第64話 恋愛映画
◇真霧side◇
今日俺はどこに行くのかをつい先ほどまで知らされていなかったが、どうやら七星は映画館で映画を観たいらしく、俺と七星は一緒に映画館までやって来ていた。
「何か観たい映画でもあるのか?」
「あります!」
そう言うと、七星は映画館内にある一つのポスターを指差して言った。
「あの恋愛映画を観たいです!」
「恋愛映画……あまり観たことがないな」
「前人色さんのことを家に招いた時も、本当は一緒に恋愛映画を観ようと思ってたんですけど、私が変なことしちゃったので結局それもできなかったので、今日こそは絶対一緒に観たいって思ってたんです!」
そういえば、俺が七星の家で七星ことを悲しませてしまって帰ると言った時、七星は一緒に映画を……みたいなことを言っていたな。
結局その言葉を俺が遮って、この夏は一緒に出かけるという話をしたが、なるほど……元より断るつもりは無かったが、それなら尚更七星と一緒に恋愛映画を観ないとな。
「わかった、一緒に見よう」
「ありがとうございます!」
二人で恋愛映画を観ることが決定したため、俺と七星は二人で一緒にその映画のチケットを購入しに行く。
そして、座席を選ぶ画面になると七星が言った。
「スクリーン見えやすそうな真ん中の席空いてますね!」
「じゃあそこにしよう」
「はい!」
そう言ってスクリーンに表示されている座席をタップしようとした七星だったが────俺の方を向いて、どこか照れた様子で聞いてきた。
「と、人色さん……席って、隣でも良いですか?」
「あぁ、もちろんだ、一緒に来てるんだからそれが普通なんじゃないか?」
「そ、そうですよね!ごめんなさい、変なこと聞いちゃって……!」
そう言うと、七星は真ん中の席を隣り合わせになるように二つ選択して次の画面へ進んだ。
「い、意識しすぎ私……!映画館一緒に来たなら隣に座るなんて普通じゃん……!ていうか、これって映画館デート……そ、そういうの考えたら余計にじゃん!もう……!」
七星は何かを呟いていたが、俺は特に気にしないことにすると、二人でチケットを購入できたため俺と七星は俺たちが今から観る恋愛映画のやっているスクリーンへと向かう……その道中。
「人色さんって、映画館とかよく来るんですか?」
「来ないな、映画を観ることはたまにあるが、基本的には家で観る」
「今ってネットでほとんどの映画観れちゃいますもんね!じゃ、じゃあ、その……今まで、女の子と映画館とか来たことってありますか?」
「無い、七星が初めてだ」
「わ、私が初めて……!」
俺がそう伝えると、七星は頬を赤くして顔を俯けた。
そして、その状態でどこか恥ずかしそうにしながらも俺の方に顔を向けて言う。
「私も……男の人と映画館来るの人色さんが初めて、です」
「そうか」
そんなやり取りをしながら歩いていると、すぐに恋愛映画のやっているスクリーンへ到着したため、俺たちはその中に入って購入した座席の場所へ隣り合わせに座る。
そして、俺は少しリラックスする意味も込めて肘掛けに腕を置いた。
それから、少しの間映画の予告が続いたり、その間七星の方からチラチラと俺に対する視線を感じたが、俺はひとまず映画が始まるまで待つことにして────いよいよ、その恋愛映画が始まった。
「……」
恋愛映画に詳しくない俺でも、ストーリーがかなりわかりやすく作られているため楽しみやすそうな感じだ……ところどころ登場している人物、主に女性の心理がわからなかったりしたが、恋愛映画としての楽しみ方としてはある程度できているはず……それから少しして、いよいよ映画は佳境へ迫り────キスシーンになった。
キスシーンのある映画を観るのは初めてだと思いながらもスクリーンを眺めていると────七星が、肘掛けに置いてある俺の手に自分の手を重ねて、その手を優しく上から包んできた。
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