第150話 葵先輩とクリスマス
12月25日。
昨日の12月24日は一羽と夜まで一緒に二人きりで過ごしたが、今日は葵先輩と一緒に過ごす日だ。
俺は昨日と同じように、髪を上げたヘアセットをすると、葵先輩との待ち合わせ場所に向かった。
「……」
待ち合わせ場所には、一目を集めている葵先輩の姿があったため、俺は近付いていく。
青のチェスターコートに黒のハイネック、下には紺のズボンと、かなり大人びた雰囲気の服装だが、葵先輩の雰囲気やスタイルによって見事に着こなすことができている。
「葵先輩、お待たせしました」
「っ!色人くん!!」
俺が声をかけると、葵先輩は嬉しそうに俺の名前を呼び、そのまま俺のことを正面から抱きしめてきた。
昨日の一羽もそうだったが、クリスマスに二人きりという状況によって、かなりテンションが上がっているようだ。
「こうして二人きりの状態で色人くんのこと抱きしめてあげるのも、かなり久しぶりな気がするね〜!」
「そうですね、そもそも二人になるのも久しぶりなので」
「そうだね〜!色人くんと最後に二人になったのって、学校で休み時間のちょっとした合間にたまたま廊下とかで会った時覗いたら、11月の最初の方にあった修学旅行の自由時間とかになるのかな?」
「はい」
「あの時は色々と考えて頭の中大変なことになってたよ〜、色人くんが返事くれるまでは我慢しようって思ってたのに手繋ぎたいなんて口走っちゃって、色人くんの優しさに甘えて本当に手繋いじゃったりしてね」
「そうでしたね……でも」
俺は、俺のことを抱きしめてくれている葵先輩の手を取ると、その手を握り続けて言った。
「今はもう恋人同士ですから、好きなだけ手を繋げます」
「っ……!言われなくても、これからは色人くんが嫌だって言っても問答無用で手繋ぐからね!」
「嫌なんて言いません、それに……今更葵先輩に遠慮なんてされても、少し違和感があります」
「あ!今色人くん失礼なこと言った〜!それ、お姉さんが遠慮知らずってことでしょ〜?」
「そういう葵先輩が好きだってことです」
「っ……!?」
葵先輩は、頬を赤らめて驚いた表情をすると、俺と繋いでいる手に少し力を込めて言った。
「あ、あはは、こんなに顔熱くしちゃってるところは、他の人はもちろん、一羽ちゃんの前でも見せてあげられないかな……今日は正真正銘、君だけの私だよ」
それから、俺たちは恋人繋ぎをしながら歩き始めると、二人で一緒にクリスマスの雰囲気に包まれた街の中を歩き始める。
「さっきも話した修学旅行の自由時間の時のことだけど、あの時自由時間が短くてもっと色人くんと食べ歩きとかしたいなって思ってたから、今日はこのクリスマスムードな街で色人くんとクリスマスを満喫したいんだよね!」
「楽しそうですね」
「でしょ〜?それに、屋外なら好きに色人くん手繋いだり────」
続けて、葵先輩は俺の腕を自らの身に抱き寄せるようにして言う。
「こんな感じで、好きに腕組んだりもできるからね!」
相変わらず積極的な葵先輩だったが、俺は改めて葵先輩のそういったところに惹かれているのだということを実感する。
それから、俺たちは────
「見て見て、色人くん!サンタさん居るよ!」
「かなりリアルですね」
葵先輩の予定通りに、クリスマスムードに包まれた街中で────
「色人くん、あ〜ん」
「……」
「はい!次私にもして!!」
「……あ〜ん」
クリスマスを満喫して過ごした。
そして、暗くなってくると、葵先輩が大きな声で言った。
「もう暗くなってきたね〜!色人くんと過ごしてると本当に楽しいよ〜!」
「俺もです」
「今日はあと一箇所行きたいところがあるんだけど、行っても良いかな?」
「もちろんです、どこに行きたいんですか?」
「イルミネーションプール!」
「イルミネーションプール……?」
「うん!私も行ったことないんだけど、すっごく綺麗なんだって!だから、絶対に色人くんと一緒に行きたいって決めてたの!」
「わかりました、行きましょう」
俺は、今から向かうのがプールということもあって、さらにテンションを高めている葵先輩と一緒に腕を組みながら、そのイルミネーションプールという場所に向けて足を進めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます