第3話 2ヶ月

「同棲...ですか」


「そう。君たちには2ヶ月間の

 同棲生活をしてもらうわ」


「面白そうですねー」

FOXさんは相変わらずの脳天気だ。


確かに、相手のことを知るために

同棲するというのは理にかなっている。


俺が気にしているのはそこではなくて

FOXさんが2ヶ月も仕事を休んでいいのか、

ということだ。


俺が何を考えているのか分かったのか、

ポーカーさんが口を開く。


「FOXが仕事を休んでいる間は、

 とりあえず君たちに対する仕事はストップ

 させておくわ。でも、2ヶ月経った瞬間

 馬車馬のように働いてもらうからね」


ここら辺から、生活費のこととか、

住居についてとか、生々しい話になったので

カットさせていただく。


「着きましたね」


「ここが新しい我が家になるんだねー。

 綺麗でいいね」


とりあえず 荷物を降ろして、

ソファーに腰を下ろす。


俺の隣にFOXさんも座る。


少しの間、静寂が続く。


「ねぇ」


沈黙を破ったのはFOXさんだった。


「君のコードネーム教えて」


そうだった。


向こうは俺のコードネームすら知らないのだった。

なおさら俺をコンビに選んだことが

不思議に感じる。


「えっと、ダストと言います」


「ダスト君か。かっこいい名前だね」


俺のコードネームは塵という意味だ。


昔、塵は英語でダストだということを知って

かっこいいと思っていたので

コードネームにしてもらった。


「でもなんでコードネームなんですか?

 どっちかって言うと本名の方が」


「一応ね。盗聴器が仕掛けられるかもしれないし」


俺はそんなこと微塵も考えなかった。

やはりアサシン失格である。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


同棲生活を始めてから4日目。

今は朝の6時。

色々とFOXさんについて分かったことがある。


・性別は女性

・別に顔を隠したいわけではなく、

 見せてほしいと言ったら見せてくれた

・ビーフシチューは嫌い

・視力はいい

・ドラキュラ映画マニア

・ドラキュラ映画を1日五本くらい見る

・ドラえもんの声マネがうまい

・バカラがめちゃくちゃ弱い

・神経衰弱は強い

・その他のトランプゲーム全般弱い

・というかカードゲームが弱い

・囲碁も将棋もチェスも弱い

・電子ゲームもスマホゲームも弱い

・すごろくやガチャとかの運ゲーはめっちゃ強い



半分以上遊びの話だったが、まぁこんな感じだ。

ちなみに、映画は某レンタルビデオ店で

借りてきた。


と言っても2日目ぐらいで

レンタル上限になってしまい、

3日目はトランプなどをして過ごしていた。


同棲前にも同じようなぺースで見てきたので

FOXさんははもう、世界のドラキュラ映画は

ほとんど見てしまっている。


「今日はどっかに出かけようよ」

いつも通り唐突にFOXさんが口を開く。


「外に出てもOKなんですか?」


「大丈夫じゃない?言われたことは

『風呂トイレ非常事態以外一緒にいろ』

 だけだったし。なんならビデオ借りに行った時

 外に出たじゃん」


そういえばそうだった気がする。

FOXさんの言うことはなぜか説得力がある。


「どこ行こうか?」


「○ィズニーとかの予約が必要なところはダメだし

 かといって山とかは明日筋肉痛になりそう

 ですし...」


「じゃあ海行こううよ!海!」


俺は人生で一度も海に行ったことが

なかった。


昨日のボードゲーム中に愚痴っていたのを

覚えていてくれたのだろうか。


とりあえず海ということで決定し、

各々自宅から水着とかゴムボートとかを

引っ張り出して7時に集まることになった。

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