第5話 一緒
待ち合わせ時間少し前に、待ち合わせ場所に到着すると────そこには、一目集めている存在が居た。
白のシャツに、ジーパンを履いている金髪ロングの人物……七星一羽だ。
そのルックスによって一目を集めているのか、もしくは純粋にモデルやドラマ出演などで有名だからなのか……おそらく両方だが、何にしてもただそこに立っているだけで一目集めるというのは誰にでもできることでは無いため、すごいことに変わりはないだろう。
そんなことを思いながらも、俺は七星の方に近づいていくと声を掛ける。
「待たせたみたいで悪いな」
俺がそう声を掛けると、七星はすぐに俺の方に振り向いて首を横に振りながら言った。
「い、いやいや!全然待ってないので気にしないでください!」
「そうか」
この様子だと少なくとも十分ほどは待たせてしまっていそうだが、そう断定できる判断材料は無いため、ここは七星の言う通り気にしなくても良いだろう。
「それにしてもすごいな、七星が立っているだけで周りの注目を集めているように思えた」
「そ、そんなことないですよ!実は、モデル業とかドラマ出演とかをしているので、それで見られてるだけだと思います!」
当然、七星がそういったことをしていることを俺は知っていたが、ここは霧真人色として初耳なフリをしておこう。
「そうだったのか、それでも注目を集めることはすごいと思う」
「あ、ありがとうございます!」
俺が思ったことを素直にそのまま伝えると、七星は頬を赤らめながらそう言った……別にありがとうと言われることではないと思うが。
なんて思っていると、七星が突然衝撃的なことを提案してきた。
「あの!人色さんも、俳優さん……は演技力も要るのでわからないですけど、少なくとも絶対にモデル業はできると思うので、もし興味があったらどうですか!」
俺が……モデル業?
モデル業なんて、俺の目指す平凡から遠い部類のものだ……俺は絶対に、平凡から外れるわけにはいかない。
そのため、俺は七星にハッキリと言った。
「そう言ってもらえるのは嬉しいが、性格的に合わないと思うから遠慮させてもらう」
「落ち着いててカッコいいと思うんだけどな〜……」
「何か言ったか?」
「な、なんでもないです!」
七星は、慌てた様子でそう言った。
小声で何かを言っていたようだが、なんでもないということならなんでもないんだろう。
続けて、七星は口を開いて言う。
「と、人色さん!そろそろご飯行きましょ!」
「そうしよう」
会うのは二回目だが、特に気まずいと言った感じはなくスタートを切ることができた俺と七星は、七星の予約してくれているという店に向かった。
「ここです!」
そして、店の目の前に到着すると、七星が大きな声でそう言った。
白をベースとした、いかにも洋風な建物だ。
そのお店は、屋内とテラス席で選べるようだが、七星はテラス席で予約していたらしいため、俺と七星はテラス席に向かい合うように座る。
そして、メニュー表を開くと一緒にそのメニュー表に目を通す。
「七星はどれが食べたいんだ?」
「あ〜!それ、私が今人色さんに聞こうと思ってたので、人色さんが先に教えてください!」
「でも、実際に先に聞いたのは俺────」
「良いですから!先に教えてください!」
どうしてそこまで俺の答えを先に聞きたいのか知らないが、そういうことならとりあえず俺が先に答えるとしよう。
「俺は、このソテーにしようと思う」
そう言って、俺がメニュー表にある写真を指差すと、七星が言った。
「じゃあ、私も人色さんと一緒が良いのでそれにします!」
「一緒が良い……?どうしてだ?」
俺がそう聞くと、七星は恥ずかしそうに頬を赤く染めた。
「ど、どうしてって、それは、その……」
そして、それから少しの間黙り込んでしまったので、俺は七星に言う。
「とにかく、一緒で良いってことだな?」
「はい!」
頼む料理が決定したところで、俺が店員さんに目を合わせると店員さんが俺たちの元まで来てくれたので、俺は同じソテーを二つ注文した。
そして、ソテーが届くのを待っていると、七星が頬を赤く染めながら嬉しそうに言った。
「あの……私たち、デート……してるみたいじゃないですか?」
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