第94話 雰囲気
「────夏休みの間一回も会わなかったのに、真霧と話してるといつもの時間って感じがするの不思議」
二学期が始まって一週間が経ち、9月に入ったある日の休み時間。
二学期の始業式の日に七星と水城先輩の三人で教室で話した時は、時間帯が早かったためまだほとんど人が居らず、俺がその二人と話していてもそもそも注目を集める人が居なかったため問題無かったが、休み時間ともなるとそういうわけにはいかないため、俺と七星は夏祭り以前同様に俺が教室で七星と話して目立たないよう二人で屋上に来て話していた。
「真霧はどう?」
「そうかもしれないな」
「だよね〜」
俺が七星の言うことに同調すると、七星もそれに対して頷く。
そして、続けて何かを思い出したように言った。
「そうだ!私気になる人……っていうか、好きな人に告白したって言ったでしょ?それなのに、告白してから会うどころか連絡もできてないの!」
あまり気にしていなかったが、そういえば最近七星とメッセージをしていないような気がするな。
「どうしてだ?」
俺がそう聞くと、七星が大きな声で言う。
「モデルの仕事!夏休みいっぱい遊んだ分が今反動で来てて、しばらく忙しそうなんだよね〜!告白したのに好きな人と話せて無いとか辛すぎない!?あの人に避けられてた時も病んでたけど、今は別の意味で病みそ〜!!」
七星のことを避けることによって七星のことを傷付けてしまう以上、以前のように七星のことを避けるつもりは無いが、今の俺には七星との適切な関わり方がわからないというのも事実。
「はぁ〜あ、あの人が一緒の学校だったら、今こうして真霧と話してるみたいに毎日話せるのにな〜」
一緒の学校だったら……か。
今は高校一年生の二学期……これからあと二、三年間の間、俺は七星に自らのことを偽り続け────
「あ〜!好きな人と連絡できてないって話して、真霧にも言いたいことあるの思い出した!」
「俺に言いたいこと……?」
一度思考することを止めて七星の耳に傾けるようにそう聞き返すと、七星は制服のスカートにあるポケットからスマートフォンを取り出して言った。
「連絡先!前連絡先交換するって話してたけど、結局交換せずに夏休みになっちゃったでしょ?夏休みの間も何回か真霧に相談したいこととか、普通に軽く遊びたいなとか思ってたんだけど、連絡先知らなかったから連絡できなかったんだよね〜、だから今交換しよ!」
連絡先……色々とあって忘れてしまっていたが、その問題もあるんだったな。
連絡先は電話番号に付き一つだから、霧真人色として七星と連絡先を交換している俺は、真霧色人として七星と連絡先を交換することができない。
SNSなんかをやっていれば何か別の選択肢もあったのかもしれないが、生憎と俺はそういったものに興味が無いためオーソドックスなメッセージツール以外のSNSは入っていない。
「確かに交換したいところだが……もうそろそろ教室に戻らないと授業に間に合わない時間だから、戻ろう」
「うわ、本当だ!間悪いね〜!じゃあ、早く戻ろ!」
「……あぁ」
その後、俺と七星は二人で教室に戻った。
それから────放課後。
俺が頭の中で様々な思考を巡らせながら校門近くを歩いていると、横から声を掛けられた。
「色人くん、浮かない顔してるね〜」
────その声の方向を向くと、そこに居たのは水城先輩だった。
「そんな浮かない顔をしてる色人くんのために、これからお姉さんがカフェとかで一緒に居てあげよっか?」
「いえ、俺は別に────」
「決定だね〜!お姉さんこの辺で良い感じのカフェ知ってるから、色人くんのことそこに連れて行ってあげる〜!」
そう言いながら、水城先輩は強引に俺の背中を背中を押した。
相変わらずな水城先輩だったが……この水城先輩のいつも通りさが、今の俺にはなんだか少し落ち着けて、俺と水城先輩はそのまま二人でカフェへと向かった。
────道中、俺の気のせいかもしれないが、隣を歩く水城先輩の雰囲気がどこか今までと違うような気がした。
◇
この作品の連載を始めてから三ヶ月が経過しました!
この三ヶ月の間に、たくさんのいいねや☆、応援コメントなどを頂き、それらのことからこの物語を本当にたくさんの方が楽しんでくださっていることを実感できてとても嬉しく思っています!
第94話までこの物語をお読みくださっているあなたの、この物語への感想などを、三ヶ月という機会にいいねや☆、応援コメントや感想レビューなどの形で気軽に教えていただけると本当に嬉しいです!
作者は今後もこの物語を楽しく描かせていただこうと思いますので、この物語をお読みくださっているあなたも最後までお楽しみいただけると幸いです!
今後も応援よろしくお願いします!
◇
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