第146話 クリスマスの予定

「色人!手、繋いでもいい?」

「あぁ」

「私も〜!」


 いつも通り一羽と葵先輩の二人と学校に登校していると、二人は俺と手を繋いできた。

 気温が低いからか、二人の手も少し冷たい。


「はぁ、当たり前のことだけど、12月に入ってから本当に寒いよね」

「そうだね〜、もし学校のプールが普通のプールだったらこの時期は泳げないから、温水プールなことが本当にありがたいよ〜」

「温水じゃなかったらって考えるだけで怖くなりそう……12月って、可愛い服着れて撮影的にも着る服は春服とかで暑かったり寒かったりもしないからそういう面では嬉しいけど、普段は寒かったり、クリスマスだと彼氏居る友達とかに揶揄われたりもして憂鬱なイメージもあったけど────」


 一羽は、俺の方を向くと、俺と繋いでいる手に込める力を少し強めて言った。


「今年からは大好きな色人が居て寒くも無いから、楽しみなことでいっぱいだよ」

「そうだね〜!私は正直、今まで服とか男の子とかも興味無かったから12月とかでも気にして無かったけど────私も、今年からは毎年の12月が楽しみだよ」


 そう言って、葵先輩も俺と繋いでいる手に込める力を強めた。


「あぁ……俺も、楽しみだ」


 返事をすると、二人の気持ちに応えるように俺も二人と繋いでいる手に込める力を強める。

 すると、一羽が楽しそうな声色で口を開いて言った。


「そうだ!そうだよ!葵!この間まだ先だからって保留にしてたけど、今クリスマスどうするかとか話しようよ!」

「そっか〜!もう思ってるよりすぐだもんね〜!」

「クリスマス……か」


 今まで全く気にしたことが無かったが、恋人ができた以上当然そんなことを言っているわけにはいかない、重要な問題だ。

 そのため、俺は口を開いた七星の言葉に真剣に耳を傾ける。


「クリパするのは決定としても、クリスマスイブとクリスマスどうするかっていうところで、前葵と話して悩んでたんだよね!」

「クリスマスイブとクリスマス……どこに行くかで悩んでるってことか?」

「それもある、けど……」


 俺がそう聞くと、一羽はどこか恥ずかしそうにして口を閉じた。

 どういうことだろうかと俺が頭の中で推測を始めようとした時、今度は葵先輩の方が口を開いて言う。


「三人で一緒に居るのも楽しいけど、私も一羽ちゃんも、たまには色人くんと二人きりで過ごしたいっていう話になったの……これに関しては色人くんの意見が無いと決められないことだけど、まだ先だから聞くのは早いかなってことで保留になってたんだよね」

「なるほど……」


 確かに、二人と恋人になってから、三人で過ごす時間はとても増えたが二人とそれぞれ二人きりで過ごす機会というのは大幅に減った。

 二人きりで過ごす機会と言えば、時々学年の違う葵先輩と休み時間がズレて、一羽と過ごす時ぐらいだ。

 だからこそ、そのクリスマスイブとクリスマスという機会に、俺と二人きりで過ごしたいということか。


「二人がそれで良いなら、俺もそれで良い……というか、二人とそれぞれ二人きりで過ごすのは楽しみだから、それはそれでまた楽しみだな」

「っ!やった〜!」

「これはまた、楽しみが増えちゃったね〜」

「うん!じゃあ、26日は三人でクリパしようね!」

「そっちも楽しみだね〜!」

「今からケーキとか予約────」


 その後も楽しそうにクリスマスについての話をしている二人のことを横目に、俺も今まであまり意識していなかったクリスマスのことを、とても楽しみにし始めた。

 そんな朝の登校時間を経た日の夜。

 俺は、以前からテーブルの上に置いてある名刺に目を通す。


「……」


 そして、そこに書かれている電話番号を間違えないように入力していくと────俺は、一羽のモデル事務所で働いているという美澄さんに着信した。

 ────霧真人色という存在を、ただの偽りの存在で終わらせないために。

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