第20話


 今年の文化祭のお化け屋敷はクオリティーが良く、かなり評判がいいと後ろに並んでいた男子生徒たちが話していた。


 実際のところ、様々な仕掛けや雰囲気づくりから、かなり力が入っていることが伺えた。


 そして、そんな力の入ったお化け屋敷に舞菜は完全にやられていた。


 幽霊に追い掛け回されて叫んだり、なんでもない壁を全力でたたかれるのに驚いたり、ありきたりな悲鳴に体を震え上がらせたり、大音量の砂嵐に恐れをなしたり等々、あらゆる仕掛けに驚愕し続け、舞菜はすっかり憔悴していた。

 さっきの写真撮影の時の俺と同じ状態だ。


 お化け屋敷から出て、ヘロヘロになっている舞菜に俺は声をかけた。


「舞菜さん、大丈夫か?」

「う、うん。だ、だいじょうび」


 舞菜は語尾を噛んでしまうほど精神的に参っているらしい。かなりの重症だな。


 高校時代、ことあるごとに人前に出て、一度も噛むことなくなんでもすらすら言ってのけるスーパー学級委員だった舞菜が簡単な言葉を噛んでしまうほどだ。


「じゃあ、少し休めるところに行こうか。上の階の食べ物を出してる所があるらしいから……」

「うーん」


 いきなり色んなことをして疲れているであろう舞菜を案じて、ひと段落出来る場所を探した。


 舞菜の返事はすこし曖昧だったが、まあ気にしなくていいだろう。

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