第114話 色々な君
◇真霧side◇
七星とのメッセージを終えた俺は、次に水城先輩からのメッセージに目を通す。
『色人くん!文化祭お疲れ様〜!今日すっごく楽しかったよ!ありがとね〜!』
七星の方は、文化祭が終わったということに加えて日程を決めるという話があったが、水城先輩の場合は文化祭が終わったことと今日のお礼ということらしい。
『お疲れ様です、俺も楽しかったので、ありがとうございました』
俺が素直な気持ちでそう返信すると、すぐに既読が付いて水城先輩からの返信が返ってきた。
『ねぇ、電話してもいい?』
急な誘いだったが、特に断る理由も無いため承諾の旨のメッセージを送ると、水城先輩からの着信が掛かって来たため俺はそれに出た。
『あ、もしもし色人くん?ごめんね〜またいきなり電話したいなんて言っちゃって』
「いえ、何か話したいことでもあったんですか?」
『ううん?ただ、大好きな色人くんとちょっとでも良いからお話ししたいな〜って思っただけ……迷惑かな?』
「迷惑じゃ無いです」
俺が聞かれたことにそのまま答えると、水城先輩は嬉しそうな声色で言った。
『もう、そんなに優しいから、私は君のこと好きになっちゃったんだよ?』
「優しい……ですか?」
『うん、色人くんは優しいよ』
電話越しの水城先輩は、どこか優しい声色をしていた。
……俺はあまり優しい自覚は無い、どころか自分がどちらかと言えばそういったものからは遠いと認識していたが、どうやら水城先輩の俺に対する認識は違うらしい。
『そうだ、せっかく電話したんだし、次会ったら言おうと思ってたこと言うけど、今度また二人でどこかお出かけしない?』
……今聞くと二人で、というのも少し意味が違って聞こえてくるが、だからと言って水城先輩のその誘いを断る理由は無い。
「わかりました、行きたいところありますか?」
『うん!いっぱいあるよ!例えば────』
その後、俺と水城先輩は、出かけに行きたい場所や日程などについて話し合った……そして、その結果。
『じゃあ、10月中旬の土曜日に水族館で大丈夫?』
「はい、大丈夫です」
ということで決定した。
すると、水城先輩が大きな声で言った。
『あ!ていうか、もうこんなに長い間電話してたんだ〜!そろそろ終わらないといけないね……』
「そうですね」
『色人くん、今日は文化祭もこの電話も含めて本当にありがとね!色人くんのおかげで、本当に楽しかったよ!』
「俺の方こそ、ありがとうございました……おやすみなさい、水城先輩」
『うん!おやすみ!』
水城先輩からそう返って来たことで、俺は電話を切ろうとした────が。
『あ!待って!色人くん!』
そして、俺が「何ですか?」と聞き返す間もなく、水城先輩が言った。
『大好きだよ』
それだけ伝えてくると、水城先輩は電話を切った。
……好きと言われると、俺に告白して来た時の水城先輩の表情や雰囲気を思い出して────また、少し心臓の鼓動が速まった。
◇水城side◇
電話を切った水城は、頬を赤く染めてどこか恥ずかしそうにしながらも口を開いて言った。
「ちょっとだけ恥ずかしいけど、やっぱり……大好きな色人くんに、その大好きって気持ちを直接伝えれるのって幸せ〜!文化祭で告白して良かった〜!これで、あとは私が色人くんのこと大好きって気持ちを色人くんに伝えて行くだけだもんね〜!」
続けて、水城は真霧と水族館に行く日のことを想像する。
「色人くんと水族館、どんな感じになるのか想像もできないけど、私はそこで水族館に居る君っていう、また新しい君を見ることができるんだよね……でも、まだまだだよ……私はもっと、色々な君を見たいの……だから、色人くん────もっと、色々な君を、私に見せて」
真霧の姿を思い浮かべながら、水城は優しい声色でそう口にした。
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