第24話 そっくり

 テスト期間が終わると、七星はテストが終わり昼で学校が終わりとなった時、俺のことを屋上に誘って来たため俺は渋々それについて行った。

 すると、七星は両手を広げて全身の緊張を解すようにしながら言う。


「あぁ〜!やっっっと終わった〜〜〜!」


 どうやら、テスト期間が終了したことがとても嬉しいようだ。

 そして、続けてそのハイテンションなまま言う。


「ていうかていうか!真霧って天才!?」


 ────え?

 ……俺が、天才?

 俺の言われたくない言葉ランキング堂々の第一位を言われたことにかなりの衝撃を受ける……どうしてそんなことになったんだ?

 今回のテスト、俺は今まで通り大体平均点になるように回答したはず────というか、そもそもまだ試験結果は出ていないはずだ。

 ということは、他の要素で俺が天才だと言われてしまう要素があったということだろうか。

 俺が瞬時に様々な推測を立てていると、七星は大きな声で言った。


「真霧が教えるの上手なおかげで数学いつもより結構わかったから、赤点回避は確実だと思う!本当、真霧天才〜!!」


 俺は、その言葉を聞いてとても安堵した。

 今七星の言った天才というのは、能力値的な天才ではなく、会話の流れやいわゆるノリ、というもので言った天才という言葉らしい。

 俺はそういった感覚が全く無いから、それを読み取るのが難しいが、ひとまず俺の能力値が本当はもっと凄いのではないか、などという疑いをかけられているわけではなさそうだ。


「七星の覚えが良かったんだ」

「そんなことないって!私本当に昔から数学は全然できなかったんだけど、真霧が教えてくれた時はすんなりと頭に入って来たもん!真霧が私のわからないことを読み取ってわかりやすく教えてくれたからかな?本当、真霧が居て良かった〜!」


 七星は、とても明るい笑顔でそう言った。

 ……不思議な感覚だ。

 俺の能力で、誰かの助けになれて、誰かが笑顔になることもあるのか。


「……」


 そのことにどこかポジティブな感情を抱きそうになっていた俺だったが、過去の出来事を思い出しその感情を抑えた。


「真霧?顔色悪いけど、体調良くないの?」

「なんでもない」

「……ねぇ」

「なんだ?」


 七星が、突然真剣な表情で口を開いたため、俺がそう聞くと、七星が俺に距離を縮めて来て言った。


「どうしてしんどい時に、なんでもないって言って誤魔化すの?」

「……俺は、誤魔化してなんて────」

「私の気になる人も、今の真霧と一緒だった……明らかに顔色悪かったのに、なんでもないって……どうしてそうやって、自分だけで抱えようとしてるの?」

「……」


 それに対する答えはある────が。

 それを、今この場で答えるわけにはいかない。


「さっきも言ったが本当になんでもない、七星の勘違いだ……それより、テスト終わりで俺も疲れてるから、そろそろ家に帰って休ませてくれ」


 そう言うと、俺は少し強引に話を切り上げ、屋上を後にした。


「真霧……本当、人色さんそっくり……」


 ────家に帰った俺は、自分の部屋の椅子に座る。


「……今日は、かなり痛いところを突かれたな」


 俺が平凡なフリをしている核なる理由と言ってもいい部分、それを七星に突かれるとは。


「だが、この土日は七星と関わることはないだろうし、ようやく久しぶりにリラックスした日々を過ごせるな」


 俺がそう呟いた瞬間、俺のスマホの通知音が鳴った。


「……」


 スマホの画面に目を通すと、七星から霧真人色としての俺へ向けたメッセージが届いていた。

 ……今、霧真人色として俺が七星のことを無視するわけにもいかないため、俺は七星からのメッセージを開く。


『人色さん!そろそろプロデューサーに打ち上げいつできるか送らないといけないんですけど、いつなら行けそうですか?』


 そうか、そういえば打ち上げに参加しないといけないんだったな。

 水泳大会のチケットをしっかり見てみると、日程は来週の土曜日らしく、打ち上げを行うなら平日よりも休日の方が都合が立てやすいだろうと考えた俺は────


『来週の日曜日で頼む』


 と、七星にメッセージを送った。

 すると、七星からすぐにメッセージが返ってくる。


『わかりました〜!プロデューサーに伝えときますね!』


 そんなやり取りを最後に、俺と七星のメッセージは終了した。

 来週の土日は確実に忙しくなるが、俺はそんな来週の土日に向けて、今週の土日はゆったりと過ごすことにした。

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