第131話 修学旅行一日目

 ────修学旅行前日の夜。

 俺は、二泊三日の修学旅行に持って行く物の準備と確認を行いながらも、この修学旅行を機としてあるをしていたため、その決意に向けて心の準備も行っていた。

 ……今まで築いてきた関係性が、には崩れてしまう可能性。

 そんなものと向き合うのは誰だって嫌だと思うし、俺が二人に出そうとしている可能性は、二人の反応によってはそうなってしまう可能性が高い。


「だが……そうなることを避けて自分を偽って、思ってもない答えを口から出すことだけは嫌なんだ」


 今までそんなことを繰り返して、どれだけ苦悩することになったのかは今更考えるまでもない。

 そんなことを考えながら、荷物の整理を行い続ける。

 そして、それを終えると、俺は最近引き出しからテーブルの上に出した、あるに視線を送る。

 いつしかの七星のモデル撮影会の打ち上げ会場で、美澄さんという女性からもらった名刺だ。


「……」


 そのことについても色々と考えていた……が。

 今はひとまず目の前の修学旅行と、その先に待っていることについて考えないといけない時のため、そのことは頭の隅に置いておくことにした。

 そして、明日からの修学旅行に備えた準備を終えた俺は、今日はもう眠ることにして────翌日。

 いよいよ修学旅行一日目当日になると、普段は髪を下ろしている俺だが、前の水族館の時と同様今日は少し気分を変えたかったため、髪を上げたヘアセットをして待ち合わせ場所である駅前までやって来た。


「みんな〜!新幹線乗る時楽だから、班ごとに固まっててね〜!」


 クラス委員が相変わらずのリーダーシップを発揮して大きな声でそう言うと、クラスメイトたちはそれに対して「は〜い」と返事を行った。

 俺が、言われた通りに班ごとで固まるべく、七星の姿を探していると、七星はとても存在感を放っているためすぐに見つけることができた。

 そして、俺が七星を見つけたのと同時に七星も俺を見つけたらしく、俺の方に手を振って大きな声で言った。


「色人〜!こっちこっち!」


 俺がそのまま七星の元へ足を運ぶと、そこには俺と同じ班である七星と七星の友達が二人、そしてムードメーカーの男子生徒が一人と、同じ班のクラスメイトが全員揃っていた。

 すると、七星の友達二人が俺の方を見て言う。


「うわ、真霧くん髪上げてるじゃん!」

「顔面強っ!」

「顔面が……強い?」


 顔に強いも弱いもあるのかと不思議に思っていると、七星が慌てた様子で言った。


「き、気にしなくて良いから!」

「そうか」

「うん!!」


 ────それにしても。

 俺は同じ班のクラスメイトも含めて、駅前に居るクラスメイトたちを見渡してから、ふと思ったことを口にする。


「今日は普段の登校時間より集合時間が早いし、普段の登校時間と照合して考えたとしてもこの時間ならまだ半分居るかどうかぐらいだと思うが、今日はもうほとんどが集まってるんだな」


 俺がそう呟くと、七星が言った。


「修学旅行でみんな楽しみだからだと思うよ、実際私も楽しみだし!」


 続けて、男子生徒が言う。


「俺も楽しみだぜ!いつもはギリギリなところを、今日はちゃんと早起きしたからな!!」


 なるほど。

 やはり修学旅行には、普段はあまり早く登校するという意識が無い生徒すらも、早起きして待ち合わせ場所へ移動させるだけの魅力があるようだ。


「色人は?修学旅行、楽しみ?」


 俺の前に顔を覗かせてそう聞いてくる七星に、俺はすぐに答えた。


「あぁ……楽しみだ」

「良かった……じゃあ、みんなで楽しい修学旅行にしようね!」

「おう!!」

「は〜い」

「おっけ〜」


 その後、全生徒が待ち合わせ場所へやって来ると、そろそろ新幹線がやって来る時間のため駅のホームへ移動して、俺たちはそれぞれ班ごとに新幹線へと乗り込んだ。

 こうして────七星や水城先輩と今までのように楽しく過ごせるになるかもしれない、二泊三日の修学旅行、その一日目が本格的に始まった。



 いいねや☆などで、この物語を応援してくださると嬉しいです!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

毎日 19:15 予定は変更される可能性があります

平凡なフリをしている俺が、実はクラスの美少女モデルを助けた人物の正体だとバレないように全力で二重生活をこなそうと思う 神月 @mesia15

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ