第10話
あの日の夜、由梨さんから連絡が来た。
一本目は電話で。二本目はメッセージで。
あれから俺はすっかり憔悴していた。その状態を改善する手立てを俺は持ち合わせていなかっただけに、知り合いからの連絡は心を紛らわしてくれる嬉しいものだった。
ただそれは、『内容を抜きにして』という前提条件のもとのみだった。
その連絡の内容は俺を現実へと引き戻した。
『すこし、二人で話さない? 話したいことが色々あるんだ。無理そうなら来なくていい。本当に無理だけはしないでほしい。ただ、大事なことだから』
当然、由梨さんから何かしらのアプローチが来るであろうと想像はしていた。いないところで舞菜があんなことになってしまったのだから………。
しかし、俺には由梨さんに簡単には返事が出来なかった。それほどの罪悪感が俺の中にあったからだろう。俺の携帯にかかってきた由梨さんからの電話を取ることが出来なかったことも………………、きっとそのせいなのだろう。
いや、それは現実から目を背けて、他の理由付けして責任転嫁しているだけだ。自分の頭の中を整理しきれない状態で話すのは難しいのではないかと、俺は考えてしまう。
ただそれ以上に、由梨さんと会うのが怖かった。何を言われるか分からなかったからだ。
それでも、きちんと話を聞かなきゃいけない。事実から逃げてはいけない。そう心を決めて、俺は由梨さんに返事をした。
まだ俺は舞菜から大事なことを何も聞けていないから——————————。
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