第129話 三人で

 ────ある日の昼休み。

 今日は俺と七星、水城先輩の三人で屋上まで来て、三人で同じベンチに座って昼食を食べていた。

 席順は俺を真ん中として左に水城先輩、右に七星が居るという席順だ。


「そうだ、色人くん……昨日話してたこと、今七星ちゃんに話しちゃってもいい?」

「はい、大丈夫です」

「ありがと〜」

「え?私に何か話ですか?」


 今水城先輩が俺に確認を取ってきた会話は、当然隣に居る七星にも聞こえているため七星がそう聞いてくると、水城先輩が言った。


「うん!あのね?今週の土曜日、元々色人くんと私の二人で水族館行こうって話してたんだけど、良かったら七星ちゃんのことも誘いたいな〜って思って」

「え!?水族館!?」


 七星は突然の話に、驚いたようにそう言った。

 この話というのは、昨日の夜、俺と水城先輩がしたメッセージを起因とした話で────


『色人くん、今週の土曜日に行く水族館に七星ちゃんのことも誘いたいんだけど、誘っても良いかな?』

『大丈夫ですけど、土曜日まであと数日のこのタイミングで突然っていうことは、何か理由があるんですか?』

『ううん、別に何か特別な理由があるわけじゃなくて、もしもう七星ちゃんの予定が埋まっちゃってたら埋まっちゃってたでいいんだけど、もし私がこのまま七星ちゃんに何も言わず色人くんと二人で水族館なんか行ったりしたら抜け駆けみたいになっちゃうかなって思ったの』

『七星は、そんなこと思わないと思いますよ』

『もちろん、七星ちゃんがいちいちそんなこと思ったりする子じゃ無いのは分かってるけど、だからこそ、そんなことしたく無いんだよね、あと、七星ちゃんが居たらきっともっと楽しくなると思うし!』

『わかりました、水城先輩がそうしたいなら、俺にも異論はありません』

『ありがとう、色人くん』


 というやり取りをしたからだ。

 この土曜日に二人で水族館へ行くという約束をしたのは、水城先輩が七星の俺への気持ちを知る前の話だったため、その時はただ俺と二人で出かけるつもりだったと思われるが、七星の気持ちを知った水城先輩はその優しさからこういう思考に至ったのだろう。

 俺が、水城先輩は本当にどこまでも優しい人だなと感じていると、七星が続けて言った。


「めっちゃ行きたいです!!……でも、色人と二人になれるせっかくの機会なのに……良いんですか?もし私に遠慮してとかだったら────」

「遠慮とかじゃないよ、水族館に行くんだったら大好きな色人くんと二人だけで行くよりも、大好きな色人くんと大好きな七星ちゃんと一緒に行った方が楽しいかなって思っただけ!」

「葵先輩……!そういうことなら、絶対行きたいです!!」

「じゃあ決定ね!でも、一日中水族館居るわけにもいかないし、その後のことも考えないとね〜」

「ですね!後でどこの水族館行くか教えてください!その周りで美味しいところあるか探してみます!」

「ありがと〜!三人で水族館とか本当に楽しみだね〜」

「はい!超楽しみです!!」


 その後、俺たち三人は土曜日のことを話しながら、三人で一緒に昼食を食べ進めた……二人と関わるたびに、俺の中で見え始めている答えが、より色濃くなる。

 この返事が二人に受け入れられるのかはわからない、が、それでも……

 俺がその自らの中にある答えを色濃くしながらも日々を過ごしていると、あっという間に土曜日がやって来た。

 今日は、休日ということでなんとなく髪を上げたヘアセットをして待ち合わせ場所に向かうと────そこには、一目を集めている二人の存在が居た。


「……」


 一人は、毛先の巻かれたサラサラな金髪ロングに、可愛らしい顔立ちで、上には編み込まれたオシャレなセーターに、下にはミニスカートを履いている七星。

 もう一人は、明るい水色髪を一括りにしており、大人びた綺麗な顔立ちをしていて、上には白のブラウス、下にはデニムのズボンを履いている水城先輩。

 俺よりも先に待ち合わせ場所に着いている二人は楽しそうに話していて、その二人の話している空間はとても存在感を放っていた。

 とはいえ、いつまでも二人のことを待たせるわけにはいかないため、俺は二人の元へ向けて足を進める。

 すると────


「あ!色人!」

「色人くん!」


 俺が二人のところに到着する前に二人は俺に気が付いて、俺の元まで駆け寄って来た。

 ────今日は、とても楽しい一日になりそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る