第14話 似たタイプ

 とても局所的な質問で、どこかで聞いたことがあるような話────そう、この質問はおそらく霧真人色の立場になるという質問だが、ここで嘘を吐く理由は無いと考えて俺は答える。


「助けられたことなんて忘れて、俺に構わず今まで通り生活して欲しいって思う」


 俺がそう言うと、七星は俺の回答を予測していたのか間を空けずに言った。


「それって、要するに真霧はその女の子のこと避けたいってことだよね?」

「そうなるな」

「じゃあ、その女の子のこと避ける上でどんなことされたら困る?」


 ……これは良い機会かもしれない。

 ここで、俺が霧真人色の時に七星にして欲しくないことを言えば、七星の優しさを考えればそれを実行してくれるはずだ。

 俺は、すぐにその七星の質問に答えることにした。


「そうだな、例えば無理やり会うような口実を作るようなことをするとか」

「うん」

「毎日メッセージを送ってくるとか」

「うんうん」

「あとは、そもそも積極的に関わろうとしてくるのも困るな」

「なるほどね〜」


 七星は、それらの俺の言葉を頷いて聞いていた。

 ……この質問は、おそらく霧真人色視点の質問なため、ここで俺がこう言っておけば七星は霧真人色としての俺に今言ったことはしてこな────


「じゃあ、今真霧が言ったことを私の気になってるあの人にすれば良いのかな〜」


 ……え?


「七星、今の話を聞いていたのか?俺は、今あげたことをされたら困ると思うって言ったんだが……その人が困るようなことをして良いのか?」


 俺がそう言うと、七星は小さく頷いて言った。


「もちろん聞いてたよ?でも、それは避ける上で困ることって話でしょ?だったら、あの人に避けられたく無い私はその逆のことをしてあの人が私のことを避ける上で困ることをしないと!真霧とあの人ってそういうところは似たタイプだと思うから、きっとあの人も今真霧が言ったことをすれば困ってくれると思うんだよね……困らせちゃうのは悪いけど、もし何もしなかったらあの人は本当に私のこと避けて遠くに行っちゃいそうだから仕方ないよね……ていうか!私のこと避ける理由も言わずに避けてどっかに行っちゃうとしたら、そっちの方が酷い話だし!うん、決めた!私、あの人がどうして私のこと避けようとするのかを聞き出すまでは、絶対にあの人から離れないようにする!!」


 七星が元気な表情でそう意気込んでいるのを見て────俺は、真反対にとても気分を沈めていた。

 本当に、最近七星と関わるようになってからつくづく思う────本当に、俺は人間関係というものの予測が下手なのだと。

 勉学なら、よほど変則的なものが出てこない限り、俺は全国模試で一位を取ることができる自信がある。

 そして、運動に関してもやったことのあるスポーツで個人競技、もしくはやったことが無かったとしても一ヶ月ほど期間をもらえるのであれば全国ベスト何位、と言われるようなところには行ける自信がある。

 だが……人間関係というものだけは、本当に俺の苦手分野らしい。

 俺は七星と会話をする際、都度都度その話の行先が俺の思い通りになるかどうかを考えて話をしている……はずだが。


「ありがとう、真霧!私、真霧のおかげであの人ともっと距離縮められるかも!」


 今目の前で起きているように、人間関係においては俺の予測とは反対のことが起きてしまう。

 本当に、どうして七星と関係を絶ち、霧真人色という存在を消す前日の今日にこんなことが起きてしまうんだ。

 俺は、もはやそんな自分に呆れを覚えながらも、その後今日一日の授業過程を終えると家に帰る。

 そして────家に帰ってしばらくした頃、七星から霧真人色としての俺にメッセージが飛んできた。


『人色さん!明日楽しみにしてますね!』

『そうだな』


 俺も、明日はようやく念願のカードキーを返せる日のため楽しみだ。

 その後、トレーニングジムに行ってからお風呂に入り眠りへつくと────いよいよ、俺の願いが叶う念願の土曜日がやって来た。

 霧真人色とも思いの外長い関係になってしまったが、それも今日でようやく終わりだ。

 俺はそのことに少し嬉しさを覚えながら、前髪を上げるヘアセット等必要な準備を済ませると、七星との待ち合わせ場所に向かった。

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