第7話
病院を出た後、俺は由梨さんに車で駅まで送ってもらうことになった。まあ、半分強制だったけど。
駅までの間で車は渋滞に巻き込まれ、少し時間がかかっていた。俺は舞菜の回答を得られなかった質問を由梨さんに再び問いかけた。
「舞菜さんが入院している理由はなんですか? 聞いても答えてくれなかったので………」
不思議と今の由梨さんなら聞けば答えてくれる気がして質問したが、少し驚いた顔をしているように見えた。
ただ、すぐに顔を正して俺に問いかけてくる。
「舞菜が言わなかったんだから、知られたくないとかなんだとかじゃないかな」
誰もが考えればたどり着く当たり前の話を由梨さんにされるも、俺はそれに対してわずかな心の中にモヤモヤした何かがあった。
ただ、そういった言葉をかけられることは想定していた。
「そう……ですよね」
舞菜はあからさまに病名を言うことを避けていた。この事実は誰の目から見ても明らかだったが、その行動自体が俺のことを信頼していないと暗示しているかのように感じた。
察するに、同窓会のときの小笠原のように、周りに言いふらさないでほしい事なのだろう。
それでも、俺としては信頼して打ち明けてほしかったなと思ってしまった。
「まあ、ほどほどに舞菜に会いに行ってあげてよ。舞菜は昔から寂しがり屋な所があるから…………。あの子は覚えてないけどね」
「最後なんて言いました?」
「ううん。な~んでもない」
由梨さんは俺に目を向けずに声をかけた。運転中なのに俺が言葉に詰まっているとすぐ的確な言葉をくれる。コミュニケーションが上手いのは姉妹一緒なのだろう。
少しの時間しか話をしていないのに、由梨さんの性格がよく分かった気がした。
「まぁ、定期的にお見舞いに行こうと思っています」
「…………そう。舞菜も喜ぶよ」
由梨さんは俺の言葉に微かに笑顔を浮かべる。
喜んでくれるなら、何度だって行くさ。聞いてみたいこともあるしね。
自分が抱いている気持ちのことを無視しながら、そう心の中で思った。
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