第17話
今回の舞菜の外出を病院側に申請するにあたり、俺は事前に由梨さんに相談をしていた。
ただ、その時の反応は俺にとって難儀なものだった。
「いいじゃん! つまるところ、デートっていうわけだね。悠悟くん行ってきなよ、舞菜も喜ぶだろうし」
由梨さんにはデートではないと何度も言ったのだが、『デートだデートだ!』と茶化してしきて俺は困ってしまった。実際のところ、頭の中になかったわけじゃないが、人から言われると恥ずかしさが強かった。
由梨さんの同意を得た上で、先週のお見舞いの時に舞菜の外出を病院の人にお願いしたのだが、想像以上に直ぐに了解が得られ、舞菜とのお出かけが実現した。
舞菜はというと、本人がかなり乗り気だったようで、前日は眠れないほどだったと待ち合わせ前の連絡で聞いた。遠足前の小学生かよ、なんて思わず突っ込んでしまったが、本当は俺のことを意識しているのかなと一瞬思ってしまった。
まあ、そんなことないだろうけども。
俺は果たしてどんなテンションでま舞菜が来るのかと思っていた。テンションが上がり過ぎている場合には俺が止めに入らなくてはいけないと、俺は少々身構えていた。
ただ、俺が今日会った時に最も目を引いたのはテンションよりも舞菜の格好だった。
舞菜は今までの病院の服装ではなかった。由梨さんが病院まで持ってきてくれた服を着ているらしい。よく考えれば当たり前のことだが、すっかり忘れていて面食らった。
俺はファッションについては疎いのであまりうまく説明できないのだが、舞菜はパンツスタイルながら、活発な印象よりも清楚な所を押してきているように俺は感じた。
とてもかわいらしく、ザ・美少女そのものだった。いや、まぁ舞菜は元々美少女だが。
「舞菜さんの今日の服すごく似合っているよ。私服を見るのは久しぶりだから、なんだか……その……すごく新鮮だし、とても、その——可愛い、ね」
俺の感想を恥ずかしい気持ちを殺して伝える。
もっと上手く形容して褒めることが出来ればいいのだが、あまりにも語彙力が欠落していて、子供みたいなことしか言えなかった。
そんな俺に舞菜も少し赤面しながら告げてきた。
「あっ、ありがと」
なんだよおい、かわいいかよ。最高かよ。
そんなことを考えているとふと、由梨さんが悠悟くんはこういうのが好きでしょ~と言っている姿が思い浮かんできた。
なんだか癪だが、由梨さん、絶対俺の好みを狙ってきているとしか思えなかった。というか、なんで俺の好みがわかるんだよ。姉妹そろってエスパーかよ。怖いって。
「じゃ、じゃあ行こうか」
本当は俺が言うべきことを思案を巡らせている間に舞菜から言われてしまった。
誘っておきながら、少し困らせてしまったかもしれない。
「おう、悪い。行こうか」
俺はそう言って、先に歩き出した舞菜に追いつき、その少し前に行く。
そして、俺は舞菜と一緒に懐かしの校舎の中へと入っていった。
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