第128話 難しい決断
「────それにしても、色人くんって意外なところ大胆っていうか、普段あんまりそういうことしてくれる感じじゃ無いのに、さっきは濡れてる私のことを構わず抱きしめてくれたりして……そういうところで、私は色人くんのことがもっと大好きになっちゃうんだよ?わかってる?」
「はい」
「何その適当な返事!絶対わかってないよね!?」
学校からの帰り道、水城先輩の問いに対して俺が何となくといった感じで答えると、水城先輩がそう大きな声を上げた。
そして、続けて言う。
「大丈夫だと思うけど、風邪引いちゃうかもしれないから、一応今日は帰ったらすぐにお風呂に入るんだよ?それとも……お姉さんが一緒に入ってあげよっか?」
「大丈夫です」
「もう〜!私が一緒にお風呂に入りたいって思える男の子なんて、大好きな色人くんだけなのに、それをそんなに簡単に断っちゃっていいの?」
「……少なくとも、答えを出すまでは、水城先輩や七星とそんなことはできません」
俺がそう答えると、水城先輩は少し間を空けてから落ち着いた雰囲気で言った。
「どんな答えを選ぶにしても、色人くんにとって大変な決断になることは間違い無いと思う……だけど私、それに七星ちゃんも、色人くんがどんな決断をしたって、それが色人くんの出した答えならきっとどんなものでも受け入れるし、私と七星ちゃんは変わらず仲良しのままだから、遠慮なんてせず色人くんの好きな答えを出して」
「水城先輩……」
それから、水城先輩は小さく笑って言う。
「なんて、私はもし色人くんに振られちゃったらって考えると、今でも不安なんだけね……でも、だからって七星ちゃんの涙も見たく無いし……本当に、色人くんにとって難しい決断になると思うけど、これだけは言えるよ────私は色人くんがどんな決断をしても、色人くんのことが大好き……これだけは、絶対に変わらないから」
「……」
「なんかちょっと湿っぽくなっちゃったね……そうだ!修学旅行のことなんだけど、一年生と二年生で自由行動重なるタイミングがあるらしいから、その時────」
それからは重たい話はなく、修学旅行についての話をしながら途中まで一緒に帰り道を歩くと、俺たちはそれぞれ家へ帰った。
家へ帰ると、俺は二人の告白への返事についての思考を巡らせながらも、水城先輩に言われた通りにすぐお風呂に入った。
そして、お風呂から上がって自室で過ごしていると────七星からメッセージが届いたため、俺はそれを確認する。
『撮影終わった〜!結構撮ったけど、色人のこと考えてたらあっという間で終始楽しいまま終わった!!』
どうやら、撮影が終わったらメッセージを送ると言っていた件のようだ。
『それは良かった』
俺がそう返事を送ると、少し間を空けてから、グリーンバックを背にオシャレな服を着た七星の画像が送られてくると、続けてメッセージが飛んできた。
『これ今日撮影で着た冬服なんだけど、めちゃくちゃ可愛くない!?』
『あぁ、七星が着ると似合うな』
俺がそう返信すると────突如、七星から着信がかかってきた。
メッセージでやり取りをしていたのに、何故突然着信がかかって来たのかと疑問を抱きながらも、俺はそれに出る。
「もしも────」
『ちょっと色人……!私今外なのに、色人が私が着ると、とか言うから嬉しくて変な声出しちゃったじゃん……!』
「そう言われてもな、俺は思ったことをそのまま言っただけだ」
『っ!余計に嬉しくなって口角変な感じになっちゃうからやめて!あ、嘘、やっぱりやめないで!!』
それから、七星は電話越しに一人で何かをぶつぶつと呟いていたが、やがて落ち着いた様子になって言った。
『も、もう大丈夫!いきなり変な感じになっちゃってごめん』
「別にいい」
『勢いで電話しちゃったけど……せっかくだから、私が家着くまで────だと家着いた瞬間寂しい感じするから、家に着いてちょっと経つまでこのまま話さない?』
「わかった」
『っ!やった!!』
その後、俺と七星は、七星の要望通り七星が家に着いてから少し経つまでの間────ではなく、七星が家に着いてから少し経っても七星があと少し話をしていたいと言って聞かなかったため、家に着いてからしばらくの間も話をし続けた。
七星と水城先輩、その二人から告白され、改めて何も偽ることもなく接していく上で────俺は、二人への返事に、少しずつ辿り着き始めていた。
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