第13話 強弱
「……」
「ねぇ、何黙ってるの?私のこと避けてるよねって聞いてるんだけど」
当然と言えば当然のことだが、この厄介な状況に加えて七星が怒っている。
明日で色々と解決できてスッキリできるはずだったのに、どうしてその前日にこんなことに……だが、ここで「あぁ、避けてる」なんて答えられるわけもないため、俺はその七星の問いかけを否定するように言う。
「避けてない」
「じゃあ、私が休み時間話しかけに行こうとして真霧の視界に私が入った時、毎回その反対方向の教室の出入り口から出ていくのはたまたま?」
「たまたまだ」
「今まで休み時間はずっと教室で過ごしてたくせに、私と話してから教室の外に出るようになったのもたまたま?」
「たまたまだ」
「絶対嘘じゃん!一回二回ならまだしも、ここ数日の間毎日、毎休み時間そうなんて絶対おかしいから!!」
平凡な俺が七星と話しているところをあまり他の人たちに見られたくないと思っているからとはいえ、露骨に七星のことを避けすぎたか。
かと言って、避けなければ七星と話していたことになっていただろうから、これに吐いてはどちらが正解だったのか判断が難しいところだ。
「どうして私のこと避けてるのか、ちゃんと教えてもらうから!!」
「……悪いが、後にしてもらえるか?ちょっと屋上で日光浴でもしたい気分なんだ」
「へぇ、じゃあ日光浴しながら教えてもらってもいい?」
「一人の方が────」
「そういうのいいから!どうして私のこと避けてるのか教えて!!」
七星が大きな声を出したことで、クラス中の注目が七星と俺に集まった。
「な、七星?あんまり大きな声を出されると────」
「早く教えて!!」
ダメだ……このままだと、かえって注目を集めることになってしまう。
「……わかった、だが、ここだと人の目が気になるから場所を変えよう」
俺がそう言うと、七星はそれで話が聞けるならといった様子で頷いた。
ということで、俺と七星は二人で屋上までやって来た。
「それで?屋上まで一緒に来てあげたけど、まさか日光浴するだけとか言わないよね?」
七星が、明らかに怒っている様子でそう言った。
「それでも良いのかも────」
俺が頷こうとした時、七星は俺のことを睨んだ。
「冗談だ」
俺はその七星の目にすぐに降参を示すと、話を進めることにした。
「俺がどうして七星を避けるのか、だったよな」
「そう」
……平凡なフリをして平凡な存在居たいから、七星みたいな目立つ存在の近くには居たくない────と正直に言えば、俺が平凡では無いということがバレてしまう。
だが、適当なことを言えばさらに七星のことを怒らせてしまうだろう……なら。
「俺はあまり目立ちたくない性格だから、七星みたいにクラスの注目を集めるような存在と一緒に居ると、人の注目を集めるからあまり居心地が良くないんだ」
半分本当のことを良い、もう半分は隠す。
これなら、俺が平凡だということがバレずに、俺の願いを七星に伝えることができる。
そして、居心地が良くないとハッキリ伝えたため、七星の性格を考えればこれ以上真霧色人に関わって来ることは無いだろう。
「そっか、それなら私のこと避けちゃっても仕方ないね」
よし、これで────
「じゃあ、今後真霧と話すときは二人きりになれる場所で話さないとね!」
……え?
「ちょっと待て、そういう話じゃ────」
「え?私と一緒に居ると人の注目を集めちゃうのが嫌だって話じゃないの?」
確かにそうだが、普通どんな形とはいえ居心地が良くないと言われてじゃあ別の方法で一緒に居ようなんて考えるか?
……俺は、七星のことを甘く見てしまっていたのかもしれない。
「ていうか、そんな理由があったにしても黙って避けるなんて酷くない?最初から私にそう言ってくれてれば良かったじゃん!」
「……それは────」
「私、もしかしたら何か嫌われるようなことしちゃったのかもってここ数日色々と考え込んでたんだから!!」
気が強いのか弱いのかわからないな……だが、ポジティブに捉えるのであれば、今後七星は俺と二人きりになれる状況でしか話しかけてこないということだ。
そうなると、少なくとも教室で話しかけられるようなことは無いだろうから、それだけでも大きな収穫と言えるかもしれない。
「悪かった」
「別に、ちゃんと避けてた理由言ってくれたから良いけど……そうだ、ちょっと聞きたいことあるから聞いてもいい?」
「あぁ、なんだ?」
俺がそう聞き返すと、七星は言った。
「真霧は、例えば自分が助けたことのある女の子が積極的に距離を縮めようとしてきてる状況だとしたら、その女の子に対してどう思う?」
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