平凡なフリをしている俺が、実はクラスの美少女モデルを助けた人物の正体だとバレないように全力で二重生活をこなそうと思う

第108話 シェア

「色人くん執事喫茶お疲れ様〜！本当客寄せ頑張ってたね〜！」

　水城先輩と合流すると、顔を合わせて第一声水城先輩はそう言って俺のことを労ってくれた。

「ありがとうございます」

「私の方こそ、色人くんのかっこいい執事服姿見れてありがとうって感じだよ〜！まぁ、色人くんは執事服なんて着てなくても普段からかっこいいけどね！何も着てなくても、体もすごくカッコいいし……」

「すみません、最後の方上手く聞き取れなかったんですけど、何か言いましたか？」

　俺が素直にそう聞くと、水城先輩はどこか慌てたような表情で口を開いた。

「な、なんでもないよ！？」

「そうですか」

「う、うん！」

　それから、水城先輩は少し間を空けて、近くにある屋台の方を指差して言った。

「見て！あそこのワッフル、すごく美味しいって文化祭一日目から評判になってたんだよね〜！」

「そうなんですね」

　評判なんて俺のところには入って来ないからその話は初耳だ。

「色人くんと一緒に食べたくて食べるの我慢してたから、よかったら一緒に食べない？」

「そういうことなら、一緒に食べましょう」

　水城先輩が俺と一緒に食べたいと言ってくれていることに加え、こういう機会でも無いとワッフルを食べる機会は無さそうなため俺がそう言うと、俺は楽しそうな表情をしている水城先輩と一緒にそのワッフルの店へと向かった。

　そして、少し並んでから俺たちの番がやってくる。

「色人くん、何味にする？」

「……ワッフルはあまり食べたことがないので、シンプルそうなプレーンとチョコにしようと思います」

「いいね〜！じゃあ私は、キャラメルと抹茶にしようかな〜」

　それぞれで今言った味のワッフルを注文すると、俺たちは買ったものを食べることのできるスペースへやって来ると、そこで早速ワッフルを食べ始める。

　ふんわりとした食感に、程良い甘味……なるほど、これは────

「美味しい〜！ワッフルって、この小さなサイズにおいしさが凝縮されてて、外はちょっと硬くて噛み応えがあるけど、中はふわふわなのが良いよね〜！」

「そうですね」

　俺が心の中で呟こうとした感想を、水城先輩が代弁してくれるようにそう大きな声を上げた。

「色人くん、キャラメルと抹茶食べられる？食べられるなら、半分あげるよ？」

「良いんですか？それなら、俺のも半分渡します」

　そう言うと、俺は今食べたプレーンのワッフルを水城先輩の方に差し出す……すると、水城先輩はそのワッフルを見て言った。

「このまま私が食べちゃったら間接キスになっちゃうけど、分けたりしなくて良いの？」

「あんまり気にしたことないですけど、改めて言われても、水城先輩だったら別に良いので大丈夫です」

「っ……！そ……そっか！」

　頬を赤く染めて、どこか嬉しそうにそう呟くと、水城先輩は俺の差し出したプレーンのワッフルを受け取った。

　すると、続けて今水城先輩の食べていたキャラメルのワッフルを俺に差し出して来て明るく言う。

「私も、色人くんとだったら嫌じゃないから、好きに食べていいよ！」

「ありがとうございます」

　そう言ってくれた水城先輩に差し出されたキャラメルのワッフルを受け取ると、その後俺たちは互いにワッフルを食べ、チョコと抹茶も同じように半分ずつシェアして食べた。

「一気に色々な味を食べるとやっぱり甘く感じますけど、それはそれで美味しいですね」

「うん……甘くて美味しかったね」

　水城先輩は、どこか嬉しそうな声色でそう言った。

　それだけ、ワッフルが美味しかったということだろう。

　その後、ワッフルを食べ終えた俺たちは、再度文化祭を回り始めると、水城先輩がある場所の前で足を止めた。

「ここの脱出ゲームもすっごく本格的らしいから、良かったら一緒に遊んで行かない？」

「わかりました、行きましょう」

「やった〜！」

　そして、水城先輩の提案によってそのままその建物の中に入る……すると、お化け屋敷ほどではないが視界が暗くなった。

「思ったよりも暗く────」

　俺がそう呟こうとした時。

　隣に居る水城先輩は俺の腕を取ったかと思えば────その腕を抱き寄せるようにして、腕を組んできた。

「……水城先輩？」

「ほ、ほら！脱出ゲームって入り組んでそうでしょ？君が迷子になっちゃったら、お姉さん心配だな〜って思って！」

「迷子……ですか？そんなことにはならな────」

「とにかく！先進んでみよっか！」

「……わかりました」

　思うところはあったものの、別に嫌と言うわけではなかったため、俺たちは腕を組んだまま早速脱出ゲームの出し物の奥へと歩いて行くことにした。