第149話 一羽とクリスマスの夜

「────今年まだ見れてなかったけど、やっぱり本当に綺麗!」


 しばらく歩いていると、一羽の言うイルミネーションで綺麗な場所へと到着して、一羽が感動したように声を上げた。

 そこは並木道となっていて、木々には青と白、反対に暖色などの光が付けられており、その通りだけまるで別世界のような光景になっている。


「色人!あそこにあるベンチで、このイルミネーション見ながら話そ?」

「わかった」


 一羽の提案通り、俺たちは並木道の間に等間隔に置かれているベンチに座る。

 すると、俺の目を見ながら聞いてきた。


「色人、こういうイルミネーションとか好き?」

「正直に言えば、今まであんまり興味は無かった────が……」


 俺は改めて、目に映る夜の暗い空の下で照らされている光る木々たち、そして隣に居る一羽のことを見て続けて言った。


「一人じゃなくて好きな人の一羽と見るイルミネーションなら、俺は好きみたいだ」

「っ!」


 俺の言葉を聞いた一羽は小さく声を上げると、俺と力強く腕を組んできて言った。


「色人ってばずるいよ!そんなこと言われちゃったら、もっと好きになっちゃうじゃん!!」

「そう言われても、俺は思ったことを伝えただけだ」

「もう!本当、本当に……大好き……」


 頬を赤く染めながら優しい声色で言うと、一羽はさらに俺に身を寄せてきた。

 それからしばらくの間、このイルミネーションの綺麗な景色を背景に二人で楽しく話していると、一羽が一度雰囲気を大きく変えて聞いてきた。


「ねぇ、色人?もう今19時とかだと思うけど、この後ってまだ時間ある?」

「当然だ、一羽と二人で過ごすクリスマスの日に他の予定を入れたりなんてするはずがない」


 俺がそう答えると、一羽は頬を赤く染めて、俺の腕に込める力を少し強め、緊張した様子で口を開いて言った。


「そ、そっか……じゃあ────この後……私の家来てくれないかな?」


 続けて、一羽は、俺がその誘いに答える間もないほどに間髪を入れず、慌てた様子で言った。


「ほ、ほら!デパートで買ったクリスマスのお菓子一緒に食べたいなって思ったの!後からでも食べれるけど、やっぱりクリスマスの日に食べると後から食べるのと全然違いそうだし!」


 ……前までの俺ならこの言葉を真に受けていたところだと思うが、今まで一羽と過ごしてきた時間や今の俺たちの関係性を考慮すれば、この誘いがどんな意味を持つのかは予測することができる。

 だが、どちらにしても。


「わかった、一羽の家に行こう」

「っ……!ありがと……!」


 俺に断る理由なんてあるはずも無いため頷くと、一羽は嬉しそうに頷く。

 そして、立ち上がると、俺たちは恋人繋ぎをして一羽の家に向けて歩き出し────やがて一羽の家に到着すると、俺たちはそのまま一羽の部屋に入る。

 すると、一羽は丸のローテーブルに、購入したお菓子の入っている袋を置いて、頬を赤く染めながらも緊張した様子で口を開く。


「あ……あのね、色人……今日色人のこと家に呼んだのは、本当はお菓子を食べたいからじゃなくて……もっと、もっと……色人と、一緒に居たいって思ったからなの」

「……」

「だから、だから────っ!?」


 そう言いかける一羽のことを、俺は正面から抱きしめる。


「い、色人!?」


 突然のことに驚いた様子の一羽だったが、俺はそんな一羽に伝える。


「俺も同じ気持ちだ……今夜は、一緒に過ごそう」

「っ……!うん……!うん!!」


 目を見開いて嬉しそうに言うと、一羽も俺のことを抱きしめ返してくる。

 そして、顔を向かい合わせると、恍惚とした表情で俺のことを見てきた。


「……」

「……」


 俺たちは、互いに自然と顔を近付けると────唇を重ねた。

 それから、俺と一羽は、二人きりの部屋で初めて長い夜を過ごした。

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