第15話
夢を見ていた。
懐かしい夢だ。
私は、新品でまだ分不相応な制服を着て、教室の最前列の椅子に座っている。座っている席や私の服装から推察するに、一番最初の委員会の時、顔合わせの日のようだ。
私は学級委員をしていた。自分で立候補したのだ。
この時は私は知らないが、後にたくさんの仕事に忙殺され、その量に押しつぶされそうになる。この頃はそんなこと全くもって考えていなかったけれども。その辛さの代わりと言ってはなんだが、この委員会をきっかけにいい出会いがあった。それがこの時のことだった。
私は周囲を見まわしてみる。周りに人はいない。私一人で座っている。集合時間より少し早く着きすぎたみたいだ。
私は退屈で自前の文庫本を取り出し、栞が挟まれた頁から読み始めようとする。
その時だった。
教室の扉を開けて、一人の男子生徒が入ってくる。短く切りそろえられた黒髪の彼は、私しかいない教室を見回すと、私の隣の席へと歩き、座ってきた。
「すぐには×××、始まらなさそうだからさ……、ちょっと×喋り付き合ってくれない?」
私は答えに窮した。突然私に話しかけてきた彼にどう言葉を返せばいいのか分からなくなっていた。そんな私を見かねた彼は、私に向かって自己紹介を始めた。
「えっと、僕は、飯田悠悟って××んだ。一年七組の学級委員になっ××だ。今さっき×けどね」
「わ、私は……、福山舞菜……です。一年三組の学級委員です」
少し挙動不審気味だっただろうか。こんなコミュニケーション出来なさそうなやつが学級委員をやってるのかと思われたりしないだろうか。
しかし、その心配は杞憂だった。
「福山さ××。よろしくね。それで、福山×んは×××きなの?」
彼は私のことを受け入れてくれた。興味を持ってくれた。それが私はとても嬉しかった。これが、彼との出会いだった。
この時、緊張していた私に話しかけてくれてありがとう。大好きだよ………………なんて心の中で言っても、ここは夢の中。あくまで過去の記憶を追体験しているだけだから、今思ったことを夢で発生させることは出来ない。分かっていたことだ。
そしてその後、私は彼と………………。
あれ? 今、何をしていたっけ?
私が今まで見ていた夢は、いつのまにか砂嵐に代わっていた。
私は確かに、さっきまで夢を見ていたのに………………。
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