第123話 私色人大好きすぎ!!

 俺にハッキリと関係の進展を口にした七星は、俺がそれに対して言葉を発する前に大きな声で言った。


「やっっと言えた〜!今まで、色人のこと大好きだってことは伝え続けてきたけど、付き合って欲しいっていうのは言えてなかったから、言えてスッキリした〜!」

「……返事は────」

「今はしなくていいよ、これからゆっくりと考えてくれたら良いから!」

「そうか」

「うん!あ〜、でも、こうなったら月曜日学校に登校した時、ちゃんと葵先輩に報告しないといけないね〜」

「……そうだな」


 もし七星も俺のことが好きだという事実を水城先輩に伝えたら、水城先輩がどんな反応をするのかはわからない。

 だが、仮にどんな反応をされてしまうとしても、そのことを伝えずに今後も水城先輩と関わっていくことは不可能であるため、俺はそれを全て受け止める。

 そこまで覚悟して俺は今日七星に全てを伝えているため、そのことについても揺らがないでいると、七星が言った。


「そうだ、色人!結構話変わるけど、11月の最初にある修学旅行!私と一緒の班にならない?」


 修学旅行で、七星と一緒の班になる……もし文化祭前の俺だったら、七星と一緒の班になったら目立ってしまうからという理由で断っていただろうが────今は、クラスで目立つことを気にする必要も、七星に自らのことを偽っているというのも無くなったため、気兼ねなく頷くことができる。


「わかった、一緒の班になろう」

「本当!?やった〜!!じゃあ、今からどこ回るかとか、ちゃんと考えとかないと!!」


 まだ10月最初の土曜日だというのに気が早い気もするが、こうして物事を本気で楽しもうとする姿勢は俺も見習っていかないといけないな。

 それからは、特に重たい話をするわけでもなく、今日の映画や昼食についての話など、他愛もない話をし続けた。

 そして、外が暗くなってきた頃。

 七星は、ベランダのガラス越しに見える暗くなってきた空を見ながら言った。


「もう暗くなってきたね……色人、そろそろ帰る?」

「そうだな……今日は長い間七星と過ごしたし、帰ることにする」

「わかった!」


 そんなやり取りをすると、俺たちは隣り合わせになって座っていたソファから立ち上がって、七星の家の玄関へと向かう。


「色人!」


 俺が靴を履こうとしたところで、後ろに居る七星が俺の名前を力強く呼んだため振り返ると────七星は、俺のことを正面から抱きしめてきた。


「……七星?」

「色人のこと、抱きしめたいなって思っただけ……大好きな色人のことを」

「……」


 俺がそれに何も返せずに居ると、七星はゆっくりと俺のことを抱きしめるのをやめて、明るい笑顔で言った。


「今日のところは、これぐらいで満足しとく!帰り気をつけてね、色人!」

「あぁ……じゃあ、また明日学校でな」

「うん!」


 そのやり取りを最後にして、俺は七星に背を向けると、靴を履いてそのまま七星の家を後にした。

 ────今日を境に、俺と七星の関係性はまた一つ大きく変化したことを、目に見える関わり方でも目に見えないものでも、俺は深く感じ取って居た。



◇七星side◇

 真霧が居なくなった後。

 自室のベッドで横になった七星は、今日霧真の正体が真霧だったと告げられたことによって、最近真霧の目を見たことや、好きな人のことを友達に話した時の友達の反応などのことに点と点が繋がり、真霧に付き合って欲しいということもハッキリ伝えられたことで、とてもスッキリとしていた。

 そして、改めて思い出したように明るい声色で言う。


「ていうか、そうだ!明日から毎日、毎休み時間、色人に会えるんだ!!」


 霧真人色という存在と出会える機会はかなり限られていたが────その霧真人色が真霧色人だとわかった今、七星は。


「嬉しすぎ〜!え、お昼とかどうしよ!?色人の分のお弁当とか作っちゃう!?でも、まだ付き合ってもないのにそれはやり過ぎかな!?ていうか、クラスの子とペア組む機会とかあったら色人とペア組めるってこと!?え〜!!そうなったら私集中できるか心配!!そうじゃなくても、色人が同じ教室に居るってだけで集中できるかわかんない!!もう!!私色人大好きすぎ!!まぁ大好きなんだけど!もし雨とか降ったら相合傘とか────」


 今まで霧真と同じ学校だったらという想像を無数に繰り返してきた七星は、霧真が真霧だったと判明したことでそれが現実となることを知り、それからしばらくの間、とても上機嫌に一人ベッドの上で似たようなことを呟き続けると、眠る時も明日からの真霧との新しい学校生活に思いを馳せながら眠りについた。



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