第12話
由梨さんと別れた後、俺は自宅に帰るまでの道で今まで起きていたことを整理した。
舞菜の病気の現状。それは由梨さんから俺に伝えられた最も大きな情報だ。
「来週に舞菜と会う時は、高校時代の記憶が無くなり始めるんだよな」
舞菜の記憶は今のところ一週間周期で消えていっているらしい。昔はもっと周期が開いていたらしいが。どんどんスピードが速くなっていくということは、あっという間に俺との記憶も消えてしまうのかもしれない。
「俺は————」
記憶が無くなっていく恐怖と今まで戦ってきた舞菜があの日見せた、何にも形容出来ない切なさを孕んだ顔が俺の脳裏からよみがえってくる。
正直な所、俺との記憶を舞菜が忘れてしまうことは耐え難い。ただ、それは避けようがないことだというのは理解している。
しかし、このまま何もしないでいることはできない。何とかして病に抗いたいという気持ちが湧いてくる。
「俺は、どうしたらいいんだ」
そんな俺のどうすることもできない言葉は夜の闇の中に霧散していった。
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