第22話 再会
月曜日になり学校に登校し、いつも通り自分の席に座った俺だったが────教室の外から強烈な視線を感じたためそちらを向くと。
「……」
その視線は七星から放たれたもので、俺に「来て」と伝えて来ているようだった。
……そうか、教室のような目立つ場所では関わらないという約束をしたから、俺を教室の外に出して何か俺と話したいことがあるんだろう。
だが、俺がその七星の要求に乗る必要性はどこにも無いため、俺は七星から視線を逸らした。
「はぁ!?」
すると、教室の外からそんな大きな声が聞こえ────たと思ったら、足音が俺の方に近づいてきた。
「ちょっと────」
「わかった、行こう」
俺は、大きな声で話し始めようとする七星に対してそう言った。
俺に対して大きな声で話されたりしたら、それこそ目立ってしまう。
なら、ここはおとなしく目立たない場所で七星と話す方が最善だろう。
どこか苛立ちを感じている様子の七星と一緒に、俺は屋上へ向かった。
そして、屋上に到着すると────
「ねぇ!さっきの何!?私真霧が目立つの嫌って言ってたからちゃんと静かに呼び出してあげたのに、なんで無視したの!?」
「視線だけじゃどんな意図があるのかなんてわからなかったんだ」
「じゃあ、今後は私があんな感じで見たら来てっていうサインだから!わかった?」
「あぁ、わかった」
俺がそう言うと、一度溜息を吐いてようやく落ち着きを取り戻した様子の七星が、本題に入った。
「それで、私が話したいことなんだけど────私!この土日、私が気になる人って言ってた人と過ごせたの!」
「そうか」
「うん!って言っても、両方とも結構強引だったんだけど────私の撮影まで見に来てくれたんだよ!?すごくない!?」
「すごいな」
「でしょでしょ!?これって、少なくとも私嫌われてないってことだよね!?」
「かもしれないな」
楽しそうに語る七星に俺が頷いていると、七星は嬉しそうな表情で言った。
「本当良かったぁ……正直、土曜日とか完全に避けられてる、場合によっては嫌われてるんだと思って、実は一人になった時泣いちゃったんだけど、私嫌われてなかったんだね〜」
「……泣いた?」
「盛大に泣いた〜!あの時本当辛かったぁ」
そこまで思い詰めていたのか。
俺がそのことに少し驚いていると、七星が続けて言った。
「ていうかそうだ!真霧って勉強できる?」
「普通ぐらいだが、それがどうしたんだ?」
「ほら、あと二日後からテスト始まるでしょ?私、英語はモデルとか女優業のために昔からやってたからできて、国語もなんとなくできて、科学とか社会とかもギリギリ赤点を取らないぐらいにはできるんだけど────数学が壊滅的なんだよね」
七星が数学をできない……イメージ通りだな。
「二日でどこまでできるかなって感じだけど、良かったら休み時間とか放課後に数学教えてくれない?人目が気になるんだったら、図書室とかでも良いし」
図書室はかなり人が少ないから、確かに目立ちたく無い俺にとってはうってつけの場所だ……前、俺に大会のチケットを渡して来た人と出会ったのが図書室だったからそこだけは懸念点だが、あの感じだと毎日図書室に通い詰めているというわけでは無いだろう。
なら、あとは俺がこの七星の提案を断るかどうかだが……断ったら休み時間ごとに俺の席まで来て大声で話しかけて来そうだから、断ろうにも断れない。
「わかった、なら次の休み時間から教えよう」
「本当!?やった!!」
七星は、嬉しそうに両手を上げた。
そして、次の休み時間、俺と七星は数学の勉強のために図書室へ入った。
テスト前だからか、普段よりも人が数人多い印象だが、誤差の範囲で片付けられるだろう。
俺と七星は、椅子に座って数学の参考書とノートを広げ、今から俺が七星に数学を教えようとしたところで────
「やっと再会できたね、お姉さんずっと待ってたよ?」
「え?」
突然声をかけられたと思い、後ろを振り返ると────そこには、いつか俺に大会のチケットを強引に渡してきた、水色髪の女性が立っていた。
あぁ────最悪だ。
◇
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