第76話 美男美女
8月も中旬に差し掛かったこの頃。
今日は七星と二人で海に行く約束をしている日のため、俺は髪を上げたヘアセットをすると七星との待ち合わせ場所へ向かった。
もはやその待ち合わせ場所では七星が一目を集めていることなど説明するまでも無く、俺は七星の元まで歩いて挨拶をした。
「おはよう、七星」
「人色さん……!おはようございます!」
俺の顔を見た七星は、嬉しそうな雰囲気で挨拶を返してくれた。
会う度に服が違う七星だが、今日の七星の服は白のワンピースに白の麦わら帽子と、今までとはまた少し系統が違っていた。
「今日の服は、海を意識して作ったのか?」
「っ!そうなんです!海に行くならやっぱりこういう格好の方が気分的に楽しいかなって思ったので!」
俺がその七星の服装から連想した言葉を口にすると、七星は嬉しそうに頷いて言った……いつもいつも思うことだが、今日も相変わらず────
「本当に、七星はなんでも似合うな、今日の服も似合ってる」
俺がそう伝えると、七星は頬を赤く染めた。
そして、嬉しそうな声を上げてから言う。
「ありがとうございます……!人色さんも、いつも通りとてもかっこいいです!!」
「ありがとう……今日は確か、プロデューサーさんが俺たちのことを車で送り迎えしてくれるんだったか?」
プロデューサーさん、というのは七星のモデル撮影を見に行った時に会ったあのプロデューサーさんのことだ。
「そうです!すぐ近くに車で待ってくれてるので、一緒に行きましょう!」
「わかった」
高校生の俺たちだけでは車で移動することができないため、車で移動させてもらえるというのはシンプルにありがたい。
ということで、俺と七星が二人でプロデューサーさんが車で待ってくれているという場所へ近づいてくると、七星が言った。
「人色さん、その……プロデューサーは、私たちのことを恋人同士だと思ってるので────」
「あぁ、恋人のフリをすれば良いんだな」
「お、お願いします……!」
当然そのことはわかっていたが、再度そのことを認識すると、俺たちはプロデューサーさんの車に到着し、そのドアを開けて俺たちは後部座席に隣り合わせに座った。
すると、プロデューサーさんが言う。
「七星さんは久しぶり、というわけではありませんが、彼氏さんは久しぶりですね……息災でしたか?」
「お久しぶりです、一応息災でした」
「それは良かったです」
軽く挨拶を交わしている間に俺たちがシートベルトを締めると、車が動き始めてプロデューサーさんが言った。
「七星さんと彼氏さんは、あれから関係の調子は良いのですか?」
「は、はい!人色は優しいので、とても良い感じです!」
「そうですね、一羽も優しいので良い感じです」
「一羽……!」
久しぶりの一羽呼びに、隣の七星が変な声を上げていたが、プロデューサーさんには聞こえなかったのかそれには無反応で言った。
「調子が良く無いのであればお二人で海など行かないでしょうから、そうなのでは無いかと思っておりました……あの七星さんに彼氏が居ると聞いた時は私を含めスタッフたちが驚きましたが、人色さんが七星さんに釣り合うほどに容姿の優れている方のため皆美男美女の恋人同士ということで納得しているようです」
「美男美女って……確かに一羽は可愛いですけど、俺は美男なんて言われる器じゃ無いですよ」
「い、一羽は可愛い……!う、ううん、それよりも……人色はそう言われてもおかしく無いほどかっこいいに決まってるじゃん!ね、プロデューサー!」
「そうですね……実際、打ち上げの際、もし七星さんの彼氏さんだとわかっていなければ人色さんにアタックしようとしていた人が多数居たようですよ」
「そうだったんですか」
俺がそのことに少し驚きながらそう口にすると、俺の右隣に座っている七星は俺の右腕を抱きしめた。
そして、頬を膨らませ拗ねた様子で言う。
「人色のことは誰にもあげないので、そのことはプロデューサーからちゃんと皆に伝えておいてください!」
「ふふ、わかりました」
────その数十分後。
場所と話題を移り変わらせながら話していると、いよいよ俺と七星を乗せたプロデューサーさんの車は、海へ到着した。
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