第2話

「おーい、自分君。なんだか最近付き合いが悪いんじゃないか?話しかけても返事の一つも返してくれない、かと思うと睨んじゃってさ。俺、なんかしたか?」そうAは自分に声をかけると、心配そうに自分のことを見ている。

「なんでもないよ。ただ人付き合いが苦手なだけなんだ。睨んでいるつもりもないし、避けている訳じゃないよ。」そう自分が話すとAは満足げにそうかそうかとホッと胸を撫で下ろしていた。続け様にAから「なあ、今度の日曜日に遊びにいかね?最近体が鈍っちまって、ボウリングとかしたいんだよな。田中とか森仲も来るぞ?」

とまさかの遊びの誘いだった。

「いいけど、自分ボウリングなんて下手っぴだぞ?すぐにガーターに入るし、当たっても3本くらいしか倒れないよ。」自分の話を聞いてAは何を聞いていたのか、「お、じゃあ来るってことで決定な!」「まじか…。」と心の声が漏れ出てしまった。急になんなんだと思う反面、なんだか青春をしているみたいで楽しみだなと、思ってしまった。不覚だ、悔しい。

Aは話終わった後、満足したのかるんるんとスキップをしながら自分の席を離れて行った。「なんなんだ、あいつ…。」いつも自分と話した後にウキウキしているAを不思議に思うのはいつものことだが、数分間考えてしまった。

その日の放課後、また今日も1人で畦道を歩いているといつもとはなんだか雰囲気が違うように感じた。なんだか嫌な予感がする。そう思ったのも束の間に、予感は的中してしまった。

後ろから「おーい、自分ー。おーい。」と声をかけられた。Aだ。めんどくさいなと思いつつ、後ろを振り返る。「いやぁ追いついた。今日顧問が用事あるからって、急に休みにしてよ。だから1人で帰るのもなんだし、久しぶりに一緒に帰ろうぜ。」といつもの文句を言って横を歩き出した。

「なあA、こうやって一緒に帰るのっていつぶりかな。久しく帰ってないよね。」そう笑いながらAに問いかけてみた。「そうだな、中学まではずっと一緒に帰ってたけど、高校に入ってからは俺が部活で忙しくなっちゃって、だから…、一年ぶりくらい?長らく帰ってねぇのな!」そう笑ったAを見て、なんだか久しぶりに楽しく感じた。「部活がなくてもAは彼女帰るしね。いやほんとに久々だね。」そう話すとAは手をぽんと叩き、こっちを向いて、「せっかくなんだし、秘密基地に行ってみない?」

自分はきょとんとしている。「あれって、壊れたんじゃなかったっけ?」と自分が尋ねると、「その壊れた秘密基地に行くんだよ。」と目をキラキラさせて自分の二つ返事を待っている。

「わかったよ、今から秘密基地に行くか…。」その言葉を聞くと、待ってましたと言わんばかりに、自分の手を引っ張って走り出した。

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嫌いな仲良し。 吉村汰謳 @nakaichi23

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