第101話 楽しみ

◇七星side◇

 ────9月末に行われる文化祭まであと約一週間。

 そんなある日の夜、七星は自室でスマートフォンの画面と向き合い、今からメッセージにて霧真のことを文化祭に誘おうとしていた……が、メッセージ入力画面で思わず手が止まる。

 それには深刻な理由────


「な、なんてメッセージ送ろ〜!普通に『二人で私の学校の文化祭一緒に回りませんか?』とかで良いのかな?でも、告白した後で二人でとか付けるとなんか意味出来ちゃう?ていうか、一緒に回りませんかとか質素すぎるかな!?」


 があるわけではなく、単に高校一年生の少女に起きている恋煩いだった。


「どうしよ、どうしよ!一週間前だからそろそろ誘っとかないと人色さんの方にも用事ができちゃうかもしれないのに!!」


 悩みに悩んだ結果────


『人色さん!9月の末に二日間、私の学校で文化祭があるんですけど、一日目か二日目良かったら二人で一緒に回りませんか!』


 そうメッセージを送った。

 二人で、という点を意識してしまっていた七星は、その文言を付けるかどうか悩んだが、逆にもう告白したのだからと思い切ることを選んだ。

 すると、数秒後には霧真からの既読が付く。


「っ……!」


 そのことにドキッとしながらも、七星は霧真がすぐにメッセージを見てくれたことに嬉しく思う。

 すると、すぐにメッセージも返ってくる。


『わかった、一日目にしよう』


 当然、七星としては一日目でも二日目でも、霧真と過ごせるのであればどちらでも良いので、すぐに承諾の旨の返信をする。


『わかりました!じゃあ一日目でよろしくお願いします!また細かい時間とか待ち合わせ場所はメッセージで送りますね!すごく楽しみにしてます!』

『わかった、俺も楽しみにしてる』


 ということで、ひとまず今日のところはそれで霧真とのメッセージを終えた────が、七星の感情がそのメッセージの終わりと同時に収まるはずもなく。


「人色さんと文化祭デート!楽しみ〜!!早く文化祭当日にならないかな〜!!」


 むしろ、七星はその後、テンションを高くして自らの自室で様々な想像をして楽しい時間を過ごした。



◇真霧side◇

「七星と文化祭で時間を過ごす、か……」


 七星とのメッセージを終えた俺は、スマートフォンを机の上に置くとそう呟いた。

 ……前に電話をしたとはいえ、七星に告白されてからは、初めて霧真人色として七星と会うことになる。

 それによって俺たちの間に何が起きるのかは、当日になるまではわからない。

 俺がそんなことを思っていると、スマートフォンから通知音が鳴った。

 まだ七星が何か俺に伝え忘れたことがあって、その連絡をして来たのか────と思ったが、そのメッセージの相手は、七星ではなく水城先輩だった。

 俺は、すぐにそのメッセージ画面を開く。


『色人くん!お姉さん、文化祭の一日目か二日目、色人くんと一緒に回りたいなって思ってるんだけど、どうかな?』


 七星に続いて、水城先輩からの誘い。

 当然、水城先輩からの誘いも断る理由は無いが、一日目はもう七星と約束を入れてしまっているため、二日目にしておいた方が良いだろう。

 ということで、俺はその旨のメッセージを送る。


『わかりました、二日目でお願いします』

『わかった!色人くんと文化祭過ごせるの、楽しみにしてるね!』

『はい、俺も楽しみにしてます』


 そこでメッセージは終わったため、再度スマートフォンを机の上に置く……この文化祭、色々と懸念点はあるが────俺は、素直に七星や水城先輩の二人と過ごすことができることを楽しみにしていた。



◇水城side◇

「色人くんと文化祭……!君と二人で色々と見て回れるなんて、本当に楽しそうだね……なんて、私は大好きな君と居られるだけで楽しいんだけどね!」


 その後、水城は真霧と過ごす時間を想像して、一人幸せな気持ちになっていた────そして、時は過ぎ。

 ────いよいよ、文化祭当日となった。

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