第4話 カーズ・シロフォン
ここは家の前。
FOXさんを待っているところだ。
俺はでっかい浮き輪ひとつと自分用の水着、
それとビーチボールを家から引っ張り出してきた。
自分用の水着はいわゆる男性用水着ではなく、
上半身はチャック式のグレーで
下半身は長ズボンになっていてこちらもグレー。
胸のところにはライフルのマークがついている。
ここのメーカーの20周年の限定水着だ。
男女兼用になっていて誰でも着れる。
そんなもんが詰め込んであるから
俺のショルダーバッグはパンパンになっている。
そんなことを考えていたらFOXさんがご到着だ。
いつも通りのパーカーにリュックサック。
ただ、仮面はつけていない。
それとヴァイオリンケース。
ヴァイオリンケース!?
「あの…それってなんですか?」
「え!?何!?あーこれ?なんだぁ、これは私の恋人」
なんかオーバーリアクションだな。
「ヴァイオリンされるんですか?」
「んや。ちがうよ」
じゃあ何だ...?
まさか本当の意味の恋人...なのか?
「そんなものが入るんですか?」
「バラしてパーツ割けすればね。
多分君もすることになるから覚えておきな」
まぁアサシンだからね!!
でもなんで海にガラなんて持ってくのさ!!
まさか沈めんの!?
「...見せてもらっていいですかね?」
「?いいけど...」
俺は恐る恐るふたを開ける。
中に入っていたものは....
パーツ分けされたスナイパーライフルだった。
そーゆーことかよチクショーが!!!
ケースを地面に叩きつけそうになったがギリギリで静止した。
こんな調子でコンビは大丈夫なのか?(主に俺が)
俺はそう思った。
心を落ち着かせてから俺はFOXさんに声をかける。
「あ、車はどうしたんですか?」
「あ、えっとー、うん...ごめん」
あ...
ということでレンタカーで
海に行くことになった。
あの時のオーバーリアクションはそういうことなのね…。
FOXさんの身長は160cmほどで童顔に女児体型。
室内でも着てるオーバーサイズのパーカーのせいで
余計に小さく見える。
俺も168cmであまり高くないので
はたから見たら中高生に見えるかもしれない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここはレンタカーの中。
「海に行くことを決めた時
車出すって言ってませんでしたっけ」
「車検サボってしてなかったから免許切れてた。
だからダスト君が車出して待ってることを
祈りながら来たの」
「んなことあるわけないじゃないですか」
「はは…おおっと!?」
キキーッ
ゴスッ
「いったぁ!?」
FOXさんの急ブレーキでレンタカーが止まる。
その時の衝撃で頭ぶつけた。
えーと、どうやら人が飛び出してきたらしい。
「あの、乗せてもらうことってできますかね?」
その人が言う。
「あぁ、いいですよー」
FOXさんはもちろん2つ返事でOKする。
なんか勢いでその人、カーズさんも
乗ることになった。
「あの、お名前疑っても?」
「えっと…」
「白川です。こっちのは新井」
「お二人はカップルとかで..?」
「会社の先輩後輩です」
「じゃあ今日は慰安旅行に海にでも?」
「惜しい、慰安旅行ではないんですよ」
「へぇ、じゃほんとに海に」
「色々あって2ヶ月間の休みを出されましてね。
暇なんですよとにかく」
「貴方はどちらに?」
「私はこの先の駅におろしてくだされば」
「あ、そうだ。そちらはお仕事ってなにをされているんですか?」
「派遣会社の社員をやっております」
「偶然ですね。私も派遣会社に
勤めているんです」
…沈黙が続く。
「あ、ヴァイオリンされるんですか?」
カーズさんがそう聞いてきた。
…え、やばくない?
もしもカーズさんが興味とかヴァイオリン詳しかったら絶対銃だってバレるじゃん!
「えと、どうですかFO..じゃなくて白川さん?」
「…カーズさんでしたっけ?」
「はい。カーズ・シロフォンです」
「それ、偽名ですよね?」
…え?
「なんでまた..?」
「正確にはコードネーム。No.1114、カーズ・シロフォン」
「まさかあんた…」
「No.564。FOXだよ」
「…へぇ。フィナーレの伝説の」
え?何?意味わからんのだが?
カーズさんは同業他社の人ってこと?
「ダスト。臨戦態勢にはいって」
「え?は、はい!!」
大急ぎで拳銃を取り出し安全装置を外す。
「おっとステイステイ。何もやり合おうってわけじゃねえよ。乗せてもらったしな。
じゃ、俺は降りるぜ。海楽しめよ」
「…何が目的?」
「目的か?駅に行くことだよじゃあな」
「ちょ、え?なんなの?」
「..行ったね」
「..いや何なの?怖」
…えー、色々ありましたが海につきました。
この先は次回でお願いします。
殺人ボランティア 柚凪月 @yunazuki
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