月が輝く

ナナシリア

月が輝く

「陽太、テストどうだった?」


 テストがすべて返却され、月渚は陽太に尋ねる。


「見て、ほら全教科満点」


 月渚は腰を抜かしそうになった。


 高校初のテストだけあって、気合を入れて勉強したのかもしれない。それにしても点数を取りすぎている。


 陽太はにこにこと笑っていた。


「陽太、なんでそんな高得点が取れるの……?」


 私だって勉強したんだけどな、と内心で思う。


「……頑張る理由があるから」


 陽太のそれが並々ならぬものであることを察して、月渚は言葉を詰まらせた。


「知りたい? 俺が頑張る理由」


 少しもったいぶった陽太の言葉に、月渚は即座にうなずく。


「俺、医者になりたいんだ」

「医者」

「詳しいことはまだ誰にも言ってないんだけど、昔後悔したことがあって」


 月渚はうなずく。


「過去に囚われてるだけとも言えるんだけどね」


 陽太は自虐して笑う。


「人助けをしたいみたいな立派なことじゃなくて、ただの自己満足だよ」


 彼女のことを拒絶してしまった。干渉できなかった。もっとなにかできたはずだ。


 その日々を思い出して、陽太は自嘲することしかできなかった。




「あの日言ってた医者になりたいってのは、光さんのためだったんだね」

「光はきっと、俺が光に囚われ続けることを望んではいないだろうけど」


 陽太に光の話を聞いて、月渚は腑に落ちたみたいな顔をした。

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月が輝く ナナシリア @nanasi20090127

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