6. 「叶わないままでいい」

第40話

 俺が家を飛び出した時点で日は傾いていた。


 沈みゆく太陽を横目に、俺は舞菜の入院する病院へ向かうため、最寄り駅まで駆けていた。


「急がないと」


 自宅から病院のあるお台場まではかなり距離がある。さらに、最寄り駅もそれなりの距離があった。


 それなのに自分の足で駅まで行こうとしたのは、到着に時間がかかるというデメリットがあるが、到着までに考えをまとめる時間を作れるというメリットがあったからだ。


 息を切らしながら、足を動かす。

 季節的に暑さはなかったから、汗をかくことはなく、体温が適度に上がってきて心地よい。


 俺は一定のテンポを刻む自分の呼吸とともに、思考を巡らせる。


「どうやって行くか………」


 俺の喫緊きっきんの課題は病院までの足をどうするかだった……………。とりあえず駅までは走っていくとして、その後を考える必要があった。


 急いでいくなら何を使って行くべき? 時間帯的には何が適している? どんなルートを通るのがベスト? 何かいい方法が………………。


 考えを巡らせれば巡らせるほど、舞菜のことが頭に浮かぶ。


 舞菜との大事な思い出、大切な記憶のことが鮮明に思い出される。


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