第5話 邂逅、我が名は



キン!・・・キン!・・・

──────金属を叩く音がする



パチッ バチパチ・・・

──────炎が爆ぜる音がする



ジュッ ジューーーーー・・・・

──────熱した金属が水を焦がす音がする






(・・・・・ここは・・・・・)


「俺の鍛冶場だ。ようやく目が覚めたか、玉ッコロ?」


(玉っ!?)


「いやだって、お前あれからうんともすんとも言わなくなっちまってよ、王様もどうにも判断できないから、とりあえず持って帰れっていって強引に持って帰らされ押し付けられたんだぜ?」


(・・・あれからどれくらいたったのだ?)


「3日だな」


(3日だと!?)


「ああ。おかげで大変だったんだぞ?儀式の結果は公表できないし、かといってお前さん、一応国宝だから、監視はつけられるしめんどくさいったらありゃしねえ」


(くっ・・・・・たかがあれしきで我が力が枯渇するとはっ・・・・)


「しかしお前話せたんだな。宝珠がしゃべるなんて聞いたことないぞ?・・・あんまり外ではしゃべらない方がいいな。悪い奴に付け狙われるか、研究者に持ってかれるかもな?」


(それは困る!お前という現身を見つけ、せっかく目覚めたのに、我が使命を果たせなくなってしまう!)


「我が使命ってなんだよ?」


(我が世界が突如原因不明の現象により崩壊させられようとしたのだ。我が仲間が今は崩壊を留めているが、一刻も早く原因を探り、仲間のもとに参じなければならぬのだ!)


「・・・・なんか聞いたことがあるような?・・・・! あれか、『白い月・黒い月』の物語に似てるのか」


(そのような物語があるのなら、あるいは、我の仲間が先に目覚めて語ったのかもしれぬな。)


「・・・てことは、お前、神サマの一人ってことかよ?」


(そーいうことだ!崇め讃えよ)


「・・・ほっほーう?玉のクセにそんな尊大な態度にでるんなら、外に控えてるやつらに全部ばらして持って行ってもらおうか」


(なにぃ!?)


「別に俺は興味ないし、今の生活と身の回りが守れればそれでいいからな。わざわざ危険犯して放浪するつもりも、城の中枢でふんぞり返るつもりもねーよ」


(いや、是が非でも協力してほしいのだが・・・お主、欲がないのか?我の力を得ればかなりの権力を持つことができるのだろう?)


「かもな。だけど俺は御免だ。人の上に立つってことは『できていないことを探す』アラさがしを延々やらないといけねえ。

ダメなところを探して見つけて潰して、その繰り返しだ。そうじゃないと、組織や国は成り立たねえ。恨まれようとな。

だから上に立つ者には信念と高潔さが絶対に必要だ。じゃないと私利私欲に走って腐っちまう。

それにだ。いざとなったら、味方の命も敵の命も奪う命令を下さなきゃならねえ。

そんなところで毎日生きている今の王様や中枢にいる人たちは、どんだけの責任を背負ってるんだろな?・・・俺には、無理だ。」


(お主の言うことはもっともだが・・・)


「それにな。俺の両親は元々精霊士で、王様に仕えていたが・・・2年前、ある任務で殉職しちまった。不幸中の幸いで、結晶キューブだけが俺の手元に戻ってきたよ。

それからというもの、王様はこんな俺なんかに何かと気にかけてくれた。

・・・一部じゃ王様の隠し子じゃないか、と言われるくらい、な。

今の王様には皇子もいて、その皇子も俺に良くしてくれる。

でも、そんなところにノコノコと入っていったら、王宮はどうなる?」


(いらぬ火種になるやもしれぬな)


「だろ?・・・だから俺は、ここで父さんと母さんの形見のキューブを使って鍛冶師を始めたのさ。キューブの力をても、鍛冶をするには十分だったからな。」


(仇討ちは考えてないのか?)


「・・・考えたよ。もちろんな。個人の力ではどうしても限界があるから、精霊士になることも考た。・・・だけどな、・・・俺はこの街が護れれば、それでいい。俺の作った武器が、みんなを護ることにつながるなら、それでいいんだ。」


(ふむ・・・お主の気持ちはよく分かった。しかし、身近なものを護るのなら、より強い力があっても、損はなかろう?)


「それは・・・そうかもしれないが、さっきも言った通り、縛られるのは御免だ。」


(まずはどんな力を得ることができるのか、確かめてみてもよかろうよ)


「わかったよ。その提案には乗ってやる。けど、くれぐれも目立つなよ?玉ッコロ」


(玉ッコロじゃないっ!!)


「んじゃタマタマ」


(コカンにぶらさがってるモノみたく言うな!)


「だったらなんて呼んだらいいのか言えよ!」


(・・・たく。よく聞け、我が名はア・・・?む?出てこん??)


「タマタマのくせに記憶喪失かよ」


(タマタマ言うな!・・・いや記憶が失われてるというより、『鍵』がかかっているような感じなのだ)


「んじゃタマタマで」


(待て待て待て待てっ!・・・もう一つ名があるので、そちらで呼ぶがよい)


「もう一つ?」








(我が名は──────フドウだ。)













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神様は元の世界に帰りたい。 @tsuji-dou

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