
「────きゃ〜っ!だから、思い出したらダメなんだってば!私のバカ〜!!」
それから、真霧と二人で道中に向かうとはいえ、あくまでも仕事場に向かうということに意識を向けた七星は、時間をかけてどうにか心を落ち着けることに成功する。
そして、身だしなみを整え終えると────
「来た……!」
少ししてから真霧がやって来ると、七星はすぐに家から出て、真霧の待つマンションのエントランスに降りた。
そして、真霧と顔を合わせると、先ほどまで思い出していたことも相まって、少し照れや緊張によって声を上擦らせて挨拶をする。
「お、おはよう!色人!」
「おはよう」
「えっと……じゃ、じゃあ、行こっか!」
「あぁ」
先ほどのこともあって少し照れていた七星だったが、しっかりと真霧と腕を組むと、二人でマンションから出て目的地へ向けて歩き出す。
すると、七星が照れているのを誤魔化すようにして言った。
「それにしても、色人が突然私の撮影についてきたいって言った時は驚いたよ」
「ちょっと理由があってな……迷惑だったか?」
「ううん、迷惑なんかじゃないよ!むしろ────」
続けて、頬を赤く染めて気持ちの込められた声で言う。
「色人が近くで応援してくれてるって思ったら、本当に嬉しい!」
「そうか……だが、近くじゃなくてもいつも応援はしてるから、そのことは忘れないでくれ」
「っ!うん……!……えへへ」
嬉しそうな声を上げてから、真霧と腕を組む力を強める七星。
その後、七星からは照れや緊張というものが完全に消えて、そのまま二人で撮影スタジオに到着すると────
「七星さん現場入りです!」
という声が撮影スタジオに響いた。
と同時に、夏の時と同じプロデューサーが二人に話しかけてくる。
「おはようございます、七星さん……と、彼氏さん……!お話は聞きましたよ、これから、よろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします」
いつも通り落ち着いた様子で返す真霧。
────お話……?これから……?
困惑を抱いた七星は、プロデューサーに話しかける。
「おはようございます、プロデューサー!あの、お話っていうのは────」
「真霧さん、お待ちしておりました」
疑問を投げかけようとするも、直後。
二人の元へやって来たスーツを着た女性……美澄が真霧に話しかけたことによって遮られてしまう。
「って、美澄さん……?スタジオに居るの珍し────じゃなくて、え?色人のこと待ってたって、どういうことですか?」
謎が謎を呼ぶとすら表現できる状況に七星はとても困惑していると、美澄がそれに答えた。
「本日から、真霧さんのことを当事務所で雇い、霧真人色さんとしてモデル業を始めていただく運びとなりました」
「……え?」
────えええええ!?
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