第70話 決意
水城先輩の個人大会の日まであと一週間ほどとなった今日この頃の夜。
俺が特に水泳とは関係無く通常の読書を行なっていると、俺のスマートフォンから通知音が鳴ったためそちらに目を向けると、そこには七星からメッセージが飛んできていた。
今となっては、七星からのメッセージを避ける理由というのも何も無いため、俺はその通知から七星とのメッセージ画面を開いた。
『人色さん!明日でも明後日でもいつでも良いんですけど、良かったら一緒にアイスクリーム屋さん行きませんか?最近新作が出たらしいんですけど、それが美味しいって話題なので人色さんと一緒に食べに行きたいです!』
「アイスか……」
七星からのメッセージを見た俺はそう呟く。
アイスを食べる、それもわざわざアイスクリーム屋に行ってまで食べにいく機会なんていうのは夏ぐらいなものだろうから、行ってみても良いな。
そう判断した俺は、七星にメッセージを返した。
『わかった、明日行こう』
俺がそう送ると、間を空けずに七星から返信が返ってきた。
『ありがとうございます!時間は何時ぐらいが良いですか?』
『朝の10時とかでどうだ?』
『大丈夫です!明日10時から人色さんに会えるの本当に楽しみにしてますね!』
その返信を見た俺も、それに対して間を空けずに返事をする。
『あぁ、俺も楽しみだ』
それで七星とのメッセージを終えた俺だったが、最後に送った自らのメッセージを振り返る。
「楽しみ、か」
何の打算もなく、自然に送った言葉のため、俺が心の底から思っていることなのだろう……七星と居るのが楽しいというのはわかっていたことではあったが、文字として客観的に見ると、初めて七星と会った頃からは考えられないほどに自らが変わっていることがわかる。
「ひとまず、明日予定ができたならそろそろ寝ておくとするか」
俺は、読書を切り上げるとすぐに消灯してそのまま眠りへと落ちた。
次の日────俺は、霧真人色として髪を上げたヘアセットをして七星との待ち合わせ場所に到着した。
すると、そこには白シャツにグレーのタイトスカート、そして膝上まである黒のソックスに、巻き髪の七星の姿があった。
俺は相変わらず視線を集めている七星のところまで行くと、七星に声をかける。
「おはよう、七星」
「っ!おはようございます、人色さん!」
七星は、俺が七星にそう声をかけるととても嬉しそうな表情と声色でそう挨拶を返してきた。
そして、俺は今日の七星に抱いた感想をそのまま伝える。
「今日は服装や巻き髪から、いつもより綺麗な感じで大人っぽく見えるな」
俺がそう伝えると、七星は頬を赤く染めて言った。
「っ!ありがとうございます!嬉しいです!モデル撮影の時とかは基本的にヘアメイクさんに巻き髪してもらうので、一人でやるってなると思ったより難しくて上手にできてるか不安だったんですけど、人色さんにそう言ってもらえるなら頑張って良かったって思います!」
「……そうか」
そして、俺と七星は早速二人で一緒に目的地のアイスクリーム屋へと向かう────その道中、七星が俺に話しかけてきた。
「そういえば、8月の最後の方にこの辺りで夏祭りがあるの知ってますか?」
「夏祭り……?知らなかったな」
俺がそう言うと、七星は楽しそうな声音で言った。
「花火とかもやるらしくて、すっごく大きな祭りらしいんです!だから、人色さんと一緒に行きたいなって思ってるんですけど、良かったら一緒に行きませんか?」
七星の提案に対して、俺は間を空けずに言う。
「わかった、一緒に行こう……それにしても、夏祭りか、今まで行ったことが無いからどんな感じか楽しみだな」
「行ったことないんですね!すっごく楽しいと思うので期待しててください!」
「わかった、期待しておこう」
◇七星side◇
霧真のことを夏祭りに誘うことに成功してから、アイスクリーム屋へ向かうまでの道中、七星はいよいよある決意を固めることにした。
もはや七星は、霧真への感情を自らの中だけでは抑えきれないほどに霧真のことを好きになっている……だからこそ。
────この夏祭りで、人色さんに告白する……!絶対告白する!!
アイスクリーム屋に到着するまでの道中、七星は自らに何度もそう言い聞かせた。
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