第104話 絶対行きます!!
「────怖かった〜!最初の方特に本気で怖すぎたんですけど、人色さんの優しさと、純粋に手を繋いでる安心感のおかげで、中盤以降はお化け屋敷堪能したって感じでめっちゃ楽しかったです!」
「それは良かった」
無事にお化け屋敷の出口から出ると、七星が両手を使った身振り手振りで楽しそうにそんな感想を口にした……最初の方は本気で怖がっていたり、七星がそのことを気負っていたりもしたが、結果的に七星が楽しむことができたのであれば言うことはない。
「人色さんは、楽しかったですか?」
「そうだな……正直、お化け屋敷については面白いというより製作陣の技術力の高さの方に驚かされたという感じだったが、お化け屋敷を全力で体感してる七星と一緒にお化け屋敷を過ごせたのは、良かったな」
「なら良かったです!ていうか、人色さんホラー強すぎないですか?純粋に怖さを感じるものが無理って人と、驚かされる系は無理みたいな感じの人居ますけど、人色さん両方全く驚いてなかったじゃないですか!」
「別に見た目の怖い人形があっても害があるわけじゃないし、驚かされるのだってお化け屋敷の中だったらいつ驚かされてもおかしくないとわかってるからな」
と言っても、お化け屋敷というものが文化祭で定番となっているのは、おそらく七星のようにお化け屋敷で驚いたり怖がったりする人の方が多いからで、俺みたいなタイプの方が珍しいんだろうことはある程度自覚している。
「はぁ、私も人色さんぐらいホラー得意だったらな〜!最近流行りのホラー映画、友達はみんな見てるんですけど、その中で私だけホラー苦手で事あるごとにそのことイジられるんです!」
「別に、流行りだからってわざわざ見る必要はない」
「そうなんですけど〜!せっかく流行ってるものがあるなら、それを共有して一緒に話したりして楽しみたいじゃないですか!」
もはや言うまでもなく、俺は流行というものには疎いため、七星の言っている感覚はわからないが、七星がそういう性格であることはわかる。
「なら、今度その映画を俺と一緒に観に行くか?」
「……え?と、人色さんと、ですか!?」
「あぁ、流行りはともかく、ホラーならおそらく大丈夫────」
「え!?それって人色さんと前の恋愛映画の時みたいに、今度はホラー映画デートってことですか!?行きます行きます!絶対行きます!!」
デート……
俺はただ、七星が困っているなら力になろうと思っただけだったが……まぁ、この際呼び方は何でもない良いか。
「わかった、その映画はいつ頃までやってるんだ?」
「確か、友達がハロウィンまでって言ってました!」
「そうか、なら10月のどこかで行こう」
「はい!ありがとうございます!」
観に行く映画が、七星の苦手とするホラー映画であることなどどうでも良いというように、とても嬉しそうな表情でそう言った。
すると、続けて近くにあった時計の方を見て言う。
「もう昼前……すみません、人色さん!私、そろそろ出し物の方行かないといけないかもしれません!」
「そうか、なら今日はここでお別れだな……また10月に映画を観に行く件でメッセージをしよう」
「はい!じゃあ、失礼します!」
元気にそう言うと、七星はこの場から去って行った。
「七星のメイド服姿……準備期間中には一度も見ることは無かったな」
特別興味があるわけではないが、せっかくの文化祭で七星が珍しい服を着るという機会のため、俺たちのクラスのメイド&執事喫茶が、執事喫茶からメイド喫茶に変わる午後のタイミングになると、早速その出し物の場所に行くことにした。
すると────そこには、一目を集めている存在があった。
明るくサラサラな金髪に、メイド服……言葉にするとシンプルだが、七星はメイド服すらも似合っていて────俺は、どんな時でも一目を集め、輝いている七星一羽に思わず目を奪われてしまっていた。
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